無人島転生
初投稿です
ふと顔を上げて時計を見るとすでに夜10時を回っていた。
「最近夜まで実験ざんまいだな」
大学生の一人暮らしといえ夜遅くなるのはしんどい。浪人し、大学院に進学し、気づけばもう25歳だ。30代以上の人には怒られるかもしれないが、大分衰えた気がする。10代の体力が懐かしい。
その時だった。近くで爆発音が聞こえたと思ったら、俺はもう炎に包まれていた。
ああ、俺の人生爆破オチか。何を間違えたのだろう? ガスが充満していたのか? 特に原因は分からないまま気を失った。
目を開けると一人の女性がいた。コスプレをしているようだが、俺の知らないキャラだった。
「残念ながらあなたは死んでしまいました。……」
その後いろいろな説明があった。話を聞いたところコスプレじゃなくて女神らしい。最初は詐欺を疑ったが、俺も研究室の爆破のことは覚えている。あれで生きているとは考えづらい。
それから俺をどこか別の世界へ転生させてくれるらしい。異世界転生の作品を読んだことがあったので理解はしやすかった。現実に起こるものとは思っていなかったけど。
「転生先はあなたの送ってきた人生で決まります。えーと……すみません、あなたは生きている間のほとんどが御ぼっちでありましたので転生先は無人島にさせていただきました」
無人島⁉︎ ていうか御ぼっちってなんだよ、気を使ってんじゃない。俺は好きでぼっちだったんだ。まあでも無人島で誰とも関わらずスローライフを送るってのもいいな。第二の人生はゆっくり過ごそう。もうよなよな研究室にこもる生活をしなくていいのだから。
「どうやら甘い事を考えているようですが、何も知識が無ければ3日生きることができたら良い方でしょう」
ええー、そうなんだ……スローライフって大変なんだな。
「それでは可哀想なので、あなたに一つスキルを授けます。ものを自由に加工できるスキルです。うまく使いなさい」
この言葉を最後に俺は意識を失った。
さざなみが聞こえる。青空が見える。ああ、なんだか心地良い。砂浜と体がちょうど一体化するような……
「って俺裸じゃん!」
転生する時って服も無くなるのか。でもここは無人島だ。だから裸でも何にも問題はない。
「ヤッホー、今の俺は何をしてもいいんだぜ!」
俺は砂浜を全裸で駆け回る。無人島って楽しいな!
「痛っ!」
何かと思ったら石の破片を踏んだようだ。大事に至らなくてよかった。ここで怪我をしたらシャレにならない。どうやら無人島の裸は社会的には問題なくても自然界では危険なようだ。
「服を一式と、水、食料、あと、家も欲しいな。今日はこれを目標にしよう!」
そういえば何かスキルを覚えたのだっけ。物を加工するスキル。とりあえず試してみるか。俺は目の前に落ちている木に手をかける。完成形を想像してみる。すると目の前の木がなんと長い木の棒に変化した。
「おおっ! できたぞ」
俺は完成した木の棒を手にする。これがあれば高いところにある木の実なども手に入れられるかも知れない。
「まずは水を確保しておきたいな」
人間は1ヶ月食べなくても生きていけるが3日飲まないだけで死んでしまうと聞いたことがある。俺は辺りを見回した。するとヤシの木があった。ヤシの実は水分がたくさん含まれていると聞いたことがある。高い位置にあるがちょうど作った棒がある。俺はヤシの木を突いてみた。するとヤシの実が落ちてきた。
「思っていたよりもうまくいったな」
俺は落ちてきたヤシの実を手にする。これどうやって食べるのだろう? ヤシの実って意外と硬いんだな。そうだ! ナイフを作ろう。俺はさっきと同じように木に手をあてる。そして鋭利なナイフを想像する。よし、できたぞ。
「さっそく使ってみよう」
俺はできたナイフでヤシの実を切ってみる。そしたらなんと豆腐を切るようにすんなりと切れた。木だからあまり期待していなかったが、鋭利な状態を想像すればしっかりと切れるみたいだ。俺は切ったヤシの実の中のジュースを飲む。
「うまい!」
一気に飲んだせいですぐに無くなってしまった。まあ、いつでも取れることが分かったし、誰もいないのだから焦る必要は無いだろう。しかしヤシの実以上に大きな収穫だったな。このナイフを見たところ職人が作ったような切れ味だ。つまり俺が想像したものは、かなり精巧に作られるということだ。
「これは思ったよりも使えるかもしれないな」
このスキルをうまく使えば無人島生活も快適に過ごせるかもしれない。
待ってろ、俺のスローライフ!
次回漂流者現る!!
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愛と勇気は友達になってくれませんでしたが。