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砕けよ、硝子

「な……」


 シンデレラはガラスの靴の片方を手にして悲しい顔で王子を見つめています。

 今は周囲に護衛も置いていないようでした。


「王子」

「シ、シンデレラ」


 突然の出現につい一歩あとずさってしまった王子。

 しかし気を取りなおし、そこで踏みとどまります。


「シンデレラ、我が姫よ。答えてくれ。君はそのガラスの靴をどうしたいんだ。いや、どうしようとも構わない。ガラスの靴よりも君の方が大事なんだ。ただ、教えてくれ。愛し合ったわたしたち二人、心から話し合えば必ず解決できるはずだ」


 ドレスの裾が吹いてきた風に流されてゆるゆるとなびきました。水色をした薄いドレスは、沈み顔のシンデレラの心を表しているのでしょうか。


「でも王子。我が王子。あなたの愛はどこにあるの。あなたが愛したあたしはどこにいるの」

「わたしの愛はあの思い出の夜から今にいたるまで、常に君と共にある」


 右手を差し出し、シンデレラの手を求めます。

 差し出された手に、おそるおそると手を伸ばすシンデレラ。

 しかし、そこで邪魔が入りました。


 金色の禍々しい影が木々の間を抜け、森の中を飛ぶように近づいてきます。


「ちょいと待ちなぁ! 油断しちゃいけねえ! 王子、そいつから離れな!」


 金色の触手にぶらさがった赤ずきんが叫びます。

 

「俺も助けにきたぜ王子!」

「まったく、髪が痛みますわ」

「お腹すいたニャ」


 赤ずきんにおっさん、偽シンデレラまで抱えて、ラプンツェルの姿はもはや黄金の柳とでもいいましょうか、いえ、もうちょっと邪悪なものにたとえるのがふさわしかろうと思いますが、そんな状態になっておりました。


「無粋な」


 シンデレラが片手を振ると、樹上から何か大きなものが降ってきます。

 それは巨大などんぐりでした。

 十個、二十個、三十個。

 大きめのクシティガルバ(お地蔵さん)石像ほどもあるどんぐりがドカドカ降ってきて、小さな城壁のようにシンデレラと王子の周囲を円形に覆ってしまいました。それで終わりかと思えばさらに落ちてきて、最後にはどんぐりのドームが出来上がります。


「なんだこりゃ……」

「控えよ。王子の御前であるぞ。控えよ平民」


 積みあがったどんぐりの向こうからシンデレラの叱責するようなくぐもった声が届きました。


「へへっ、なんだぁてめえ……」


 赤ずきんの口の端が凶暴に吊り上がります。あらためて「王族」だの「平民」などといわれると、赤ずきんの胸に眠れる反逆精神が燃え上がってしまうのです。マントの色がそうさせるのかもしれません。


「どんぐりの墓石はかいしたぁ用意がいいじゃねえか。よし、今日をてめえの命日にしてやる」

「おい紅いお嬢さんよ、命日もいいけど後ろから新手だぜ」


 どんぐり防壁と同時に近くにいた森の動物を変化させたのでしょう、蛮刀を手にした大柄な兵士が数名近づいてくるようです。

 

「くそっ魔女め、たまには自分で戦いやがれ!」

「でも雑魚から先に潰した方がいいですわね」


 早くもラプンツェルが手提げ袋から金髪の一房を取り出します。

 時をおかずに大柄な兵士たちが現れました。人のふた回りも大きいでしょうか。三名ばかりが対峙しました。

 何を依り代に作られたのか、目つきの悪い、山賊を思わせる兵士です。


「お前たち森の獣の誇りもないのか! なら、森の肥やしにしてやるよ。さあ死にたいやつから前に出な!」


 赤ずきんが一喝すると、さすが英雄ということでしょうか、大柄の兵士が雷に撃たれたように背筋を伸ばしてその場に立ちすくみます。やがて我を取り戻した兵士が今度はぎょっとなって赤ずきんを見つめました。


「あ、あねさん……!」

あかの姐さん!」

「……姐さん? え? あ、あっしはいったい何を」


 動揺した様子で赤ずきんの顔と抜刀した刀を交互に見ていました。


「知り合いですの?」

「いや、こんな小汚い知り合いはいないな」

「へえ、お嬢ちゃんに舎弟がいたとはな」

「お腹すいたニャ」


 三人の山賊は互いに顔を見合わせ、短く何か言葉を交わし、次いでくるりとこちらを向きました。


「魔が差したか、キツネにかつがれたか。このたびはやいばを向けちまって本当に申し訳ねぇ、紅の姐さん! あっしら三人はこの森に宿を借りるしがない狼でありんす。そのドデカイどんぐりの輪の中にいる姐さんに呼ばれてきたみたいなんですが……なにしろあっしら狼なんで人間さんの命令の細かいところはわからねぇんで。勘違いってことで、ここはひとつ許していただきてぇ」


 妙なことを言い出します。


「紅の姐さんなんて呼ばれたことはないけど……お前たち、よくこのへんで遠吠えしてるあの狼かい?」

「へえ、勝手ながらときどき館ののきを借りておりやす」

「あの恐ろしい大旦那を倒した紅の姐さんの話はあっしらの間でも伝説になってまして」

「つええかしらはあっしらの憧れでやす」


 むさくるしい中年山賊たちが、少年のように頬を染めて口々に赤ずきんを褒めそやします。


「こいつら口もきけるんですわね」


 ラプンツェルが感心しています。

 多少の知恵があるとネズミほどには操れないということでしょうか。なにしろ魔法のことですから詳しいことはわかりません。


「よし。それならお前たち、あたいに加勢しな」

「よくわかりやせんが、合点承知!」





 積みあがった巨大どんぐりドームの下で。

 

「シンデレラ。あなたのその憂いを晴らしたい。あなたの、陽の温もりの微笑みを取り戻したい。わたしは何をすればいい?」


 闇の中で繋いだ手を、シンデレラの冷えた片手を両手で包み、語り掛ける。


「だ、だめなの。あたしが変わらないとだめなの。でも、もうたぶん……戻れないの。あたしは王子が愛したあたしじゃない」

「いいかい、我が姫。変わらないものなどない。人間はいつだって変われるんだ。そう信じてさえいれば。さあ、やり直そう。怖いものだってない。二人で前をみて、進めばね」


 暗い暗いドームの下で、光といえば、シンデレラが持つガラスの靴が放つ燐光のような淡い光のみです。

 その光に浮かぶのは王子の暖かな手。繋がれた二人の手を見つめるシンデレラの瞳に涙があふれました。


「でも……でも……」


 繋がれていないもう片方には、ガラスの靴。冷たくて硬いその表面には、いまだ傷一つありません。


「もう……履けないわ。あたしには履けない。こんな穢れのないガラスの靴なんて」

「ふたりの愛し合う思いがあればもうガラスの靴など不要だ。わたしを信じてくれ」

「王子……」


 目と目が重なり、心と心もまた……


「でも」


 そう。でも、心に影が走ります。ガラスの靴に視線を移し、シンデレラの目に再び闇が戻ってきました。

 

「御義父様はどうでしょうか。それに御義母様も。他の貴族の方々も……このガラスの靴が無ければあたしはただの灰かぶり娘ですのに。ああ、ああ、だめです、やはりみんな繋いでおかないといけません」

「シンデレラ! そんなことはない! そんなことにはならない!」

「そうだ公爵様も早く捕まえなければ。逃げてしまった騎士団長も。司教様も。みんなみんな捕まえて手元に置いておかなければいけません。靴がなければガラスの靴がなければいつか必ずあたしを追い落とすんだわ」


 どごおおん。

 重量感溢れる音が響き渡り、真っ暗なドームの内側に光が差し込んできました。


「空きましたぜ、姐さん」

「いいからどんどんぶっ壊すんだよ!」


 天井部分のどんぐりが引っこ抜かれました。

 続いてどんどん、どんぐり防壁が崩されていきます。


「なんでしもべが破壊を……」

「へっなめちゃあいけませんや。あっしら大森林の狼を操ろうってんなら、まずかしらになってからやってもらわねえと」

「「おうよ!」」


 大威張りです。


「しもべ風情が邪魔だてするの……?」


 いまいましげに闖入者を見上げ、何かの術をなそうと振り上げた手を王子が留めます。


「もうやめよう、シンデレラ。君を追い落とすって? ならばわたしも同じように追い落とされよう。姫になるのが怖いなら、ならなくたっていい。ただ私の妻であってくれれば」

「な、何をおっしゃるの」

「そうだ、この森で毛皮の仲買人になってもいいな。さいわいこの森には豊富に動物がいるようだし」


 王子とシンデレラが話している間にも三体の山賊風兵士(原材料に狼含む)がせっせと防壁を無力化し、どんどんとどんぐりは取り除かれていきました。

 

「ん? 王子、もうその魔女は観念したのかい」

「手応えありませんわね」

「それじゃあ俺らも勝負つかねえな。もうちょっと粘ってくれねえと」


 いわせておけば。

 シンデレラは再度魔法を使おうと試みますが、両手を王子に防がれかないません。


「王子! あのような無礼……!」


 言葉は続きませんでした。

 王子が唇でその口を封じたからでした。

 抗議の意味からか最初は怒ったような表情をしていたシンデレラでしたが、やがてキスに没頭していきます。


「あっ、ああああああーっ! なにやってんだ!!」

「あら」

「おいおい……ふふ、でも王子、次は俺の番だぜ」


 ある意味暴力で抑え込んだことになりましょうか。

 ですが、シンデレラはまんざらでもないようでした。


「お、王子っ! 裏切者!」

「さあ王子。来いよ。俺のベーゼはそんなもんじゃないぜ」


 収まらないのは赤ずきんです。

 おっさんも何かいっていますが、あえて無視しましょう。


「なんで魔女といちゃいちゃしてるんだよっ! 取り込まれちまったのか?」


 ひゅるひゅるひゅる。そんな騒がしい一団の後ろに小さな、奇妙なつむじ風が巻き起こります。


「なんですの」


 つむじ風は巻き起こったかと思えばただちに煙のように消え失せ、それをいぶかしげに眺めるラプンツェルの前に杖を持った一人の老婆が現れました。


「やれやれ、やっとこさ来れたわい」


 怪しい老婆。ですが、二度騙されるラプンツェルではありません。

 彼女の大脳新皮質を駆け巡った電気信号が答えを導きます。


「ああ、また新しい王子様がきましたのね」


 そういって笑顔で迎える金髪の娘をかわいそうな目でみやる老婆。


「おお、かわいそうにのう。おまえはラプンツェルだね。塔に閉じ込められて、心がすっかりイってしまったようじゃの。じゃが、わしは今日シンデレラに用があってな、悪いがかまってやれん」

「あら。ただの老婆だったのかしら。つまらないですわ」


 老婆はラプンツェルの前を通り過ぎ、騒がしい方へと進みます。


「お腹空いたニャ!」


 ぐるぐる巻きにされて転がる偽ラプンツェルが抗議の声を上げました。


「おや、タマじゃないかえ。かわいそうに、ホレ、お城にお帰り」


 タマとはこの国で猫につけるトラディショナルな名です。ということは、王城に住む猫だったのでしょうか。飼われていたであろうネズミ達とどうやって共存していたのかは興味が出るところです。

 老婆が杖を振ると、たちまちに偽ラプンツェルの姿は猫になり、次の一振りで消え去りました。王城に強制送還されたのでしょう。

 老婆はまた進みます。

 すると、今度は森の向こうが騒がしくなってきました。

 軍楽隊の音と隊列の進む足音。

 スタンドアロ-ンな軍隊がようやく追いついたのです。


「なんてこった、これもシンデレラのいたずらだね。それ!」


 律儀に進んできた甲斐もなく、老婆の一振りで軍勢は消滅してしまいました。残された動物たちがオロオロしていますが、薄情にもそこまで気がまわる老婆ではなかったようです。


「シンデレラ、シンデレラ! どこにおいでだい? ちょっとばかりおイタが過ぎるんじゃないかい?」


 ようやくシンデレラと王子の前にたどり着きます。

 老婆の探すシンデレラといえば、今もまだ王子に抱きついて接吻を交わしておりました。


「はいはい、まだ夜には早いよ! ああ、まったくこの娘は。目を離すと何をしでかすかわかったもんじゃない」


 手をぱんぱん鳴らして注意を喚起します。


「あっ、魔法使いのおばあちゃん」

「あっ、じゃないよ、この娘は。あんたがしでかしたことをどれだけこの婆が苦労しながらなおして回っているか知らないんだろうね」

「魔法使い。この御婦人が」


 王子がこの老婆と対面するのは初めてでした。何しろ神出鬼没な老婆でしたので。


「なおして回ってって……何を?」


 シンデレラがのんきに答えると老婆の杖がその頭をこづきました。


「おバカ」

「あ痛」

「全部じゃバカ娘が。身重みおもになってこれから大変じゃろうからせめて身の回りの世話に役立つようにと教えた魔法だのに。どこをどう曲解すればクーデターになるんじゃ」

「「身重?」」


 王子とシンデレラがさりげなく流された重要ワードを同時に聞き返しました。


「ああ、まあまだあの時は確定じゃなかったでの。それであの時はいわなかったんだがの。ねんごろになってから半年も経てば自分でもわかるじゃろ」

「わかりません! じゃあ足がガラスの靴に入らなくなったのも」


 かか、と老婆は笑います。


「太ったわけではないわ。足がむくんできただけじゃ」

「そうだったんだ……良かった、ふふふ。だって最近太っちゃったからガラスの靴が入らないの、なんていえるわけないですものね? あたしは姫様なんだから。庶民の夢は守らないとね」

「まっ、魔法使い殿、それはつまりアレということか。姫のお腹には……」

「早いとこ結婚式をせねばいかんのう」

 

 和やかに笑い合う二人とサプライズプレゼントに驚く一人。

 その背後で、天をつんざく轟音が爆裂しました。

 仰天して振り返った王子の目に、空に向かって無益な発砲を行った娘、怒りに震える赤ずきんがうつります。


「て、てめえらふざけるな! どこの世界にマタニティブルーでクーデターを起こす姫がいるんだっ!」


 あきらめねばならない恋という現実を認めるにしては案外普通の反応でした。

 流血を見ずに済んだのは僥倖といえましょう。


「赤ずきんかい。安心おし。この婆が王城の人間たちや事件を知っている者たちの記憶を魔法できっちり改変しておいたから、このまま城に戻っても何の問題もないじゃろう」

「なら安心ね」

「なら安心だな」


 しれっと恐ろしい人権侵害その他もろもろの犯罪が赤裸々にされました。この国では王にすら自分の記憶を保持しうる自由がないのです。まったく、恐るべしは魔法使いです。


「問題おおありだ! 王子! あんただって、本当は気が収まらないだろ? 理由もわからないまま理不尽に幽閉だってされてたんだろ!」

「うん、まあそうなんだが。なあ、そんなことより、その……結婚前に父親になるってどういう感じなんだろうか」

「ぐぬぬ……!」


 のれんに腕押し、ぬかに釘。もはや話にならないのでした。

 冷たいことをいえば、そこまで入れ込むほど付き合いが深かったわけでもない赤ずきんと王子でした。でもそれは普通の人であったならば、です。深い森のなかでたった一人孤独に暮らす中、恋に恋する普通でない少女がようやく出会った王子は、どれほど輝いて見えたことでしょう。


「泣くなよ」


 涙目で剣呑な銃を構える赤ずきんの頭に暖かい大きな手がのせられました。


「あきらめるにはまだ早いぜお嬢ちゃん」


 おっさんでした。


「俺はあいつの側室を狙ってみるつもりだ。お嬢ちゃんとはライバルになるが、どうだい一緒にいってみるかい? 射止めてやろうぜ、王子のハートをよ!」

「な、何をいっていますのダーリン!」


 あわててラプンツェルが抱き着きます。


「ありゃ、どうやって呪いを解いたかね。ホレ」


 魔法使いの婆さんが杖を振ると、哀れおっさんはやや大きめのもっさりした白い猫になってしまいました。


「にゃ」


 ラプンツェルの腕に抱かれてきょろきょろしています。


「お婆さん、なんてことをしてくれますの! 帝国建国の夢が! 戻してくださいな!」

「そうだねえ。王子とシンデレラの結婚式が終わったらもう一度考えてみるかねえ」

「いつやるんですの!」


 魔法使いは王子のほうに顔を向けました。

 王子はといえばすこしばかり太ってしまったらしい婚約者と歓談しています。


「王子。早く戻って式の予定を立てねばならん。そろそろ行くかの」

「魔法で帰れるのか?」

「わしにかかればお茶の子さいさいじゃな」


 王子はそうか、と応え、つかつかと赤ずきんの元に歩み寄りました。


「ありがとう、赤ずきん。それにラプンツェル嬢も。一番わたしがつらかった時に助けてくれた恩は忘れない。さしでがましい申し出かもしれないが……もし良かったら都で暮らさないか? これから先も私たちを支えてくれれば心強い」


 そういって、赤ずきんの手を取ります。もちろん銃を握っていない方の手を、です。


「う……」


 赤ずきんは言葉に詰まります。

 何が嬉しくて恋敗れたその対象が住む町に行けましょう。ですが、この深い森に残るのもまた選ぶべきではない選択に思えたのでした。


「あらあらまあまあ。そういうことでしたらこのラプンツェル、喜んでお供いたしますわ。もちろんこの猫も」

「にゃ」

「おお、ではぜひご一緒に。これからもお頼みする」

「むむむむ……」


 その時、遠くから狼の遠吠えが聞こえました。

 時の流れるのは速いもので、気づけば陽はもう傾き、森の木々が作る影も大きくなっていきます。

 だんだん暗くなる森の奥のその向こうを見つめるようにして、赤ずきんはいいました。


「あたいはここに残るよ。まあ気がかわりゃあ城に遊びに行くときもあるかもしれないし、ないかもしれない。……みんな達者でな」


 王子は何度も何度も礼をいい、そしてついに不思議な魔法で去っていきました。

 あとには静寂と、見慣れた森の風景だけが残りました。

 ……いや、静寂は残らなかったようです。


「元気だして姐さん。なあにこの森でデカイ国を作ってやって、アイツらを見返してやりやしょうや」

「ですぜ。あっしらと姐さんがいればこの近郷近在怖いモンないですぜ」

「まああっしらに掛けられた魔法がどこまで持つかわかりやせんがね」


「おまえたち! あの魔法使いに戻してもらわなかったのか?」

「まあ人間になれるチャンスはそうそうありませんしね、もったいないかなって」


 赤ずきんは驚いたり呆れたりしてましたが、最後には笑いました。





 その後、王子はシンデレラと結婚しました。

 二人とその子供は幸せに暮らし、王家がやがて近代の波によってその席を議会に譲るまで、その血筋は王の座にありました。


 ラプンツェルとおっさんが歴史のおもてに出てくることはありませんでしたが、おそらく自由に暮らしたことでしょう。


 赤ずきんのその後はでたらめな伝承が多くて今はもうわかりません。

 森に大きな帝国を作ったとも、半人半狼の一族を率いて新大陸に渡ったとも、数百年を生きて遠くの国の革命に参加したともいわれますが、おそらくどれも偽の物語でありましょう。

 ただ一つ確かなのは、今でも国境の大森林には多くの狼が住んでいて、夕方になるとその遠吠えを聞くことができる、というところでしょうか。


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