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いつもに増して日常回
気づけばこの島に来てから1週間である。太陽が周った日を一日と数えるならばだが。というか、いま見えている明るい物体は太陽に似た何かなのかもしれない。
「ぼけーっとしてますけどなに考えてるのですか?」
「悩み事があるなら相談してくれよ」
「いや、もう1週間経ったんだなと思って」
ちなみに今3人が飲んでいるのは、土魔法で作ったお茶の葉を風魔法で乾燥させ、火の魔法と水の魔法で作ったお湯を入れて作ったお茶だ。ソニアの魔法の全てを使った集大成のような飲み物である。
「それにこんな生活じゃ悩み事なんてないだろ」
この1週間、生活に必要な物を揃えていたら、俺の『クラフト』とソニアの魔法であっという間に設備が整ってしまった。今や朝は優雅にモーニングティータイムだ。
「確かにそうだな」
「快適になりましたね」
今いるこの家も3日前ほどに小屋から一新したのだ。ここはみんなの集まるリビングである。
「こうやってゆっくり過ごすのもいいよなあ」
なんだかんだアレを作るぞ、コレを作るぞで忙しかった気がする。
神様も7日目で休んだんだ。俺たちは3日に1回くらい休んでいいだろう。
「じゃあ今日はダラダラ日ですね」
「うんそれがいい」
ということでダラダラすることになった。
「コウセイ、お前の教えてくれたオセロといやつをやるぞ。今日こそ勝ってやる!」
昨日暇だったのでオセロを作って遊んだのだがどうやらキリアは負けたのが悔しかったらしい。『クラフト』は自由に色を変えることができるので、この手のボードゲームを作るのは非常に簡単なのだ。
「お、なんか自信ありげじゃん」
「このゲームの必勝法に気がついたのだ」
おお、すごい。オセロはAIが最善手を打ち続けて引き分けだったはず。本当だったら革命だ。
俺たちは交互にパチパチと打ち続ける。キリアが隅を取った。
「いいことを教えてやろう、このゲーム角を取った方が勝つのだ!」
お、そこに気がつくのは筋がいい。隅はひっくり返されないから強いのだ。だがそれだけでは勝てないことを教える必要がある。
「くそっ、なぜだ! 4隅全部取ったのに!」
「なぜ負けたのか明日までに考えておくんだな」
俺は有名なセリフを吐いた。言って気がついたがこのセリフ気分がすこぶる良い。
「お湯沸かしときましたよ」
「助かるよ、いつもありがとう」
なんとこの家、風呂もあるのである。しかもお湯は無限なので大きな風呂を作った。なんと温泉気分を味わえるのだ。
「なあ、ソニア。このお湯に薬効とかつけられないのか? 体力とスタミナ+50にしたいんだけど」
「なにバカなこと言っているのですか」
「せめて、腰痛改善だけでもお願いします!」
子供のころ腰が痛いと言っていた大人の気持ちがわからなかったが、今になってよくわかる。腰はヤバイ。薬効のある温泉は今後の目標にしよう。
ーーー
「ソニア様お加減はいかがですか」
ソニア様の背中はいつ見ても美しい。この生活になってからソニア様のお世話をさせて頂くことが少なくなって少し寂しく感じている。
「ちょうどいいわ。ありがとう、いつもいいって言ってるのに」
「いえこのくらいしないと私が気が済まないのです」
ソニア様は私に対等に接して欲しいようだ。しかし、私にそんなことはできない。なぜならソニア様は私の命の恩人だからだ。
「改めて考えるとこのお湯もソニア様の魔法なんですね」
あの強大な魔法をこんな風に使うなんて私には考えもしなかった。
「コウセイさんはただの兵器である私に居場所をくれたんです。ここに居ていいって言ってくれたんです」
コウセイはソニア様のずっとそばにいた私にもできなかったことをいとも簡単にしてしまった。そこに関しては少し嫉妬してしまう。
「昔だってソニア様に救われた者もいるということだけは忘れないでください」
ソニア様が過去を否定すると、昔ソニア様に救われた私も否定されたように感じてしまうのだ。
「そうね、私もキリアがいたからここまで生きてこれたのかもしれないわ」
ーーー
ソニアとキリアが風呂から出て来たので俺も風呂に入ることにした。レディーファーストなんてつもりではないが、ソニアがお湯を沸かしているので先に入るのはためらわれるのだ。
俺はさっと体を洗う。ちなみに俺が最初に洗う部位は頭だ。頭を流した石鹸が洗った後の体にかかるのが嫌だからである。なに? お前のは聞いてないって? 残念だったな。ラッキースケベでも期待してろ。
「はあああああああ、いい湯じゃああああ」
湯船でゆっくりしていると、フルートの調べが聞こえてくる。3日前ほどにソニアにあげたのだ。『クラフト』は精巧に作ることができるので楽器を作るのと相性が良かった。
ピーーー、ピィィィィィィ‼︎
……下手だな。まだ練習始めて3日だからうまい方だが。音が出ないからといって、雑に息を入れるとあんな音が出るんだよな。
「いつかみんなで演奏とかできたらいいな」
「ウチも入れてくれるのか?」
隣の少女が話しかけてきたので返事をした。
「ああ、もちろん」
ていうか誰っ⁉︎
ゲームは妨害するのが好きで、結局妨害のし過ぎで負けてしまう、悪役令嬢のようなタイプです。
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