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5話 ラノベ

 俺が子供の頃の夏休みのことだ。おばあちゃんの家の裏山に虫を取りに行った。昼間だったが、山の中は薄暗くて、少しひんやりして、不気味だった。入り口を少し進んだ所にある太い朽ちた木がオバケに見えて、俺は裏山から逃げ出した。

 俺は途中何度か転びながら走って家まで帰った。そして優しいおばあちゃんに慰めてもらった。俺はもう裏山には行かないと言った。おばあちゃんは少し悲しい顔をした後、「怖いのは仕方ないわ。でも必ずオバケに打ち勝てるわ」と言った。俺は無理だと言い返した。おばあちゃんは「あなたなら出来るわ」と言った。俺は無理だと言って走って逃げだした。そして障子にぶつかって、バキバキにビリビリに障子を壊した。

 それから裏山には二度と行かなかった。


 おばあちゃんは俺を臆病な子だと思っただろうか。




 ********


 

 異世界の4人はデンジャラス山の入り口付近で、休憩しながら作戦会議をしている。


 まず俺が意見した。

「これからどうする?またワシが来たらまずいよね」


 ヨネとルークは大ワシの事をあまり覚えていないようで、様子見している。リナが答えた。

「そうですね、間一髪でしたからね。ワシに見つからないように飛んで進めば大丈夫だと思うんです。林の木の間を飛べば、見つからないと思います」


 俺は、なるほどと言って賛成した。ヨネは「サトシの背中に乗れたら何でもいいわ」と賛成し、ルークも「ヨネたんがいいなら」と賛成した。


 休憩を終えた俺達は、またさっきのように3人が俺につかまって、飛び上がった。木々より上空に出ないように気をつけながら山林を進んだ。途中、何度も猿みたいなのが襲ってきたが、俺が放つ小さめのサトシファイヤーであっさり倒せる連中だった。4人は順調に山林を進むことができた。


 やがて木々が途切れて、険しい勾配の岩場に出た。俺たちはそこで一旦地上に降り、作戦会議を始めた。


 リナはここからは本当にすっごく危険だと言ったが、何が危険かは知らなかったようだ。

 周囲の視界が開けているが、鳥の類は全くいなかった。幸いこの高さを飛び回る鳥はいないのだろう。地上にも敵は見当たらない。

 4人は罠があるのだろうという意見で一致した。さらに、罠があるなら巨大な丸岩が転がってくる罠だろうという意見でも一致した。というより誰もこれ以外思いつかなかった。


 やっぱり飛んでいこうという結論に達して、4人は再び飛び上がった。そして岩肌から十分距離を取って進んでいく。


 ゴロゴロゴロと大きな音を聞こえた。巨大な丸岩が上の方から斜面を転がってきた。そら見ろ、予想通り。その罠は上空を飛ぶ俺たちには全く無意味だ。4人は上空から岩に向かって「ざまあ」と連呼した。それでも、巨大な丸岩があちこちから次々と転がって来た。「ざまあ」と連呼する4人の眼科には、これでもかというくらい丸岩が転がり続けている。4人はしだいに飽きてきて、「いい加減うるさいよ」と丸岩集団を罵った。


 丸岩の罠が終わると、猿が何匹か出てきてキーキー悔しそうに叫びながら、石を投げつけてきた。それをルークが得意の足技でけり返して猿たちを返り討ちにする。その度に他の3人は歓声を上げた。


 次に中ボスっぽい岩の怪物が出てきた。大きな岩石で組みあげられた体でノシノシと歩いてくる。青白く光る目でこちらを確認すると、ゴオオ!とおたけびを上げ、地面の岩を引っこ抜いて投げつける動作をする。迫力満点だが動きが鈍い。俺がサトシファイヤーを放つと、岩を投げる間もなく盛大に爆発して、粉々の石と化した。

 4人はキャッキャ、キャッキャと盛り上がった。


 そしていよいよ、見上げる先に岩壁の端が見えてきた。きっとあそこまで行けば頂上だ。俺達は近くの安定した地面を見つけて、そこに降り立った。そして作戦会議を始める。


 リナが口火を切る。

「きっとこの上の頂上が竜の住処です。絶対に、最強に、超絶に危険です」


 ちょうどリナがそう言い終えた時だった。頂上からドンと大きな音がして、山が揺れた。周囲でいくつもの石がカタカタ音を立てて転がり落ちていく。


 揺れが収まると、4人は目を合わせて、ふうとため息を吹いて緊張を解いた。

 間違いない。この先に竜がいる。


「リナの言う通りだ。みんな気を引き締めよう」

 俺は作成会議を進める。

「リナ、竜について知っている事を教えてくれ」

「はい。竜は巨大です。最初に出た大ワシの10倍くらい大きいです。しかもあれと同じくらいの速さで飛び回ります。恐ろしいのは、灼熱の青い炎を吐いて私たちを襲う事です。しかも体が硬くて、弓が当たってもはじき返してしまいます」


「弱点とかはないのか?」


「詳しくは誰も分かりません。ただ、頭の眉間が弱点だと、ラノベで読んだことがあります。本当かは分からないですけどね」

 やっかいな相手だ、勝てるか分からない。気を引き締めねば。俺は身震いする思いで、竜の戦いを頭の中でシミュレーションする。


「ラノベってなんなの?」

 ヨネがリナが使った聞きなれない言葉に食いついた。


「私がよく読む小説です。魔術師が貴族と恋をしたり、冒険して勇者と恋をしたり、うふっ。最近は逆ハーにはまっています。うふっ」


「あら、今の私にぴったりじゃない。見せてほしいわそれ。それにギャクハーってなんなの?」


 リナとヨネが全く緊張感の無い話で盛り上がり始めた。このおばあちゃんは少しずつ乙女になってきているらしい。

 うふうふキャッキャな女子トークを尻目にして俺はルークに歩み寄った。ルークは緊張のこもった真剣な表情だ。彼も竜との対戦に考えを巡らせているのだろう。


「ルークはどう思う?」

 と俺は聞いた。

「僕は、聖女が王子とイチャラブするやつが好きだぞ」

 おい。


 俺は、この状況に自分だけ緊張してることにイラついてしまった。

「あなた達なんなの!?竜と戦うんだぜこれから!緊張感もとうよ。作戦考えようよ?」


「ん?あら?サトシが花をとってきてくれるんじゃなかったの?それと、私は別に竜を倒さなくてもいいわよ」

 ああ、確かにそんなこと言ったな。

「サトシさんなら大丈夫ですよ、倒しちゃって下さい」「うん絶対勝てるよ。強いもん」


 そうだったのか。みんな俺が一人で行くと思ってたのか。そして確かに自分からそう言った。でもいざ目の前に来るとすごく不安になるんだよな。せっかくだら助けて欲しくなっちゃうんだよ。


 ヨネが俺の前に立った。

 ヨネは俺の両肩に手をのせて、まじまじと俺の顔を見つめた。


「サトシ。がんばって。あなたなら出来るわ」


 ヨネの目が潤んでいる。

 入れ替わりで、ルークが俺の前に立つ。ルークは俺の手をとって力を込めて握手する。


「村のために頑張って欲しい。万が一の時は逃げてくれて構わない」


 ルークの目には期待と信頼を感じる。


 最後にリナが俺の前にゆっくりとせまる。彼女は胸元を両手で押さえる。

 俺の横の方からは早くも聖女がどうとか王子がどうとかいう話が聞こえる。

 リナは言葉を整理するように少し押し黙った後、意を決したようにうなずいてから、口を開く。


「竜を倒して、戻って来くれたら、……私の家に来てください。……私の大事なモノをお渡しします」


 リナは顔を赤くしてうつむいた。


 おれは覚悟を決めた。必ず竜を倒して戻ってくると心に誓った。


「必ず竜を倒してくるよ。待ってて」


「はい。どうかお気をつけて」


 おれはみんなに向き直り「行ってくる」と別れを告げた後、杖を握りしめゆっくりと飛び立った。

 見上げる険しい岩壁の先は、空が青い。自分の覚悟を確かめながら、高鳴る気持ちを落ち着かせながら、ゆっくり頂上に向かっていく。

 下の方から、乙女ゲームとかシークレットルートという言葉がかすかに聞こえる。




さあクライマックスへ


<つづく>


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