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― 筝葉 ―

「ぎぃやぁああッ」

 けたたましい子供の、叫び声。

 昼下がり。

 大気も温められ、春の如き陽気にうつらうつらしていた矢先であった。

「うるせぇ、、、」

 睨んだ先に、

「だ、、、だって、そ、それっ」

 腰を抜かして涙目の、蓉亜ようあの姿。

 指を指したその先には、

「ああ、これか、、、」

 木の枝に吊るされた、しゃれこうべ。

 異形の守役、はくは、両腕を頭の後ろにやりながら、足の爪先でつつく。

 眼窩に糸を通してあるのか、その中で風鈴が玲瓏と鳴り、わんわんと反響した。

「そんなことしてたら、祟られちゃうよっ」

 蓉亜にしては、至極まともな事を言うものだ、と思った程度か?

 伯は、お構いなしに、眸を閉じた。

「もうっ!!父上呼んでくるっ」

「いッ、、、待てよ、蓉亜」

 面倒なやつを呼ばれてはかなわんと、ようやく枝に座り直して呼び止めた。

 あの人の姿をしているのに、お気楽なその性格。

 蓉亜と相まって二人となったら、いくら伯とは言え、耐えられそうにもない。

― ここは、ひとつ。蓉亜を手懐けておくか、、、 ―

 腕を伸ばし、蓉亜を梢に引き上げると膝に入れ、

蟲姫むしひめ

 その忌み名を呼んだ。

 グルココォ…

「ッ」

 蓉亜が、伯にしがみつく。

 ほぅ、と白い溜息をつく女が、しゃれこうべから立ちのぼるようにして現れると、陽光の光の中に在って肌が、寒々とした。

「これではお前の耳にその声音、届かぬか、、、」

 己の指を、鋭い犬歯が咬んだ。

 象牙色の指先に、血の玉が結ばれ、

「蟲姫」

 伯は、その手を取って引き寄せた。

 穏やかな眼差しで、冷たく乾いた白い唇を、その血で染める。

「お前に似合う丹色のべにの一つでも、うてきてやる」

≪あ…≫

 その言葉を受けて頬を染めると、恥ずかしいのか、袂で貌を隠してしまう。

 透き通っていたその体は今、煌びやかな彩りの唐衣を纏い、乱れ、うねっていたばさらの髪は、よくくしけずられた、豊かな垂髪へ。

 ぬめぬめと隠微に艶びかる蛇腹の肌は、蝋の如く肌理の細かい肌となった。

 長い睫に縁取られ、柘榴石を思わせる眸だけが、異形の鬼の名残と言ったところか?

小浦こやすの蟲姫。真名まなを、氷箕ひみの飛鷺姫ひさぎひめと言う、、、」

 細い女の指先を取ると、蓉亜の側へ寄せてやった。

「蟲姫、俺の弟分で、蓉亜と言う」 

≪よぅ、ぁ、、、≫

「ああ。くれぐれも、驚かしてくれるなよ」

≪はぃ≫

 こくりと頷いた、蟲姫。

「陽の高い時分に、無理をさせたな」

≪ぃえ、、、≫

 そっと手を離すと、そのまましゃれこうべへと吸い込まれた。

「、、、、、」

 元より見鬼とは言え、さすがの事に言葉を失い、硬直したままの蓉亜。

「おい、、、」

 その姿が消えてなお、

「いつまでしがみ付いているつもりだ、、、」

「えっ、あっ、、、」

 どうやら伯の肩にしがみつく手に、相当力が入っていたらしい。

 慌てて手を離し、膝に置くと、

「どっ、、、どうして蟲姫なんて呼ぶの!?可哀想だよっ」

「鬼の名だ。人の名でなんぞ、呼べるかよ」

「だから、どうして?!」

「どうしてって、、、」 

 菫色の双眸を、じっと見つめた。

 ややあって、

「その名で呼ばれた頃の哀しみより、今に生きる憎しみの方が、生き易い事もあろうよ」

― 鬼と成り果てたところで、この世に生きている事には変わり無いのだからな、、、 ―

 そう言ったところで、見上げてくる眸は解放してはくれない様子。

「なんでこの人、連れて来たの?」

「あいつは気がつかなかったようだがなぁ、元は蒼奘そうじょうに憑いて、、、」

「もぉ、なんでだよっ」

「チっ、、、」

 咬み合わない会話。

 いつもの事に、うんざり顔の舌打ちだ。

「だから、、、」

「なんだよ。僕にはなんにも買ってくれないのにぃっ」

 つまりは、その一点らしい。

 頬を膨らませ、幹を伝って降りようとした所を、

「うっ」

 伯の手によって、顎先をつままれた。

「な、何?」

「、、、、、」

 近づいてくる、伯の貌。

― 怒ってる?! ―

 ぎゅっと目を瞑れば、

「お前に紅なんぞ、似合うか?」

 まじまじと見られてから、言い放たれた。

「い、いらないよッ」

「いつッ」

 その手を払うと、枝を伝って何とか大地に降り立つ。

 手を摩りながら、母屋の方へと駆けて行く小さな背を見送った。

 その鼻先にふよふよと舞い寄るのは、一羽のるりたては

 差し出した指先で、羽を休めるその蝶を眺めながら、

「子供が欲しがるようなものなのか、、、」

 乳色の陽射し差し込む楓の梢で、風鈴が玲瓏と、鳴っている。




「ははは」

 からからとした、男の笑い声。

 牛車に乗り込むその男の袖を掴むのが、

「笑い事じゃないよ、父上」

 その息子、耶紫呂蓉亜。

「そうだったねぇ」

 穏やかな闇色の眼差し。

 涼しげなその容貌には、幾分皺が増えたが、穏やかな物腰変わらぬ都守耶紫呂蒼奘、その人。

 我が子のなんとも言えぬ顔を見て、膝を折った。

「大体なんで父上、気がつかなかったの?」

 口を尖らせるような言い方は筝葉にそっくりだな、と思いながら、

「父はね、冥府に長いこと居たから、幽鬼の類に耐性が出来てしまって、麻痺しているんだよ」

 のほほんと、応えた。

「麻痺、、、」

 蓉亜の表情が、曇る。

 そして訝しげな眼差しで口を開き、

「それでお勤め、勤まるの?」

「ああ。父は一人じゃないから」

「それって、ひとりじゃ何も出来ないって事じゃないか、、、」

 憮然とした、蓉亜の声音。

「ははは」

「、、、、、」

 まったく堪えていないのか、からからとした笑い声。

 その父子のやり取りを眺めていたのが、琲瑠。

 たまりかねたのか、

「若様、お出掛けの前に、父上様を困らせてはいけませんよ」

 琲瑠が、やんわり蓉亜の袖を引いた。

「帰ったら、また話の続きをしようね、吾子わこ

 蒼奘の大きな手が、その頭を撫でると、

「うん。いってらっしゃい」

 黒目がちな眸が、見上げて言った。

 琲瑠を共に、往来に出る車を見送りながらの呟き、一つ。

「つまんないの、、、」

 その傍らを、ふわりと風が通った。

 瑞々しくも甘さの無い、林檎のような香りが、漂った。

 肩にふよふよと纏わりつく蝶を遊ばせた、鴉羽色の狩衣姿。

「どこ行くの?」 

 往来の人混みへと紛れる前に、その袖を掴まえた。

「、、、、、」

 うっそりとめられても、蓉亜が小首を傾げれば、

「、、、勝間」

 ぽつりと、言った。

「母上のところに?なんで、、、?」

「檎葉の方だ」

「あ、、、祠の神さまか。ねぇ、僕も行って、、、」

「ついでに筝葉のところにも顔を出すつもりだ。具合があまり優れないから、薬を届けろと使いが来た」

 指を差した先の蝶が、高く舞い上がっては、どこかの屋敷の築地塀の向こうへ。

「ひどいのかな、、、?」

「知るか、、、」

「そんな言い方しなくたっていいじゃないっ」

 自分も行くと言おうとしつつも、顔を合わせればそのまま館に滞在するようにと言われるのが目に見えて、

「どうするんだ、、、?」

「うぅ」

 伯の問いに、蓉亜は小さく呻いた。

 さすがに、少し言い方がきつかったと思ったのか、

「まあ、檎葉の世話焼きはいつものこと。大袈裟すぎるが、今回の事で借りがあるからな。一応様子を、見てくるつもりだ、、、」

 そう、付け加えた。

「今回の?あ、、、」

 先程目にした、蟲姫の貌がちらついた。

「ああ。いい子にしていろよ、、、」

 にやりとして、蒼奘がやるように髪を撫でると、

「ちょっ、、、」

 掴んでいた袖を払い、足早に人混みに紛れてしまった。

― また、おいてきぼり、、、 ―

 むぅ、っと頬を膨らませたその傍らで、

≪ほぅ、、、≫

 白々とした溜息が毀れた。

「わっ、む、蟲姫、、、?!」

≪ただ、待つ身程、辛いものはありません、、、≫

 赤々と血塗られた可憐な唇が、呟いた。

 陽光の中、陽炎の如く揺らめくその美姫は、茫洋とどこかを眺めている。

 良く見れば文字通り透けているその細く首から、豊かに零れ落ちていた黒髪は、今は楓の若枝で纏められて、茜の地に金糸、銀糸で錦と紅葉や銀杏が川に流れる様を縫取った打掛が艶やか。

 そこに、軽やかな鈴の音が近づいてくる。

 人混みから抜け出したのは、

「タオフィ」

「おはよう、蓉亜。ねぇ、伯はぁ?」

 榛色はしばみいろの髪に、金木犀の花枝を編み込んだ、若い娘。

 一見したところ、快活そのものの町家の娘だが、その実、近所の古い屋敷より、毎日のようにやってくる野狐である。

 くるくるとよく動く琥珀色の眸が、蓉亜の頭上の辺りを見据え、

「んん?!」

 吊り上がり、

「、、、あんた、誰?!」

 露骨に嫌な顔をした。

「あ、、、」

 うろたえるのは、二人に挟まれた、蓉亜。

 キィイッ

「タオフィっ、こんなところで何する気っ?!」

 くわっ、と牙を剥いたタオフィを押さえる蓉亜を他所に、

≪ほぅ、、、≫

 すべてに憂えているような溜息を残し、蟲姫は、屋敷の内へと掻き消えた。

「なっ、、、何あの態度?!幽鬼のくせにぃいっ」

 祓ってやるっ、と袖をたくし上げるタオフィを力いっぱい押し返しながら、

「伯が連れて来たんだから、いきなりそんな事したら、嫌われちゃうよっ」

 頭に浮かんだ事を、そのまま叫んた。

「伯が、、、連れて、、、」

 その言葉に、へなへなとその場に崩れ込んだタオフィ。

「タオフィっ、しっかりしてよっ」

「伯が、女のひとを、、、」

 ぶつぶつよ呟き、大地に座り込んでいるタオフィに、何事かと往来の人が足を止め始める。

 今度はその腕を屋敷の内へと引っ張りながら、

「もぉっ、やっぱり伯なんて、大嫌いっ」

 今日も蓉亜の叫びが、往来に響いている。




「おい。来てやったぞ、檎葉」

 轟々と腹腔轟く勝間の大滝。

 その傍らに、苔むした祠がある。

≪なんじゃ、騒がしい、、、もうちっと穏やかに、、≫

 寝ぼけたようなその声音に、

「ッ」

 伯が両手で祠を掴かみ、おもむろに揺らし始めた。

≪ぬあわわっ、これ、やめよっ≫

 燐光が巻き上がり、女童の姿をとった。

「ばばあ、てめ、呼びつけておいて寝こけてやがったな」

 紅の晴れ着の襟元を正しながら、

「このたわけめがッ!!寝てなんぞ、おらんッ」

 両の手を伯の鼻先でパンッと、叩いた。

「な、なんだ、こりゃッ」

 とたんに貌を顰め、両袖で鼻を摘む。

「うえっ、ケっ、、ケホっ」

 たまらず蹲り、咽こんだ。

桂皮にっきを摺っていたのじゃ」

「く、臭過ぎる、、、」

 鼻を押さえて呻くその元に、檎葉は芥子色の紙の包みを差し出した。

「女神散、釣藤散が入っている」

「毎度毎度、自分で行けねぇのかよ、、、」

「人には見ずして視える者、見ようとして視える者、見ようとしても視えぬ者がいる。箏葉は信心深いが、後者じゃ」

 つまりはまったく、第六感が働かぬらしい。

「なんとかなるだろ、あんたなら、、、」

「勝間の氏は皆、わらわの庇護のもとにある。それは、これから先も変わらん。わらわの姿が視えようが視えまいが、な。氏に連なるのであれば、あえて姿を視せるまでもないのだ。わらわだけが、心得ていればそれでいい、、、」

「俺がこうして出向く事になるだろうが、、、」

「仕方なかろう。蒼奘は忙しく、蓉亜では、道中何かあれば一大事だ」

「何故、いつもいつも、、、」

 ぶつぶつ言いながらも、袖に捻じ込んだ。

「で、小浦には、行ったのだろう?」

「ああ。俺は、蟲姫を迎えたぞ」

「なんじゃと、死霊を、、、?!」

「成仏するにも、鬼に近い。魂魄を食ってこの世に在りすぎたのに、それも知らぬ、、、」

「なんと哀れな、、、」

「まこと、生成なりかかりとは、よく言った言葉よ」

 何日先か、何年先か、或いは何百年か、、、

 人として産まれたその身が幽鬼となり、いつかの終わりを迎えた時、それを見とれるのは、人外の者でなければ叶わぬのかも知れぬ。

 百数十年の孤独。

 震えながらも懸命に耐えたその姫を思えば、伯は手を差し伸べずにはいられなかったのかもしれない。

「蒼奘に憑いて都になど入らねば、好いた男の魂魄を抱いたつもりで、逝けたかもしれん、、、」

 どこか、侮蔑を含んだ声音に、

「貪欲にもなるさ。目の前に現れたのが、名乗りも上げぬ未熟な神霊。万物を司る霊紫の塊だ」

「む、、、」

「姫の想念に呑まれていれば、武沙那そのものとなって、今度はお前がその中に封じられていたぞ」

「そんなへまはしない」

「だか、現に、、、」

 そこまで言って、檎葉の鈴張り目が、眇められた。

 袂で、口元を隠しながら、

「大方、無防備に大口開けて寝こけていたのだろう?」

「、、、、、」

「でなくば、腹に蟲姫の精を、いや、想念を、、、」

「!!」

 言い直したところで、余計に腹立たしくなったのか、伯が牙を剥いた。

 どうやら伯が夜半訪れた時には、檎葉は腹のそれを、感づいていた様子。

「油断したのはその時だけだッ」

「ほう、、、」

 むきになるのが、どうにも愉しいらしい。

 益々、目尻を下げた。

「腹の眷族で包み封じて、海水でもって我が形代を練ったんだ」

「それは上々、、、」

「つっ、、、」

 相手のペースに乗せられたと、そこではたと気づいた。

 その頭上の木々の枝を、

 キッ・・・キキ・・・

 伝うものがいる。

「で、天狐には言ったのか?」

 背に子を掴らせた、猿。

 檎葉に腕に抱いていたものを渡すと、再び木立の中へと消え去った。

「いや。だが、やがて知るだろう、、、」

「やがて?」

 伯に差し出したそれは、手のひら代の菫色の果実。

 ぱっくりと白い口が開き、中には黒く細やかな種を甘い綿の如く果肉で守る、あけび。

「屋敷に出入りしている野狐やこがいてな。これがひどく、おしゃべりだ、、、」

 片手にむんずと掴み、木に背を預けた状態で、口をつけた。

「ふ、、、かつての天狐であれば、物見遊山にお前についていっただろうが、伴侶を得て、ずいぶんと大人しくなったのよ」

「ふん、、、」

 興味なさげに、黒い種を吐き出す、伯。

「地仙を名乗るわりに、一年のほとんどを都以外で過ごしていてな。些細な噂であっても、出張って行かねば気の済まぬやつで、仕える眷族共がよく嘆いていたわ」

「尻に敷いていると思えば、たなごころで上手く操っているのはその実、あのいぬの方か、、、」

「互いの気性を知り、化かしあっているのさ。喉元を晒しあい、食い千切る時を伺いつつも、表面にはけしてそれを見せないのが、あやつらの性分でな、、、」

「悪趣味な奴らめ、、、」

 感想は、それだけだ。

 既に二つ程平らげると、伯は口を袖で拭った。

「それでもまあ、今のうちに、精々我々に顔を売っておけ」

「あ?」

 剣眉を寄せ、訝しげな表情で腕を組む。

 その眼差しの先で檎葉は、はっきりと言った。

「彼の地では、窮屈な思いをするだろうからな」

「彼の地、、、」

「お前は、この地で多くを得すぎた。これからそれは、減る一方だと言っている」

 それが人との関わりだと、すぐに分かった。

「、、、、、」

 分かったが故に、言葉が出なかった。

「彼の地には、それが無い。同じ者達に傅かれ、同じ受け答えを繰り返す。今さら、お前にそれが耐えられるとは思えん」

「、、、、、」

「わらわは、それに耐え切れず地に降りた。世代を重ね、産まれる喜び、死ぬ悲しみを、この一族と共に在って知った」

「、、、、、」

「だが、お前はわらわとは違う。わらわの真逆だ」

 しばしあって、伯は頷いた。

「、、、そうかもしれんな」

 この世に連れ出した反面、その素直さを、案じたのかもしれない。

「あの男がお前に残したのは、我ら地仙との“点”でもあるのだ。我らは、変らぬ、、、いや、変われぬ者が、多い、、、」

「、、、、、」

 地仙。

 天界と天上界と呼ばれる天津国を知りながらも、大地に下りて、その地と共に生きる神仙の呼称。

 その多くは、大地の上で発生したものが多いが、稀にそれ以外で、地に下る者もいるという。

「、、、どうもいかんな、説教じみてしまった」

 ついつい多感なこの若者には、世話を焼きたくなってしまう。

「ふん、、、」

 大滝に向け、歩き出したその背中が、

「そん時は眼を閉じて、耳を塞ぐ、、、」

 強がった。

 想像したくも無いのだろう。

 杉の木立に見えなくなるその背を見送って、

― 人に心を砕く事はいい。だが、心を砕き尽くせば、我々でも消滅は免れん、、、 ―

 檎葉は、いつもそれを、案じている。




 椅子の背もたれを抱いて、頬杖をつき、若い娘が唇を尖らせている。

 その視線の先に、辺りに散らばる絵巻を巻きなおし、書物の埃を払っては、見上げる程に高い棚に整然と並べる若者の姿があった。

 首の後ろで切り放たれた砂色の髪が、揺れている。

「ねぇ、胡露うろう様はどう思う?」

 タオフィは、その背に声を掛けた。

「どう、とは、、、?」

 胡露。

 雪色の長袍を纏った優男。

 野狐をまとめる者でもあるのだが、天狐の伴侶とは言え、平素は穏やかなこの物腰。

 そのお陰か、野狐達に慕われている。

「あたしと伯の事」

 胡露が、手を休める事は無い。

 主の気紛れで、書物を読み漁って散らかした書籍を、淡々と片付けるだけだ。

「、、、、、」

「なんとか言ってよっ」

 あれから程なくして我に帰り、天狐の屋敷に戻ってきたタオフィであった。

「私は、昔から若君に嫌われておりますから、よくは分かりませんが、、、」

 渋々と言った様子で、口を開いた。

「うんうん」

 期待のせいか、落ち着かなくなり、前髪を指に絡めている。

「なんと言うのか、、、」

 胡露は、剥がれかけた装丁のものを避けては積み上げながら、

「あの御方、情は持ち合わせても、恋愛感情は恐らく、、、」

「恐らくって、、、?」

「地に足を着けずとも、この世の外郭を成すものに連なる御方。お諦めなさい、タオフィ、、、」

「ええっ、嫌よッ」 

「、、、、、」

 恋する乙女の苦鳴を、背中に聞いた。

 嫌だ嫌だと、聞き分けなく首を振るタオフィに、低く静かな声音が告げる。

「他の殿方にも、その尾を振るうちは、ね、、、」

「うっ」

 思い当たる節が多々あるのか、はっと顔を上げると、長く垂らした前髪の間から覗く、冷ややかな銀恢の眸とぶつかった。

 弛まぬ努力によって、類稀な神通力の持ち主となったタオフィ。

 他でもない。

 始まりは、伯と親しくなりたかったため。

 しかし、若い野狐らが年頃のタオフィを、放っておくはずもなく、、、

「胡露様の意地悪ッ」

 堪らず吐き捨てると、タオフィは廊下へと飛び出した。

 りんりんと遠ざかる鈴の音を聞きながら、

こくでしょうが、、、」

 侮蔑を含んだ溜息が、鼻から抜けた。

「あの方は最初から、一人しか見ていませんよ」




「奥方様。旦那様のお屋敷より―――」

 渡殿を、賑やかな足音が近づいてくる。

 うっそりと脇息に凭れ、屋敷を取り囲むようにして広がる竹の葉が、はらはらと池に散る様を眺めていた女は、貌を上げた。

「蓉亜っ?!」

 とたんに身を乗り出したところで、

「あ、いえ」

 口ごもる侍女の後ろ。

「悪かったな、、、」

 歓迎されぬのは重々承知、と言う貌をした若者が、にこりともせず佇んだのだった。




 金毛で葺かれた大きな耳が、ぴくりと動いた。

「ん、、、」

 鈴が、微かに揺れる音がする。

 さわさわと心地よい薫風に誘われ、ついうとうとして、長椅子でそのまま眠ってしまったらしい。

 上半身を起こすと、豊かな金糸の髪から槿の花簪は抜け、掛けられていた淡い桃色に染められた絹布きぬふは、足元に蟠った。

 虹色にいろどり変える羽衣を腕に巻きなおしつつ、辺りを見回す。

 紺碧の双眸に、変わらず咲き乱れる花々や、その果てに青く滲む山稜が映った。

 煌びやかな離宮や、荘厳たる母屋のどこにも、珍しく誰の姿も無い。

 皆、この屋敷の女主人が眠っている間に成さねばならぬ事が、山程あるらしい。

 さすがの当人も、それを自覚しているのか、呼び立てる事も無い。

 むしろ、終始傅かれる者としたら、

「ふ、、、」

 歓迎すべき環境らしい。

 伸びをすれば、細腰の辺りの九尾が揺れた。

 さて、何をしようか。

 先日、大陸から連れて来た雪豹に化けて野狐共を脅かそうか、それとも瑠璃宮の龍魚の眼の後ろに出来るたまを、そろそろ収穫してみるか?

 結う者も居らぬ髪をそのまま豊かに垂らし、あくびをする女の耳に、

 リィ・・・リリ・・・

「、、、、、」

 鈴の音。

 玉を散りばめた靴を脱ぎぐと、阿四屋あづまやを出た。

 大きな樫の大木の向こうを覗き込めば、膝を抱えた華奢な背中。

「タオフィ」

「んあっ、わ、我が君?!」

 背中から力強く抱きしめられ、しかもそれが屋敷の女主人。

 天狐遙絃てんこようげん

「悩み事かぇ?」

「え、、、あ、っと」

「ふふ、、、」 

 その肌理細かい肌に、丹の色の厚い唇が、触れた。

「あ、、、」

 俯くその頬を、光沢を放つピーコックブルーの爪が辿り、温かな手が包み込んだ。

「私は、悩む者の顔が好きだ、、、」

「我が君、、、」

「真剣だからな、相手にも、自分にも。そこに偽りは無い」

 力強い腕に抱かれ、頬を摺り寄せられると、

「し、真剣だなんて、、、」

 我知らずタオフィの頬は、紅くなった。

 その横顔を、穏やかな眼差しで眺めている所に、

遙絃ようげん、そこで何をなさっておいでです、、、?」

「!?」

 そろそろ目覚めの時だと知ってか、腕に新しい花簪や櫛、綾紐や玉環を盆に捧げ持つ、胡露の声音。

「邪魔をするなよ。無粋な奴め、、、」

 タオフィを抱きしめたまま、遙絃の艶めかしい流し目だ。

「ご命令とあらば、出直しますが、、、」

 銀恢の眼差し穏やかに、胡露が尋ね、

「そうだなぁ、、、」

 まんざらでも無く、思案顔。

「わ、我が君っ、ご、ご無礼つかまつりましたッ」

 それだけ言うと、タオフィは遙絃の腕の中で、野狐の姿へ。

 衣を咥えると、首につけた鈴を響かせながら一目散に、母屋へと駆けていった。

「ああ、、、」

 長い髪を掻きあげながら、

「お前のせいだ」

 長い爪で、指差した。

「私がそろそろ参ると、気づいておいででしたでしょう、、、?」

 心得たものでその手を、胡露が取った。

御髪おぐしを、整えます。遙絃」

「ああ。ついでに爪も、塗りなおしてくれ、、、」

「かしこまりました。お色は、如何いたしましょう?」 

 阿四屋に向かいながら、少し考えて、

「お前に任せるよ」

 手を引く隻眼の伴侶に言った。

「、、、仰せのままに」

 一拍置いて、応じたその横顔を、紺碧の眼差しが穏やかに、眺めている。




「嬉しいわ。それでもあなたが訪ねて来てくれるなんて、、、」

 少し痩せたようではあるが、その美しさに陰りは無い。

 その自信が、そのまま人の姿をしているのだ。

「具合が悪いと聞いた。勝間の主が案じて、使いを寄越してきたのだ、、、」

 包みを差し出すと、白くすらりとした手が、それを受け取った。

「明日にでも、祠にお参りに、、、」

「ああ、そうしてやれ、、、」

 どこかぶっきらぼうな、その居候の若衆。

 早々と席を立とうとするのを、

「もう少し、、、」

「、、、、、」

 筝葉が制した。

 車座のその傍らに、侍女が酒器を運んできた。

 風に揺れる竹林のざわめき。

 鼓膜に心地良い、水琴の音。

 池を行く金魚の鰭がゆらゆらとする、様。

 漂う沈黙だけが、伯に重く圧し掛かり、

「、、、蓉亜は、元気だ」   

「あ、、、」

 自ら、口火を切る形となった。

「来るかと聞いたが、首を振らなかった、、、」

「そうだったの、、、」

 ついつい、吐息が洩れた。

 その溜息に、 

「強がっているんだ、、、」

「え」

「本当は、誰よりもあんたと一緒にいたいのに、、、」

― 俺で、寂しさを誤魔化している、、、 ―

 伯が杯を、おいて言った。

 漆黒の眸が、筝葉を見つめていた。

「それが成長と言うのだろう?」

「そう、よね、、、あの子ももう、七つだもの、、、」

 少し寂しい気もするけれど、筝葉はそう付け加えた。

「俺も、そうだった、、、」

 ぽつりと、伯が呟いた。

「、、、ええ」

 しばしあって、筝葉が淡く微笑んだ。

「わたくしにも昔、それがあったもの、、、」

 気を引きたくて強がったのか、ささやかな反抗のつもりか、今となっては分からないが、確かにあったほろ苦い、思い出だ。

「俺が言うのもなんだが、良い機会だと、思う、、、」

「そうよね。あの人も、来るたびに、そう言ってくれるわ、、、」

 さすがに蒼奘も、足繁く勝間に病身の妻を訪ねてはいるらしい。

 屋敷の行燈に火を入れる、侍女らの足音。

 それを耳にした伯が、外を眺めた。

 夕暮れにはまだまだ早いが、山の向こうに太陽が傾けば、薄闇に包まれる勝間山麓。

 空を眺める、端正な若者の横顔。

 帝都の屋敷に在る時こそ異形の姿だが、こうして訪れる時は、これでも気を使っているのか、癖のある黒髪を青い組紐で結い、肩に長く垂らしている。

 口は悪いが頼りになる、蓉亜の守役。

「あなたには、言っとこうかしら、、、」

「、、、、、」

「実は、、、」

 平素、眼差しきついその眸が彷徨い、僅かに頬が紅潮している。

 柄にもない事を良く知っているのか、どこかもじもじとする筝葉を、

「、、、、、」

 伯の眼差しが、訝しげに見つめている。

ややが、、、」

 袂で頬を押さえた、筝葉。

 どうも、暑気中りを案じて蒼奘が通ううちに、何のことは無い懐妊したらしい。

「、、、、、」

 無表情のまま、伯は立ち上がった。

「ふ、普通は祝いの言葉ぐらい、贈るものよ?」

 その態度に、今度はつんとした筝葉。

「予兆は、薄々感じていたさ」

「え、、、」

 つい先日分かったばかりだと言うのに・・・

 筝葉は、ぽかんと口を開けた。

「多少は、機を読めるからな。忘れたか、俺は異形だ、、、」

 人の悪い薄笑いを浮かべ、その背は廊下へ出た。

 人を嘲るものではなく、どこか、自嘲を含んだような、そんな・・・

 それは、異形である事を、己に自身に刻み付けているような言葉であった。

「伯」

 曲がり角の向こうへと歩み去るその背に、筝葉は我知らず声を張り上げていた。

「あなたが、蓉亜のそばにいてくれるからなの」

「、、、、、」

「あなたがいてくれて、本当に感謝してる。あなたがいつもあの子を見守ってくれてるから、あの人も、わたくしも、、、あなたはわたしたちのっ、、、あっ」

 口をついて出た、その言葉。

 己の声の大きさにはたと気づいて驚いて、口を押さえた筝葉の視線の先で、

「筝葉」

 伯の唇が、今度ははっきりと吊り上がったのが、見えた。

「明日、祠で報告してやれ。主も喜ぶぞ」




 参拝客の姿が在る石段ではなく、深い森を抜けた。

 背丈以上もある芒の茂みを抜け、鴉羽色の狩衣を叩くと、羽毛のように綿毛が舞い上がった。 

 刈取りが済んだ田には、獲物を探す白鷺や青鷺に混じって、水浴びをする椋鳥の群。

 途中、何かを咥えて塒に急ぐ狐の姿が、彼方に見え、

「ッ」

 一瞬、身構えてしまったのだが、狐はこちらを一目見ただけで、茂みに消えていった。

「、、、、、」

 人違いならぬ、狐違いで杞憂に終った。

 街道を尻目に畦道を行き、黒央門を潜った時、西の山稜に太陽が傾きだしていた。

 家路を急ぐ人々や、荷車、牛車。

 懐手の伯の傍らを、狐とおかめの面をつけた子供達が走って行った。

 いつもは閑散としている路地から、今日はやけに人の出入りが多い。

 往来を行くその耳、程なくして賑やかな祭り囃が飛び込んできた。

 覗き込めば、人の流れに負けて、その中へ。

 軒先には、揃いの提灯が提げられ、石段の先のお堂からは、甲高い調子の篠笛や和太鼓が響いてきた。 

 鞠打ちて遊ぶ者いれば、陽気に踊る者もいる。

 小さな規模の、小さな地区での、秋祭り。

 それでもここぞとばかりにお堂への道の両脇には、毛氈を敷いて露天を出す者達の姿。

 茹でた栗や餅、酒といったものから、櫛や簪、白粉、紅といった贅沢品、お面や風車かざぐるま、歌留多といった玩具等等・・・

 どうやら人々のお目当ては、それらしい。

「、、、、、」

 その中で一際、子供達の熱い眼差しを注がれている者がいる。

 子供達の頭の上。

 伯が覗き込んだ先には、竹の籠や鞠が格子に吊られていた。

 その中に、小鳥や虫の姿。

 子供達の眼差しは、その中に蹲るようにして座る店主の手元に注がれていた。

 草を細く裂いた物を、黙々と折っては組み、編んでいく。

 それはみるみるうちに緑の小兎になって、半円状の竹の丘の上にて、飛び跳ねた。

 草に命を紡ぎだす、皺深いその手に、子供は一様に魅せられているのだ。


「お、、、」

 人込みで辺りを伺っていた男は、簪や手鏡が並ぶ一角に腰を下ろしていた若者の肩を、

「よう兄弟、女に贈るものでも探しているのか?」

 抱いた。

「、、、、、」

 憮然としつつ、漆黒の眸が不届き者を鬱々と睨み上げ、

「品定めか、まゆも?」

「おまっ、馬鹿、なんて事言うんだよっ」

 赤毛の若者は、その口を大きな手で塞いだ。

 露骨に訝しげな眼差しの年増女に金を渡すと、

「今日は、お前と潰す時間は無い。その相手が、屋敷で待っているんでな、、、」

 手のものを、袖に仕舞いながら立ち上がった。

「なんだよ、つれないな、、、」

 見上げれば、空は茜色。

 たなびく雲が、橙に焼けている。

「さすがの俺でも、ここいらのやつらからは、、、って、おいッ」

「それじゃあな、まゆも、、、」

 腕を振り払うと、人混み向こうへと擦り抜けて、往来へと消えていった。

 相変わらずのその様に、取り残された男は、

「だから、梁鬼りょうきだって、、、」

 いつもの、溜息だ。




 門前で、蹲っている者がいる。

 手に木の枝を持ち、何やら大地に描いているのは、蓉亜。

 篝火を燃やす、鉄の柱。

 火を焚く時間にはまだ少しだけ、早いようだ。

 その鉄柱に腰を下ろしているのが、黒髪を楓の枝で結い上げた蟲姫だ。

≪あ、、、≫

 ふわりと、往来にその身を運ぶ。

 賑わう往来の人々も、頭上に在るその姿に気づく事は無い。

≪お帰りなさいませ≫

 蟲姫を纏いつかせたまま、懐手で門を潜った、伯。

 その声に顔を上げた、蓉亜。

「お帰り、伯」

「おぅ」

「ねぇ、母上は?」

 帯を掴んで、見上げてくる。

「変わりない。主の、俺を呼び出す口実だった、、、」

「そっかぁっ、良かったぁっ」

 にっこりとした蓉亜を、眺めていれば、

≪主様、お怪我はございませんか?≫

 頬を摩る蟲姫の冷たい手。

「ああ、、、」

 伯の手が、その手を取ると、

≪え、、、≫

 蟲姫の指は、ひやりとすべらかなものに触れた。

「遅くなったな」

 漆が塗られた蛤の中には、鮮やかな丹紅が覗いている。

≪嗚呼、嬉しい、、、≫

 紅を胸に抱いた、蟲姫の傍らで、

「なんでなんで?!どうして蟲姫だけなの?!」

 顔を口にして喚くのが、蓉亜。

「煩わしいヤツだな、お前」

「わっ、と、、、」

 その手に投げ渡されたものが、ある。

 ころり…

 蓉亜の両手に、なんとか収まった。

「あ、これ、、、」

 首に、半透明の蟲姫を巻きつけたまま、楓の枝に飛び乗った、伯。

 ごろりと伸びたその胸元に、頬を寄せる蟲姫の好きにさせ、

「どうしたの、これ?」

「やる」

 手に乗る程の、竹の鞠。

 覗き込んだその中には、緑の蟷螂かまきりが二つ。

 それは草木で折られた、精巧なものだった。

「いいの?」

「いい」

「うわあっ」

 誰に見せようか、蓉亜が母屋へと駆けて行く。

 その遠ざかる足音を聞きながら、頭上に垂れた栞に手を伸ばす。

 その上に在る風鈴が、澄んだ音を響かせる。

 伸ばされたままの腕に、半透明な手が絡んだ。

≪何か、あったんですの?≫

 胸の上の蟲姫が、おっとりと見上げている。

「ああ。少しな、、、」

≪ほんの少し、蟲姫にもお教えくださいまし、、、≫

 駄々っ子のように、唇を尖らせる。

 珍しく、気分が良いのか、

「俺に約束された時間は、蓉亜に比べたら計り知れぬ。だから、悔いの無いようにしただけさ、、、」

 伯は、腹にひやりと蟠る蟲姫の気配を感じながら、ゆっくりと目を閉じた。 

 蟲姫は、そろりと身を放すと、

≪この想いも、抱いた憎しみも、いつかは薄れ、朽ち果て、そして無に還る。時は無情。でもそれ故に優しくもあるのではないかと、それを教えてくれたのは、あなたさまでしたね、、、≫

 吊られたままのしゃれこうべの中へ。

≪でも、、、≫

 程なくして、朱鷺色の唇から寝息が細く、聞こえてきた。

 楓の枝の上。

 今日は伯も蒼奘も、屋敷に入り浸りのタオフィの姿も無く、庭の選定から屋敷中の掃除に精を出していた琲瑠が、薪を抱えながら篝火の準備のため門へ急ぐ姿が、垣間見える。

 宵闇が、辺りを包み始めていた。

 そんな中、

― 想いを残して目の前から消えてしまうと、そこには確かに傷が、残るもの、、、 ―

 ゆらりゆらりと揺れる、しゃれこうべ。

 赤光を嵌め込んだ眼窩は、見守る。

 伯が見る夢を・・・



 イメージとして筝葉は、きつめの感じの、勝間大社の一人娘。

 一見冷ややかだが、内に熱いものを秘めている、感じで書いてます。


 蒼奘が本編で、こもりゆきの紋の入った狩衣を纏っているシーンが、あります。こもりゆきは、勝間の家紋の設定なので、おかしい、と思われた方が、、、いるのかどうか、それは僕には分かりませんが、、、


 実は蒼奘さん、夫婦別姓の婿入りと言う形で婚儀を挙げているんですな。


 しかも、本編で書いてはおりませんが、時々、蒼奘さんは、現世に戻ってきたりしては、いたんですね。もう一柱の蒼奘さんの都合もあり、行ったり来たり。その間に、祝言、挙げたんでしょうね。で、筝葉が仕立てた、こもりゆきの紋が入った狩衣が、屋敷にあったわけです。ま、冥府の蒼奘さんが、家紋に気付いたのかは分かりませんが、せっかく送ってくれたのに、季節を逃してはならない、せめて袖を、と、汪果がこっそり、用意したんでしょうな。


 彼が、都守の職を辞した後の天下り先は、勝間の神主ですわwww

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