兄と呼べた日ーー五年の月日と新しい兄ーー
「なろうラジオ大賞5」参加作品です。
ヒューマンドラマです。
「明。この人たちが新しいお母さんとお兄ちゃんだ」
「よろしくね、明くん」
「う、うん。お、お母さん」
「……」
「ほら。秀も挨拶して」
「……ども」
「う、うん」
お父さんが再婚した。
僕が三歳の時にお母さんが死んじゃって、お父さんは寂しそうだった。
だから五年経って新しいお母さんが来て、お父さんが嬉しそうで僕も嬉しかった。
「ごめんね明くん。この子反抗期なのよ」
「あ、うん」
「ちゃんと戸締まりして学校行くのよ」
「う、うん」
「……ああ」
お父さんも新しいお母さんもお仕事をしてて、いつも僕たちより早く家を出る。
「……早く着替えろよ」
「う、うん」
この時間が少し苦手。
八歳の僕より五年年上のお兄ちゃんっていう人は僕のことが好きじゃないみたいだ。
いつも不機嫌で、ちょっと怖い。
「……楽しみに、してたんだけどな」
「ありがとね、明。お手伝いしてくれてお母さん嬉しいわ」
「へへ」
お母さんのお手伝いは楽しかった。
「秀も昔はお手伝いしてくれたのにね~」
「っ!」
お母さんはあの人にこんなことを言うから困る。いつも不機嫌なのに余計不機嫌になっちゃうじゃん。
「あら。明、寝ちゃってるわね」
「……」
「……ねえ秀。いつまでそうしてるの?」
「……なに?」
「!」
ソファーで寝ちゃってたみたいだけど、お母さんがあの人と何か話してて起きちゃった。
僕は何となく寝てるフリをしてみた。
「弟が出来るって喜んでたのに」
「!」
「知ってるわよ。あなたが二人で遊べるゲームを選んだり、一回り小さいグローブをお小遣い貯めて買って隠してるの」
「な、なんで知ってんだよ!」
どういうこと?
「お母さんに隠し事ができるとでも?」
「……はぁ」
あの人は諦めたみたいな溜め息を吐いた。
「どう接したらいいか分かんないんだよ」
「!」
「俺も、ホントは一緒にゲームしたりキャッチボールしたりしたいさ。きっと俺と一緒で、今まで家で一人で留守番してきたんだろうからな」
「……」
「……ごめんね、秀」
「あ、いや、母さんが頑張ってくれてるのには感謝してる。そうじゃなくて明には、弟には寂しい思いをさせたくなくて……けど、いざ対面すると何を言えばいいのか」
「しょうがない子ねぇ」
「……お、お兄ちゃん」
「!」
「あら明、起きてたの?」
「……僕も、お兄ちゃんと遊びたい!」
「!」
「あらあら」
「……一緒に、ゲームするか?」
「する!!」
「ふふふ」
新しいお母さんとお兄ちゃんが出来た。
今度はキャッチボールもしたいな。