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生活の基本は衣、住、エルフ

「服を作るぞ〜!」


別に誰も返事はしない。誰もいないと寂しいから声を出してしまうのは一人暮らしをしていた時から変わらない。


「服の材料は綿か、ちょっと探してみるか」


俺は少し島の中に入って探してみる。しかし目標の物は見つからなかった。


「うーん、綿は無いかな。雑草はたくさん生えているのだけど」


ん、待てよ、そう言えば雑草から糸を作れるって聞いたことがあるな。よく考えると植物の茎ってしなやかで切れないし、服に向いているかも知れない。


「少し茎を集めてみるか」


俺は先ほど作ったバツグンの切れ味を誇るナイフ『なんでも切れるよ君』(さっき名付けた)を使ってその辺に生えている茎を集めた。


「よし、作ってみよう」


俺は完成形の服をイメージする。そして目の前の茎が服に変わっていった。


「できた! 意外と出来がいいぞ!」


しっかりと服になっていてよかった。茶色の服でいかにも質素という感じの服だ。


「さっそく着てみよう」


俺が服に袖を通すと、サイズが足りずへそがでた。無駄にセクシーな衣装になってしまった。


「というか短い上着だけ着て下は何も履いてないとか完全に不審者なんだよな」


おそらく少し茎が足りなかったか。俺はもう少し茎を集めてズボンを作ってみた。


「そうだ、色を変えてみよう」


出来るかどうか分からないが上着の時は緑色の茎から茶色の服ができた。試してみる価値はある。黒色のズボンを想像すると、しっかりと黒色のズボンができた。


「しかしこのスキルどういう仕組みなんだ?」


色だって黒だったら墨汁とか染色するための物が必要なのだが、その辺はどうなっているのだろう。


「まあ、便利だしいいか」


もともと好きに加工できるだけでおかしい。あまり深く考えないことにした。


いろいろ試していくうちに、このスキルの仕様がだんだんと分かってきた。このスキルは原材料さえあればイメージした物を自由に作れること。また色は自由に変えられること。俺はこのスキルを『クラフト』と名付けた。


「後は、サンダルだな」


足もとは本当に危ない。今は怪我をしたら治す方法が無いから特に危険だ。


「よし、できた」


俺は草履のような物をイメージして作った。しっかりと足にフィットして快適だ。これで身の回りの安全は担保された。残りは家だ。


「いつかは大きな家を作りたいけど、とりあえずは寝られればいいかな」


「しかし、材料を集めるのは大変だな。どうしたものか」


このスキル『クラフト』を使うためには原材料を集めなければいけない。しかし、小屋でいいとしてもかなりの木材が必要になる。


俺は倒木からナイフの時のように斧『ゼッタイ倒せるぜ君』を作った。


大きい木は倒れたら怖いので、小さなめな木を切ってみた。斧は重くて扱いづらいイメージがあったが、これは木で出来ているので扱いやすい。


「クラフト!」


俺は切った木をその場で加工し、持ち運びやすいようにブロック状にした。それから俺は建築予定地の周りの木をどんどん倒していった。


「しかし、ブロック状にしてもいちいち往復するのがめんどくさいな」


一気に運びたいな。ああ、そうだ。あれを作ろう。


「クラフト!」


俺が作ったのは台車『ハコビヤ君』だ。山道でもある程度動かせるようにマウンテンバイクのようなデコボコしたタイヤにした。これで一度にまとめて運べるだろう。


「ふう、できたぞ」


多くの苦労を経てようやく小屋ができた。まあ、一日で小屋を作れるのを苦労と言って良いか分からないが。さっそく小屋の中に入ってみる。


「内装は無いそうだ」


ごめんって。そんな怒らないで。言ってみたかったんだもん。気を取り直して必要な物を考える。


「布団は欲しいな」


いまは暖かいが夜になって急に寒くなったら死活問題だ。


「クラフト!」


布団はこだわらなければ、服と同じ要領で作れるのですぐに作れた。他にはと考えているうちにグゥゥゥゥと音がした。何事かと思ったら自分のお腹だった。


「そういえば今日何も食べていないな」


腹が減ったら海辺の岩の裏を見ろという言葉を思い出した。そこに魚がいるかもしれない。


「海岸に戻るか」


海岸の方を見てみると人が倒れていることに気がついた。急いで近づいてよく見てみると息をしていない。


「あー完全に水を飲んでしまっているな」


まだ生きているみたいだから俺は水を吐かせた。俺が高校生の時に受けた人命救助のレッスンによると、この後は人工呼吸をするべきなのだが、なにせこの俺、25歳にしてキスすらしたことがない完全童貞パーフェクトチェリーボーイなのである。


「いや命にはかえられないな」


迷っている暇はない。意を決して顔を近づける。顔を見てみて気がついたが、日本人の顔じゃない、耳が長くて、ああそうエルフだ。異世界に転生したのだからエルフがいてもおかしくはない。


気を取り直して顔を近づけると目の前のエルフが目を覚まし俺と至近距離で目が合った。彼女は現状を認識したようだ。生き返ってくれて本当によかった。そして俺を突き飛ばした。


「この変態!」


なぜそうなる!?


「寝込みを襲うなんて最低よ! このエッチ! 変態!」


エルフは激怒した。それでも俺はこの残酷な事実を伝えなければならぬ。


「というか君服着てないけど大丈夫?」


エルフは、ひどく赤面した。


「早く服返してください! こんなこと許されませんよ!」


両手で体を隠しているがもちろん隠しきれるわけがない。


「というか君、全裸で流れてきたんだよ」


「へ?」


ぽかんとした顔をしたエルフを前にして俺は事の顛末を説明した。


~3分後~


「本当にすみませんでしたああああああああああ」


エルフは絵に描いたような完璧なな土下座を見せた。しかも全裸で。無人島じゃなかったら事案である。


「気にしなくていいって」


「私は命の恩人になんてことをおおおおおおおお」


うるさいので無視して話を進める。


「俺はコウセイ。君は?」


前までのテンションとは変わって真面目な態度に戻った。


「私はソニアです」


「そうかよろしく、ソニア」


こうして無人島の住民が二人になった。そろそろ無人島とは呼べなくなってきたが気にしないことにした。

作った道具の名前は覚えなくてもいいです


ここまでお読み頂きありがとうございました。

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続きを読みたかったらブックマークをよろしくお願いします。

また、皆様のコメントによる感情エネルギーが私の活力になります。なお私の複製はございませんのでタイムリープしても撃たないでください。

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