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憤怒の赤、狂い咲く華  作者: 徳川万次固め
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一話 冒険者の日常

 薄桃色の鎧を着た男は自分が持つ武器の重みを改めて確認した。

 長さは片手剣よりやや長い程度だが、逆に幅と厚みは通常の倍以上ある片刃のバスタードソード。

 それを両手で構え、彼は眼前の大モグラ達を見据える。

 数の不利はあるがそれはいつも通り、問題はない。

 それに己の横には、人を乗せられる程の体躯を誇る迷宮オオカミのラグロもいるのだ。

 自分とこの相棒がモンスター数匹程度に負けようはずもない。


 唐突に突進してきた一匹に対し、彼は剣を大きく振りかぶり叩き付けた。

 長さに対して凶悪な重量を誇るそれは見事にモグラの頭部を一撃で粉砕する。

 しかし敵もただやられるだけではない。

 男の攻撃後の隙を狙い、沈黙した仲間を飛び越えて別の一体が大きな爪を振り回してくる。

 男はそれを素早いバックステップで避けると、続けて行われようとしていた逆手の爪攻撃を幅のある刀身で受け止めた。


「おぉっ…………ッフ!」


 眼前に持って来た刀身をそのまま勢いよく押すと、大モグラの体勢が大きく崩れる。

 男はその隙に渾身の突きを相手の胸元に打ち込み、敵を仕留めていた。


 男の戦いぶりはなかなかのものだった。

 とは言えモグラの群れはまだ存在している。油断すれば呑み込まれてしまう可能性は十分にあった。


「ラグロ、攪乱っ」


 しかしそれは杞憂というものであろうか。

 男は傍に控えていた狼に指示を出す。

 すると狼は待ってましたと言わんばかりに駆け出し、モグラたちの間を縫うように走り抜けた。

 素早く自分たちの横をすり抜ける物体に思わず反応してしまったのだろう。

 モグラたちは男の傍にいたものも含めて、皆後ろを振り返ってしまう。


「シッ」


 そして男はそんなチャンスを見逃しはしなかった。

 力を込めた横薙ぎで一体を切り裂き、更に残りのモグラにも躍りかかる。

 戦闘はこの男、アグゼの勝利で終わりを迎えようとしていた。




 ----




「……爪だけ貰っていこう」


 血溜まりにひれ伏す大モグラたちの死体を見ながら彼はつぶやく。

 少し離れたところでは警戒するようにラグロがキョロキョロと周囲に視線を向けていた。


 アグゼの今回の探索の狙いは、迷宮内に自生する魔力回復用ポーションの素材となるネジレキノコの採取であった。

 冒険者にとっては基本のような採集物の一つで、しっかり集めたときの売却額は重量から見ればなかなか悪くない。

 しかしそれは基本と言うには意外と見つけることが難しく、ギルドが常時買い取り受け付けをしている素材としては人気のない部類に属するものだった。

 彼の場合は狼であり鼻の利くラグロを頼りにすることで、なんとかキノコを素材袋がそれなりに膨らむ程度には採取できていた。

 今はもうこれ以上の素材を回収することが難しく、新たに素材を持ち帰ろうとするなら物を厳選する必要があったぐらいである。


「前はもっと手こずったものだが」


 大モグラは浅い階層に出現するにしてはなかなかに危険なモンスターだ。

 冒険者を名乗る者ならば倒せて当然と考える者も存在するが、見た目に比して知恵が回り他の個体との連携もある程度可能とする。

 それだけでも十分厄介と言えるのに、大モグラは地中からの強襲という特技をも併せ持つのだ。

 振動で気付くなど対処方法もあるにはあるが、多少の慣れ程度だと駆け出し冒険者ではパーティー単位で不覚を取る可能性は十分に考えられた。


 まぁ今のアグゼにしてみればそんな話もそこまで恐れるものではない。

 事実、かなりの数を一度に相手にしたが、特に問題なく処理できているのだから。


 男が兜のフェイスガードを上げると、まだ若い精悍な褐色気味の顔と赤い髪が現れた。

 彼はラグロを呼び寄せると、その背に括り付けてあるポーチから水袋と金属製のボウルを取り出す。

 ボウルを地面に置きそれを満杯にしてやるとラグロは喜んで水を飲み始めた。

 彼もそんな相棒と同じく水分補給をするために水袋を口に含む。

  

「ふぅ」


 一息つくと、アグゼは大モグラたちの死骸から大爪を切り取り始める。

 そして回収したそれらを予備の小さな素材袋に詰め込んでいき、一通り素材収集を終えた彼は一仕事を終えたことに満足して薄く微笑んだ。


 ふと顔を上げてラグロを見る。

 水を飲み終えた相棒がジッとたたずみ、何かを警戒しているような姿勢でいたのだ。

 人より優秀な知覚能力を持つ迷宮オオカミのその姿にアグゼは異変を感じ取った。

 自身も動きを止め、神経を全て周辺への索敵に回す。

 そしてほんの数秒後、彼の耳は人の叫び声のようなわずかな音を拾い上げた。

 彼は空になったボウルと水袋をラグロのポーチに押し込むと、フェイスガードを下ろし相棒に声を掛けた。


「ラグロッ、案内してくれっ」


 ワゥッ


 その声に応えオオカミは走り出す。

 そしてそれを追いアグゼもまた駆け出すのだった。




 ----




「ちくしょう、嫌な攻め方してきやがってっ!」


 髪は背中まで伸びているが、口調と気の強さがにじみ出る表情のせいもあり少年のような雰囲気を与える少女だった。

 両手用のウォーハンマーを握りしめ全身で呼吸をしている。


「リジィ、耐えてくれよ。今飛び出しちまったら全滅につながる」


「でもっ、ディーン兄ちゃん!」


 少女に呼び掛ける男は彼女に比べると年上のようで、その分冷静な面持ちで立っていた。

 しかし頬を伝う汗が彼にも決して余裕がないことを示している。

 両手には弓矢を構えており後衛として戦っているが、残りの矢が少なくなってきていることも問題だ。


 そもそもディーンはレンジャーであり、探索などを主任務とする人物なのだ。

 戦闘がメインの仕事場ではない。

 しかもその戦闘でも、彼は機動力を生かし常に立ち位置を変えながら弓による援護を行う中衛寄りの後衛だった。

 今彼の足元には一組の男女が倒れている。

 彼らは二人の仲間だったが、どちらもまだ息はあれど今は完全に意識を失っている。

 そしてそんな彼らの存在が、ディーンとリジェッタに本来の戦闘スタイルを許さないのであった。


(このままじゃジリ貧だ。やはり、リジィに暴れてもらうべきか)


 リジェッタはパーティーのアタッカーだ。

 攻めることにこそ真髄がある。

 今は何とか不慣れな防衛に回ってもらっているが、このままではいずれ数に負けて押し潰されてしまうだろう。

 そうなれば結局四人とも終了だ。


 今日は厄日だ、そう思いながらディーンは覚悟を決め、決死の攻めに転じる指示を出そうとする。

 しかし、彼はまだ幸運の女神から見捨てられてはいなかった。


 ディーンの耳に、自身に向かって走ってくる足音と声が届く。


「無事かっ」


 赤い髪は兜に隠れているが、薄桃色の鎧と黒のインナーのコントラストが眩しいアグゼの姿は、他者にそれが何者かをすぐに理解させる効果があった。


「っ、アグゼか! 嬉しいぜ!!」


「状況は?」


「見たまんまだ、攻めでも守りでもいい、手を貸してくれ。礼は後でするっ」


 非常時の冒険者間における空手形など揉め事の種になり得るものだが、幸いにも二人は知り合いであった。

 まぁ世の中、知り合いであろうと必ずしも穏便にことが進むとは限らない。

 しかしディーンは、今は意地を張る場面ではないと考え協力を要請した。


「任された。ラグロ、負傷者の護衛だ。俺は攻めに回る」


「……相変わらず賢い狼だねぇ。芸を仕込むってレベルじゃねぇぞ」


 生還への道筋が見えたことで余裕が生まれたディーンは軽口をこぼす。

 そして倒れた仲間たちの前に頼もしい助っ人のオオカミが立ったことを確認すると、改めて矢をつがえ直した。


「ボクはあんまりアンタのこと知らないんだけど、合わせてくれるの?」


「得物を見る限りアタッカーなんだろ? 後ろは気にするな、暴れてくれ」


 戦闘に邪魔な素材袋を放り出したアグゼが前衛として並ぶと、リジェッタは手短にフォーメーションの確認をした。

 彼からの返事を聞き口元に笑みが浮かぶ。


「それならっ!!」


 リジェッタはウォーハンマーを長く持つと、思いっきり遠心力を利かせるような形で大きく振り回す。

 技術よりも明らかにパワーに傾倒した動き、それは同じく純粋な力に生きる生物を怯えさせ委縮させるには十分な攻撃だった。

 振り被られたハンマーはそのまま目標に叩き付けられ、哀れ標的となったモグラは完全に潰されてしまう。


 全身を使った大きな一撃は当然相応の隙を生むが、先ほどまでとは違い今はその隙をカバーする人員がいる。

 リジェッタに向かう一体に対し横から割り込んだアグゼは、素早く逆袈裟に刃を振り上げた。

 斬撃を喰らったモグラは耳障りな悲鳴を上げるが、手応えが軽いと感じたアグゼはトドメに繋げる為の前蹴りを放つ。

 速さは無くともしっかり大地を踏みしめた追撃のキックは人間大のモンスターを後退させ、そこに上段からの縦斬りが繰り出された。


「ヌ゛ンッ!!」


 彼の得意技である踏み込みからの正中線唐竹割りだ。

 わずかにもれる声と共に降ろされた一閃はモグラを見事に両断した。


「いいぞぅ、これなら何とかなりそうだなっ」


 戦局が一気にこちら側に向いてきたことをディーンは感じていた。

 自身は後衛に近付こうとする敵に対し弓矢で牽制することを仕事と考え、倒れている仲間の傍を離れないよう意識しながらそれに従事する。


 ふと同じく仲間の近くに立ちながらも遠距離への攻め手が無さそうなラグロの様子が気になり、彼はチラッと横を見る。

 するとその狼は唸りながら地面を見ており、ごく小さな何かを察知しているようだった。

 そして確信を持ったのか、急に姿勢を正し地面に向かって遠吠えに似た咆哮を放った。


 アオオォーンッ!!


 指向性を持ったハウンドボイスだ。

 ディーンはその詳細な効果は知らなかったが、ラグロのそれは狙った相手に対し全身をすくみ上らせる力があるのだ。

 ラグロの視線の先の地面が急にモコモコと膨れ上がり、そこから大モグラが一体顔を出した。

 本来決定打になり得るほどの技ではないものの、近距離かつ地中ゆえに土を通して大きく頭部を揺さぶられたせいであろうか。

 何とか地中から這い出たモグラは何とも言い難いうめき声を口にしながら朦朧としている。


「うおぉっ!?」


 急に予想外の敵が近くに現れたせいでディーンは大いに慌ててしまう。

 とは言え相手はあまりにも隙だらけだ。

 彼はすぐに気を取り直してモグラの頭部に矢を撃ち込んだ。


 危険には繋がらなかったが、ディーンは自身に気のゆるみがあったことを反省した。

 そもそも大モグラ達の地中からの強襲攻撃がパーティー半壊という危機の始まりだったのだ。

 頭からその記憶が抜けていたことは冒険者として甘いと言わざるを得ないだろう。

 彼は今後の糧とするためにもこのことをしかと胸に刻み込むのだった。




 ----




「どっっせい!」


 リジェッタの両手槌のブン回しが決まった。

 最後の大モグラは激しく吹き飛び、ピクリとも動かず完全にダウンしている。


 それで戦闘は終了となった。

 一時は死をも覚悟したディーンとリジェッタは肩で息をしてからゆっくりとその場にへたり込んだ。


「はぁ、はぁ……リジィ、大丈夫か?」


「問題無いよ、ちゃんと生き残ったから」


 怪我はいくつもあるが、それでも互いの生存を確認する二人。

 しかし彼らはまだやらなければならないことがあるのを思い出す。


「っと、いけねぇ、ライオネルとレイシャの治療が先だ」


 咄嗟にだったが倒れた仲間達には回復ポーションを振り掛けていたこともあり、致命傷にはなっていなかったはずと思っていたが、それでも確信は持てない。

 ディーンは立ち上がり倒れている二人の元へと向かった。

 彼が仲間の男性の方へ寄ると、リジェッタはもう一方の女性の方に近付く。

 そして二人は脈を取ったり口元に手をやって呼吸の有無を確かめたりと、仲間のバイタルチェックを行う。


「よかった。兄ちゃん、生きてるよ」


「ああ、こっちもだ」


 ディーンは新たに回復と覚醒の二種類のポーションを取り出そうと己の懐をまさぐった。

 痛い出費ではあれども背に腹は代えられない。

 この後さらに金が飛んでいく予定なので本当は泣きたいぐらいなのだが。


「すまないな。謝礼の相談はもう少し待っててくれないか」


「ああ、構わない。仲間の治療を優先してくれ。俺は周辺警戒に当たる」


「ありがとうよ」


 命の危機を救ったのだ。

 強欲な冒険者なら無理難題を言い出してもおかしくはなかった。

 しかしアグゼはこちらを気遣い、さらには事後のケアまで行うと申し出てくれた。

 知り合いではあれど、アグゼとディーンの関係はそこまで深いものではない。

 ディーンは命の恩人に今はただ感謝するしかなかった。

 

「リジィ、まずはレイシャの回復だ」


「了解。えっと、外傷は大きくはないから……」


 どうやらレイシャという女冒険者はパーティーの回復要員だったようだ。

 彼女が立ち直ればパーティー全体が持ち直せる、そうした判断をディーンは下したようである。


 アグゼはフェイスガードを上げて視界を確保してから、戦闘前に放り出した素材袋を回収していた。

 宣言通りに警戒は続けているが、敵対する存在は特には感じられない。

 ラグロを見ても今は落ち着いた様子を見せている。

 一応の安全は確保できているかな、と彼は感じていた。


「アグゼ、もう大丈夫だ。ちょっと来てくれるか」


 そうしてしばし哨戒に従事してもうそろそろかと彼が思い始めた頃、背後から声を掛けられた。

 振り返ると倒れていた二人も起き上がり、周囲の状況を確認をしている。

 大きな不幸にはならなかったことを一安心した彼はディーン達の方へと向かう。


「いやー助かったぜ。おかげでこうして全員無事だ」


「うんうん。もうダメかと思っちゃったよ!」


 先程までの戦闘を思い出して各々感想を口にする。

 そして意識がなく見聞きはしていないものの、仲間の言うことや周囲のモンスターの残骸から事態を把握した男女も口を開く。


「えっと、お世話になったようで……。僕はライオネル・ウィッツワーク、パラディンです。深く感謝します」


「メディックのレイシャです。本当にありがとうございました」


「アグゼだ、ソードマンをやっている。こっちは相棒のラグロ。誰一人欠けることなく済んで良かったよ」


 二人はアグゼよりも若く経験も浅そうに感じられた。

 まだ未熟な後輩たちを助けることができ、アグゼの顔には安堵の表情が浮かぶ。

 ラグロがワウッと己の存在をアピールすると、ライオネルとレイシャも笑顔で応えた。


「あ、自己紹介忘れてた。ボクはリジェッタ、ウォリアーだよ。加勢してくれて本っ当に助かったよ、ありがとね!」


 ともに前衛を張ったはいいが、色々あってまだ名乗っていなかったことに二人を見て思い至ったハンマー少女が名前と礼を口にする。

 その快活な喋りにアグゼは頷いて返しながら、やや神妙な顔で一同に問い質す。


「さすがにもう退却するとは思うが、どうするつもりだ?」


「もちろん帰るよ。傷の手当てはしたけど体力も魔力も消耗し過ぎた。せっかく拾った命を捨ててたまるかよ。みんなもいいよな?」


 このパーティーのリーダーはディーンのようだ。

 今からどうするかをハッキリ言い切ると、それに対しての同意を周囲に求めた。

 他のメンバーも今回の事態には肝を冷やしたのだろう。

 リーダーの言い分に一切口を出さずに同意する。


「なら転移陣まで俺も同行しよう。こっちももう戻るつもりだったんだ」


「帰りの護衛もやってくれるってのか? というか、そもそもまだ手助け分の謝礼もしてないんだが」


「えっ、ディーンさん、この人と報酬の話をせずにここまで事を進めたんですか?」


 レイシャは困惑げに問いかける。

 完全に助けられた側である手前、文句を出せる立場ではなかったが、眼前の男は全く見知らぬ人であるが故に何を要求されるのか予測が出来ず、言葉からは不安がにじみ出ていた


 それに対して、アグゼはその不安を打ち消すように言葉を被せる。


「頂くものはもう考えてある。そこらに転がってるモグラ共の大爪、それらを全部譲ってもらうというのでどうだ?」


「ん? それだけでいいのか?」


 大モグラの素材の中でもっとも価値がある物が大爪だ。

 とはいえ所詮は低階層のモンスター素材であり希少性は無く、取り立てて惜しむほどのものではなかった。


 この提案には、懐事情が厳しそうな初級パーティーの「ない袖は振れない」可能性を考慮したアグゼの割り切りが含まれていた。

 彼はお互いが滅入るような報酬交渉は望まず、目の前に確実に存在するものだけを要求することにしたのだ。


 無茶な要求は一切なく、むしろ命の恩に対する対価としては安いぐらいだ。

 ディーンが他の面々を見ると彼らも頷いていた。

 決まりである。


「OK、商談成立だ。それじゃちょっと待っててくれ、パパっと回収しちまうからさ」


 アグゼの言外の気遣いを何となく感じた面々は嫌な顔をすることなく素材の回収に動いた。

 そしてライオネルが取り出した小袋にそれらがまとめられていき、全てが入れられた後に口が紐で縛られると、その袋がアグゼに手渡される。


「アグゼさんはすごいですね。こうして人を助けて、それでいて大きな見返りを求めるわけでもなくて……。僕はパラディンで、誰よりも最後まで立ち続けないといけない存在なのに……」


 袋を渡しながらライオネルは何とも言えない表情で自虐を口にする。

 嫌味のように聞こえなくもないが、失敗した者が成功した者を前にしてつい言ってしまったことなのだろう。

 しかしアグゼは気にする素振りも見せず彼をフォローする。


「迷宮において生き残ったということは勝ち残ったということだ。大丈夫、挽回できるさ」


「っはい! 頑張ります!」


 言うつもりのなかった愚痴への真っ直ぐなエールを受け、これ以上腐るわけにはいかないとライオネルはしっかりとした返事をした。


「これ以上の長居は無用だな。俺とラグロが先行する。皆、ついてきてくれ」


 そう告げたアグゼを見て、一同は武具などの持ち物チェックをする。

 そして歩き出した男に置いていかれないように、もう奇襲は絶対食らうものかと周囲に気を張り巡らせながら速足で追随するのであった。







 アグゼはラグロと共に集団の先頭を警戒しつつ歩いていた。


(あぁ、良いな。実に……良い。今日の晩飯は美味くなりそうだ)


 一見真面目だが実はこの男、現在やや悦に入った注意散漫な状態であった。

 背後から感じられる感謝や尊敬の念は彼の心を震わせ、闘争の後だというのに彼の足取りをかなり軽いものへと変えてしまっている。


(っと、ダメだな。こうした時こそ気を引き締めねば)


 自身の危うい状態を認識し、すぐに意識を切り替える。

 帰るまでが冒険だ、彼はそうつぶやいた。


 迷宮オオカミを相棒に迷宮で活動するソードマン、アグゼ。

 彼は和を乱すことを良しとしないなど一般的な社会通念に精通しており、「義」や「愛」も理解しそれを尊び、人の為にというお題目で動くことができる好漢だった。

 しかしそれはそれとして、己の能力にそれなりの自負を持ち、時には見栄を張り、口には出さないが人に褒められ称えられることで承認欲求を満たそうとし、また一方的な損は負いたくないという俗な考えなども併せ持つ男だった。


 彼を表するならこう言うべきであろうか。

 ――とても人間らしい人間である、と。



世界観やキャラクターのイメージ元は某携帯機の高難度3D迷宮RPG。


アグゼ:赤ソド男

ラグロ:ペットの狼


ディーン:緑レン男

リジェッタ:赤ソド子

ライオネル:ショタパラ

レイシャ:メディ子


主人公以外も前衛は理由がない限りはしっかり兜を装備してたりと、ビジュアル重視より泥臭いイメージ。戦闘時は歯を食いしばるのが基本だと思っているので気合の叫び声などはあまり出さない方向性で行きたい(全てがそうというわけではないが)。


※読み辛かったので行間などをいくつか修正

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