三度の飯が一番好き
「おーい、できたから置いとくぞ」
ソニアが漂流してきて、いろいろあったがとりあえず服を作ってあげることにしたのだ。
「見ないでくださいよ」
「見ないって」
あれだけ見られてもまだ恥ずかしいものらしい。と思っていたらソニアはすぐに出てきた。女の人の着替えは遅いと評判だが、ソニアは早いようだ。もしかしたら着る服の種類が1種類だけだからかもしれないが。
「ありがとうございます、こんな物まで作ってもらって。それにしてもどうやって作ったでのすか?」
話してもいいのだろうかと一瞬迷ったが、少なくともしばらく一緒に生活するのに隠すのは無理があるし、話しても大丈夫だろうと考えた。
「実は俺なんでも物を加工できるんだ」
ソニアが頭にハテナマークを浮かべている。もっともな反応だ。こちらとしても説明するのが難しい。
「見てもらうのが早いかな」
そう言って俺は先ほど服を作った時のあまりの茎に手を当てる。
「クラフト!」
そして茎が変化してスカートになった。さっきは動きやすいようにズボンを作ったのでちょうどいいと思ったのだ。
「すごい魔法ですね!」
「魔法?」
「あ……こ、この世界にはコウセイさんのように魔法を使える方が何人かいるみたいです」
「へえ、そうなんだ」
ファンタジーて感じだな。ここにいると実感がわかないが外に世界があるんだよな。ソニアの生まれた国はどんな国なのだろうか?
「ソニア、今はまだ難しいけど、いつかソニアの国に帰れるようにしてあげるからな」
俺の言葉を聞いたソニアは少し不満げな顔をした。
「そんなに私のこと邪魔ですか?」
何か気に障ったか? と思って全力で否定した。
「い、いや、違う違う。そうじゃないよ。選択肢としての話」
帰れないよりは帰ることもできるの方がきっといいだろう。少なくとも俺はそう思っている。
「ふふっ、冗談です。優しいんですね」
なんかすでに手玉に取られている。まあいっか、そんなことよりも……
「腹減ったな」
「そうですね」
ソニアの件でうやむやになっていたが、ひと段落したので体が空腹を思い出している。
「ちょっと待ってて」
俺は近くの木を集めてきた。
「クラフト!」
完成した謎の物体を見てソニアが聞いてきた。
「なんですかこれは?」
「なんて説明すればいいんだろう。これを海の中に入れとけば魚が入ってくるかもしれない物」
ペットボトルを切って逆向きに差し込むあれだ。一度魚が入ると戻れなくなるやつ。難点といえば透明ではないことか。
それから俺たちは島の内部に行き、食べられそうな木の実を取ってきて、また海岸に戻ってきた。
「さて入っているかな」
ひっくり返してみると中くらいのサイズが一匹、小さいのが三匹いた。
「お、大漁だな」
「ほんとに取れるのですね」
「俺もこんなに取れるとは思っていなかったよ」
さて、この魚を焼かなければいけないのだが、ここで火起こしという難題が立ちはだかるのである。
「火起こしかー」
火起こしと言えば弓形の摩擦で火を発生させる装置が有名だが、昔1時間かけても火がつかなかった記憶がある。あまりやりたくない。他に何かいい方法が無いだろうか?
「火、ですか……」
記憶を探ってみる。
「私……」
「あ!」
俺が叫んだせいでソニアがびっくりしている。ソニアが何か言いかけていた気がするが話はしなかった。
「いきなり叫んでどうかしたんですか?」
あれがいいかも。普通なら難しいが俺のスキル『クラフト』を使えば上手く行くかもしれない。
「クラフト!」
完成したのは筒状の物だ。そして上にはピストンがついている。
「これは?」
「まあ、見てなって」
俺は燃えそうな草を中に入れてピストンを勢いよく押した。すると、中の草に火がついたのだ。
「お、成功した」
「え、これどんな仕組みなんですか?」
「うーん、簡単に言うと空気を圧縮して熱くするんだ」
「分かりません」
まあ、そうだよな。まだ空気という概念が無さそうだもんな。
それから俺たちは焼いた魚と木の実を食べた。ご飯にありついたということに生まれて初めて感動した。
「なんか楽しいですね」
「そうだな」
島に流れ着いたその日に楽しいと言えるのは見習いたい。
突如始まった島での生活。長かった一日も終わりが近づき日が落ちてきた。夜は危なそうだからな。今日中にやれることがやれてよかった。明日は何をしようか。とりあえず生活を安定させたい。
魚を捕るトラップの名前は『俺のことはいいから先に行け』にしようと思います。
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