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族長の試練

誤字報告ありがとうございます!自分で気が付かないところが多いので助かります!

「ユウ!出てくるテラ!」


轟音が響いた。


「なんか用があるテラ?」


「お前に族長決定戦に出てもらうテラ、コウセイ殿についてもらうことにしたテラ」


「……分かったテラ」


ユウは浮かない顔を浮かべた。


「では我が息子よ、族長の息子に恥じぬ戦いを期待しているテラ」


そう言って族長は去っていった。


「はあ…」


ユウが珍しくため息をついた


「嫌なのか?」


「親が変だとお互い苦労するナノだ」


いつからいたのかセツが話に入ってきた。


「セツの親が変なのは認めるが、セツが言うのは違うからな」


「別に族長になりたいわけじゃないテラ」


なるほど、実にシンプルな話だった。ユウは族長になりたいわけじゃないが、皆から族長の息子として期待されているというわけだ。


「嫌なら出なければいいんじゃないか?」


俺は率直な疑問を口にした。


「…いないテラ」


ユウがぼそっと何かを言ったがよく聞こえなかったので聞き返した。


「ん?」


「誰も他にやってくれるドラゴンがいないテラ!!」


爆音が響いた。


なるほど、ユウは族長をやりたくない、しかし他のドラゴンも族長はやりたくない。すると族長の息子であるユウに期待がいく、とうい訳だ。


「案外ドラゴンって草食なんだな。族長とかってみんなやりたがるものかと思ってたよ」


「草食?ドラゴンは草は食べないテラよ」


「いや積極性がないな、って意味だ…たぶん」


「草を食べるのは積極性がないテラ?コウセイは変な言葉を使うテラね」


ユウは不思議そうにしていた。


「まあ、そんなことはいいテラ、早く試練の準備をするテラ」


「どんな準備が必要ナノだ?」


「まず指定された物を洞窟から持ってくるテラ」


おお!洞窟から神器とかをとってくるのだろうか。わくわくしてきたぞ。



「ここが入り口テラ」


俺たちは少し山を下った先にある洞窟の入り口に来ていた。


「暗いナノだ」


「ちょっと待っていてくれ」


俺は辺りから乾燥した太めの木と小さな枝を探して拾った。


『クラフト!』


太めの木の枝は持ちやすい松明に変わった。


「何度見てもすごいナノだ!」


そして俺のカバンから火起こし器を取り出す。ピストンで空気を圧縮して火を作る装置だ。便利なので何個か作って常備してある。


「よしこれで視野が確保できるだろう」


「それ便利テラね!欲しいテラ!」


「ユウは火とか吐けないのか?」


「何を言ってるテラ?出来ないに決まってるテラ。今日のコウセイちょっと変なことばかり言うテラ」


腕は生やせても火は吐けないのか基準がよく分からないな


「コウセイがおかしいのは今日だけじゃないナノだ」


「おい、どさくさに紛れて変なことを言うな」


「いい意味ナノだ」


それ知ってる、悪い意味ってやつだろ。


「もう進むテラよ、明るいうちに帰りたいテラ」


しびれを切らしたユウが先に進んでいったので俺たちも後に続いた。


「なあユウ、この先モンスターとかいるのか?」


試練というくらいだから謎解きとか強敵がいるのだろう。


「スライムに気をつけるテラね、ちょうどいたテラ」


前をみると緑色のスライムが動いていた。割とゆっくりだがこちらに近づいてくる。


「刺激すると面倒テラ、先に進むテラ」


「本当に大丈夫ナノか?こっちに来ないナノか?」


セツが嫌な顔で聞いていた。どうやらスライムの形状が苦手らしい。


「スライムは火を恐れるテラ、これ以上近づいてくることはないテラ」


ユウの言った通りこれ以上近づいてくることはなかった。向こうもこちらが危険かどうか判断していたのかもしれない。俺らが敵意のないことに気が付いたのか別の方向に帰っていった。


「コウセイは戦えるナノか?」


「いやまったく戦えないぞ」


運動は出来なくもないくらいのいたって普通の日本人だ。たとえ運動が得意でも戦いとなれば話は違うだろう。『君子危うきには近寄らず』である。


「まあ『クラフト』があるからそれを応用すれば少しは戦えるかもしれないな」


「少しは戦えた方がいいテラね、コウセイは目立つテラ。その力を狙う者も増えてくるテラ」


確かに自分と周りくらいは守れるようになっておいた方がいいかもな


「考えおくよ、ありがとうユウ、セツ」


「礼は必要ないテラ、練習ならいくらでも付き合うテラ。っとそろそろ目的地に着くテラ」


前を見ると少し明るい所があった。光源を探してみると、青白い光を発する鉱物があった。その光が洞窟の水溜まり(というか大きすぎて湖に見える)に反射して幻想的な空間を作っていた。


「ガリっ、ガリっ、うん久しぶりに食べたテラ!やっぱり青光石はウマいテラ!!」


俺は目を疑った。目の前の鉱物(青光石というらしい)をユウが食べていたのだ。


「知らなかったナノか?デカドラゴン族は鉱物が大好物ナノだ」


まあ自分たちの体を食べる連中だ。今更驚くことでもないか。


「それで目的の物はどこにあるんだ?」


辺りを見回しても魔剣やら聖剣やらそれらしき物はない。やはりどこかに隠されているのだろうか。


「これテラね」


ユウは湖を指した。


「まさか下に何かあるのか?」


「ん?何を言ってるテラ?まったくコウセイは変な奴テラ。この水に決まってるテラ」


どうやら湖の下に遺跡があるわけでもなく、持って帰るものはこの湖の水らしい


「そんなんでいいのか?普通の水に見えるけど?」


何か特殊な水なのだろうか。


「普通の水テラよ、ドラゴンも喉渇くテラ。あとはこの青光石テラね、これもみんな好きテラ」


「ちょっと待ってくれ!これは何に使うんだ?」


「何って面白いこと聞くテラね、食べたり飲んだりするに決まってるテラ」


嫌な予感してたけども…族長の試練って…


「パシリじゃねえか!」


俺の全力の声が洞窟に少しだけ響いた。

ここまでお読みいただきありがとうございます!

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