白の殺し屋
1話
少年
「殺してやる…殺してやる…!」
少年は家で義理の父親から虐待を受けている、もう耐えられない
母親も味方をしてくれない、弟が生まれるまでは僕の味方をしてくれていたが今は見て見ぬふりだ
夜の公園でかすかに声が聞こえてくる
そして、そこに現れた男が少年に話しかける
男「ずいぶん物騒なことを言ってますね」
現れた男は白髪に長髪でまるで天使のようなたたずまいであった
白のコートに全身白の服装
少年は今まで見たこともないようなその美しい姿に固唾をのんだ
白い男には特殊な能力があり、強い殺意を感じとることができた
男はその能力を使って殺人衝動をある人間に近づき殺しの依頼を受ける事を生業にしていた
それもこれも全ては××博士の命令だ
白はアンドロイドである、白を作った××博士は未来から過去へと白を送り込み
殺人の代償を人間にわからせるために作られたのだ
しかし白には過去に送り込まれた記憶はこれが初めてではない、白は小さなバグが発生して作られてから元の時間軸に戻るまでの記憶が全て毎回継承されていた
その過程で白はある人物を殺害することを決意していた、毎回失敗している、今度こそはと成功を祈って毎回違う選択をするのだ
少年と男の間に沈黙がしばらく続く
少年は男に問いかける
「何ですか…」
男は優しい笑顔で答える、しかし目は笑っていないように感じた
白
「その殺したい相手私が殺して差し上げましょうか」
少年は問いかける
「貴方何者なんですか」
白い男は答える
「私は殺し屋です」
少年は少し驚き言葉につまる
現代の日本に殺し屋なんて本当に存在するのだろうか
そしてゆっくりと口を開いた
「殺し屋って本当ですか」
白い男は答える
「ええ、本当ですよ」
少年は問いかける
「僕は殺しを依頼するほどお金なんてありません!」
白い男は答える
「代金は頂戴しておりません、ただし殺しの依頼を受けたら貴方の一番大切なものをいただきます」
少年は母親の再婚相手から虐待を受けており、母もそれを見ないふりをしていた
父親からの虐待はひどく外に締め出され寒空の公園で野宿することもあった
暴力もひどく全身痣だらけだ
少年は思った、何を奪われたって構わない、大切なものなんて何もない
その時はそう思った。
少年
「本当に殺し屋だったら僕の義理の父親を殺してください」
無論信じているわけではない、ただ少年は虐待が続けばいずれ死ぬか施設に入れられてしまうと思っていた
「大切なものなんて僕にはないです、それでもやってくれるんですか」
男は答える
「大丈夫ですよ、それでは契約成立という事でよろしいでしょうか」
男は不敵な笑みでそう答えた
白
「それでは仕事にかかりますね」
男は殺し屋とはいっても殺人をするわけではない、男は標的に近づけば、自殺や事故で自然に殺すことができる
人間にできるような代物ではない、男が何故そのような能力があるのかはまた別のお話
…
そして数日が経った
少年は半信半疑でいたが本当に殺してくれればと思い少し心を躍らせていた
その間も虐待は続いた、相変わらず母親は見て見ぬふりだ
義理の父と母親の子供は愛されて育っている、それがうらやましくて少年はなぜ自分だけと考えていた
少年の唯一の楽しみはペットの飼い犬のタロと遊ぶことだった
そして数日が経った
朝目が覚めると義理の父親が死んでいた、死因は自殺のようだ
確かに父は死んだが白い彼が殺したかどうかは半信半疑だ
そしてそれからすぐに男は現れた
白
「殺しは終わりました、そして契約通り貴方の大切なものを奪わせていただきました」
少年の唯一とも呼べる友達の飼い犬のタロだ。
タロは死んでいた。
少年は泣き叫んだ、声にならないような声で叫び、後悔した。
殺しなんて頼まなければよかったんじゃないか、少年は思った
こんなことになるんだったら虐待を絶えたほうがましだったかもしれない
そう思えた
…
そして次の瞬間少年は初めて白の男と出会った場所に居た。
何が起こったかわからなかった
白の男はこう答えた
「ここまでの数日間は現実ではありません、私が見せた幻にすぎません、さて…どうしますか?
殺しの契約を本当になさいますか?契約をすれば先ほど見せた幻が現実になります」
男が見せた幻に少年は少し安堵していた、タロはまだ生きているんだ。
「契約は…、やっぱりやめておきます。
僕には大切ものなんかないと思っていましたがタロは僕の唯一の友達なんです
だからそれを奪われるぐらいなら僕がもっと強くなればいいだけです。
施設に入ったってかまいません、虐待だって耐えればいいだけです、僕には頼れる人間はいませんがタロが死んでしまったら僕は本当に一人ぼっちになってしまいます
もう僕に父親に対する殺意はありません、恨みはありますが殺したいほどじゃあありません」
白
「そうですか、では契約は破棄させていただきます、人を殺すということは代償がつきものです
次からはよく考えて行動するといいでしょう、では私はこれにて」
そう言うと男は消えてしまった、男そのものが幻だったのではないかと少年は思った。
少年は、これでよかったんだと自分に言い聞かせた。
男は何者だったのだろう、その不思議な体験を少年は誰にも話すことは無かった。
…
高層ビルの屋上で一人白い男は考えていた
白
「人間は不思議な生き物ですね、衝動的になったかと思えば冷静になる。」
白は次の依頼人を探すことにする
「また強い殺意を感じますね、今度はどうなるでしょうね、人間というものは本当に興味深い」
そして男はまた殺意を感じる依頼人候補の元へ向かった
「早く決着をつけたいものです…、今度こそは…」




