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第一話 始まりは下着泥棒の懺悔だった。

俺の名前はシルバ。

ミリア教の聖職者をしている。

階級的な所の話を言うと、司教というものだ。


ミリア教の序列は上から順に、教皇、枢機卿、大司教、司教、司祭、助祭となっている。

つまり俺は下から3番目の中間的な立場にいるということだ。


とはいえ、これはそこまで重要な話ではない。

ここで俺がいいたいのは…そうだな。

まずは、あの日のことから話そう。

その日に全てが始まってしまったのだから。


全ては下着泥棒の懺悔から始まったんだ。


☆☆☆☆☆


「はぁー、今日も疲れたな。何だってガキはあんなに元気がいいんだよ…」

俺は教会の中、それも決して子供達が入って来れないようにしてある特別な部屋に逃げ込むとそう呟いた。

窓から外を見下ろすと外ではまだ子供達が遊び回っていた。


ここの教会では、人々に教えを説く以外にも孤児を引き取り育てるという役割を持っている。

そのため、子供達と遊ばなければならなかったのだがいかんせん体力が違い過ぎる為、途中で疲れ果てしまいこの部屋に逃げ出したというわけだ


と、そこへドアをノックする音が聞こえてきた。

「はい、どうぞー」

「院長、失礼します。」

入ってきたのは、黒い髪をした少女だった。

彼女の名前はクレハ。長い黒髪が特徴で、その透き通るように白い肌と髪の艶を他の修道女か羨ましがられているの聞いた事がある。


「おう、どうしたんだ?」

「えっと…その、あの…今月の収支報告書です。」

若干、内気な性格をしているが計算能力などには光るものがあり、このような仕事を頼んでいる。

「おう。ありがとな。今疲れてるから、後で見とくわ。本当にいつも助かるよ」

「いえ、私なんて…。その、机に置いておきますね。」


そうしやってクレハは少し照れくさそうにしながら窓側の机に書類を置こうとした時だった。

ブン!と凄い音を立てて本が飛んできた。

「うわっ!!あぶねえ!?聖書で何しやがんだ。アマンダ!」

本が飛んできた方を見ると金髪の少女がいた。

彼女の名前はアマンダ。

フルネームは、アマンダ・ルーデンスで、ルーデンスとは家名だ。

貴族しか名乗ることの許されない家名を持つということは…まぁそういうことである。

彼女にも色んな事情があるのだろう。


「あんたまた、クレハに仕事を押し付けてたのね!!自分だけ子供達と遊んで!」

そう言って、アマンダは俺の方へとカツカツと靴の音を鳴らして近づいてくる。


「あの…、アマンダちゃん?これは私が好きでやってる事だから…」

クレハがすかさず、俺を庇おうとアマンダに訴えかける。

…最も、俺がやらせている節があるためアマンダの方が正しいのだが。

「ほ、ほら。クレハもこう言ってることだし…それに子供達と遊ぶのも立派な仕事だぞ…」

いかん。自分で言っていて説得力が全くなかった。言葉尻が小さくなっていた。


「もう!クレハもこいつの言うことなんて聞く必要ないのよ?院長って言ったって形だけなんだし。こんなやつ無視しても構わないでしょ。」

本人を目の前にしてこの言いようである。

…事実なので反論も出来ないが。

「そんなことないよ!院長は優しくて、頼りになる人だよ。私にも親切にしてくれて…」

と、そこまで言って恥ずかしくなったのかクレハは、かーっと顔を赤くして下を向いてしまった。

大きい声が出てしまったのが恥ずかしかったのだろう。

だがまぁ、お世辞とはいえそんな事を言ってくれると嬉しくなる。

…今度からクレハに仕事を押し付けるのはやめておこう。


「で、アマンダ。要件はそれだけか?」

俺は、聖書を拾いアマンダに渡しながら尋ねた。


「違うわよ。それより懺悔室に人が入ったからあんたを連れてこようとしてたのよ」

懺悔。それは罪を告白することである。

と入っても別に刑事罰的に罰することではなく己の罪悪感をさらけ出すというものだ。

そのため懺悔室では互いの顔が見えないようになっており、また聞く側には守秘義務が生じるのである。


「えー。あれ疲れんだよな。ちゃんとした返答してなきゃだし…アマンダやってくれよ。」

アマンダに仕事を代わりにやってくれと頼んでみる。

「少しは仕事しなさい」

しかし、一切反論を許さない態度で名も言い返せなかった。

…俺の立場って一体。


そして俺は(半ば追い出される形で)院長室をあとにするのだった。



☆☆☆☆☆


そっと狭い個室に入る。

この向かい側では、懺悔をしに来た人が待機をしているのだ。

ここまで来たならしょうがない。

さっさと仕事を終わらせて、お酒でも飲むことにしよう。


「それでは、あなたの罪をお聞かせください。神はその全てをお許しになられるでしょう。」

俺は、毅然とした態度でそう言った。


「俺は…俺は勇者なのに下着を盗みました!!」

この瞬間、俺はこれが長くなるだろう事を悟った。


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