表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/6

3話 鶴翼の陣

 俺のおばあちゃんの家の庭は広かった。庭というより空き地みたいな所だ。俺は子供の頃、そこで虫を取ったり、木に登ったりして遊んだ。

 庭で穴を掘っていたらミミズが出てきて、俺はびっくりして家の奥まで駆けこんだら、おじいちゃんの大事な壺を割ってしまったことがる。おじいちゃんにはすごく怒られたけど、おばあちゃんは優しく慰めてくれた。おばあちゃんは挟み将棋をやろうと言ってくれて、俺はそれに勝てたから気分を直した。

 楽しくなってもう一勝負すると、今度は負けそうな展開になって俺は逃げようとした。おばあちゃんは「あきらめちゃだめだよ」と言った。戻って勝負を続けると最後には少しの差で勝つことができた。


 大人になってみると、あれはわざと負けてくれたんだなって分かる。



 *〇****〇*

 ***〇〇***



 異世界の4人。サトシ、ヨネ、リナ、ルークはデンジャラス山の入り口にいた。


 デンジャラス山。それは凶悪な竜の住処、そして危険極まりない山。

 そこに挑もうとする4人の強者。ややこしいので今一度整理しよう。


① 俺=サトシ=爽やか魔導士(まだ魔法が使えない)

② ヨネ=美人剣士=前世は俺のおばあちゃん=ルークには俺の妹と言ってある

③ リナ=美人回復師

④ ルーク=ワイルド武闘家=リナの兄



 先を歩くリナが標識のそばに立って、他の3人に「こっちです」と手招きをする。道の脇にある木でできたその標識には「⇐竜の住処」「入るな危険!」と書いてある。


 リナは進む方を指しながら、他の3人に向かって言う。


「皆さん、ここからがデンジャラス山です。すっごく危険ですので気を付けましょう」


「「「 はーい 」」」


 3人はそろって返事をした。なかなか息が合ってきた。3人は俺、ヨネ、ルークの順で横に手をつないで歩いている。ヨネが気分に乗って手をつなぎましょうと言い出したからだ。しかしリナは仲間外れにされて、先導役として3人の前を歩かされている。


「では参りましょうか」

 とヨネが言うと、リナがヨネの様子をうかがいながら恐る恐る言う。


「あのう、3人とも手を離して歩いて頂けませんか?それとフォーメーションを組みましょう。ヨネさんとルーク兄さんが前衛で、私とサトシさんが後衛でいかがでしょう?」


 うん、俺はとても良い案だと思った。俺にとって考え得る最高のフォーメーションだ。

 ヨネはフォーメーションとか前衛、後衛って何かしら、というので俺がその意味に加えて、パーティの戦術について教えてあげた。しかしヨネはリナの提案に不満だった。


「二人組の組み合わせはそれでもいいわ。でもあなた達が前を歩きなさい」


 ここで俺とヨネの戦いのゴングが鳴った。ヨネはきっと、俺とリナがイチャイチャしないように目を光らせながら、後ろでルークとイチャイチャしようとしているのだ。しかし理は俺にある。戦術にはセオリーがあるのだ。残念だったなヨネ(おばあちゃん)


「いやヨネ、剣士のヨネと武闘家のルークが前に決まってるじゃないか」

「そうですよヨネたん。魔導士のサトシと回復師のリナを俺達で守らなきゃだめなんだよ」


 ルークも俺に加勢した。これで俺の勝ちだ。ちなみにルークは俺のおばあちゃんの事をヨネたんと呼ばされている。しかもヨネたんは俺の妹だと思わされている。


「いいえ。鶴翼(かくよく)の陣を用いましょう。私とルークが後方に並ぶの。そして鶴が翼を広げるようにサトシが左前でリナが右前に広がった配置にします。敵を包囲するのに適した陣形なの」


「いや、それじゃあ余計に――」


「おだまりまし!あなた達とは年季が違うんです。私は村の将棋大会で優勝するほどの腕前なんですからね。戦術の事は私に任せなさい」


「リナたんて、いったい……」


「ルークくん。要するにね、私は若い美人剣士で若い美人軍師なの」


 んー忌々しい。さっき年季が違うって言っただろ。村の大会に勝っただけで軍師なわけねえだろ。

 なんで俺とリナがそんなに離されなきゃならないんだ。


「わ、分かったよ。信じるよヨネたん」「……ヨネさんがそういうなら」

 納得した。この不思議な説得力は年寄りのそれだ。おれは絶対おかしいと思ったが、この不利な状況に渋々頷くしかなかった。


 4人は俺、ヨネ、ルーク、リナと広がって並び、俺とリナが前方に出た陣形、鶴翼の陣に並んだ。


 4人は少し緊張した面持ちで前方を見た。道幅はしばらくは陣形を保てるくらいに広そうだ。そして緩やかな坂道になっている。周囲は濃い緑の木々に覆われ、鳥のさえずりが聞こえる。デンジャラスという名前が無ければ森林浴を楽しめそうな雰囲気だった。


 リナが再度気を引き締めるように促した。


「みなさん、本当に危険なので注意してくださいね」


 俺達は歩み出し、ついにデンジャラス山に足を踏み入れた。


 後衛の二人が山に入った瞬間だった。後方から強い風が俺達に吹きつけた。地面の小石が震えてカタカタと鳴り始め、バサバサッと鳥達が一斉に飛び立つ音が聞こえた。どうした?と思った直後だった。グオオオオ!!という咆哮が鳴り響き、地面が揺れ、木々がミシミシと音を立てた。


 竜だ。

 竜とは距離が遠いのは分かる。それでも恐怖を感じるに十分な威圧と迫力だった。


 俺は足を踏んばって立ち、杖を構えて周囲を警戒する。地面の揺れが続く。


 しばらく続いた揺れが収まり、周囲は元の静けさを取り戻した。

 入っていきなりこれかよ。かなり危険な所に足を踏み入れてしまったようだ。


 俺は警戒を緩め仲間の方を見た。


「みんな大丈夫か?…………ておい!」


 ヨネとルークが地面に膝をつけて抱き合っていた。ルークの方は震えているようだ。ヨネは優しくルークの背中をさすっている。


「もう大丈夫よルークくん。収まったわ」

「ヨネたん。ありがとう。怖かったよぉ」

 ルークのキャラが変わってる。ワイルドキャラは消え去って、子犬キャラに変わったようだ。


 一方リナの方は。

「サトシさんっ……私、立てません」

 リナは完全に尻もちをついていて、腰を抜かしているようだ。今すぐ助けてあげたい。


「リナ!」

 俺はリナに駆け寄ろうとした。その一歩を踏みこんだ時だった。


 踏み込んだその地面が抜けて、俺の足は地面の土と共に地中に吸い込まれた。ドドドドッという轟音と共に周囲の地面がもろく崩れて地面の土砂が地中に落ちていく。


 俺は為すすべ無く周りの土砂と一緒に奈落へと向かうことになった。


 自由落下の最中、俺はもうだめだと目を閉じた。すると走馬灯を見た。俺が子供の頃のおばあちゃんだ。「あきらめちゃだめだよ」と言った。


 俺は目を開ける。真っ暗だ。暗いのは怖い、せめて明かりを付けてほしい。そう思った時だ。


 手に握っていた杖がぼーっ黄色く光りだした。

 俺ってこんな事できるんだ、だけど今さらだ。

 

 周囲が明るくなって見えるようになった。

 ん?目の前で何かが動いている。ぼやけていた焦点をその動いているものに合わせた。


 ンギャア!!と俺は奇声を出した。


 焦点を合わせた所にいたのは、ミミズだった。通常よりも長い、その上くねくね元気に動いていた。


 きもいきもい!逃げたい!俺は上に向かって泳ぐよう両腕を動かした。しかしまるで上に進まない。ちくしょうっ!泳げろよ!…………


 泳げた。


 杖が水色に光っている。

 すいすい上に向かって泳いで進んでいく。すごく簡単だった。なんだ、出来んじゃんおれって。びびって損した。

 俺はそのまま、すいすい空中を泳いで地上に出た。


 地上に出ると、俺を確認したみんなが喜びの声を上げる

「サトシ!無事でよかったわ」「サトシさんやっぱり最強です!」「サトシくん!心配はいらなかったな」


 地上では3人とも無事だったようだ。


「サトシ、あなた魔法を使えるのね!」

「ああ。できるようになった。みんなも無事でよかった」


 地面には奈落まで続く大きな穴が開いている。ちょうど俺がいた所とリナの間を中心に、リナや他の2人のぎりぎり手前まで穴が広がっている。

 もう少しで4人全員が奈落に落ちるところだった。


 本当によかったよかった。

 それにしても。



「鶴翼の陣でよかったね!!」




冒険は続く。というかまだほぼ入り口。


<つづく>


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ