第五章+y
家に帰ったら、親が揉めていた。
「あの子は正常なの!!」
きっと僕のことだろう。
僕だってわかってるよ。
「そんなわけないだろ!
お前あいつの行動ちゃんと見てるのか!?」
わかってるって、もう黙ってよ
「うるさいわね!
じゃあどうにかしろって言うの?」
だって無理なんだもん。
表に出さないなんて。
「せめて精神科に連れて行って、
あいつの将来はあいつに決めさせる。
それが親ってもんだろ!」
やめてよ。
僕のことでそんなに喧嘩しないでよ。
「だってわかんないじゃない。
あの子が本当に⚫⚫⚫だと、自分で思ってるのか」
ごめんなさい。
ごめんなさい。
生まれてきてごめんなさい。
「見てわかるだろ!
あいつは○○○じゃなくて!
⚫⚫⚫なんだよ!」
僕が生きてるからいけないんだよね。
僕が死んじゃえばいいんだよね。
「あなたはあの子のことなんも知らない!」
「知ろうとしないのはお前だろ!」
ああ、神様あなたはなんて残酷なのですか?
「だって、知ったところで無駄じゃない!」
「無駄じゃないようにするのも親の役目だろ!」
そっと首筋に切り込みを入れる。
たしかここら辺が静脈だったはず。
「あの子は、あの子は幸せなんてない。」
「何を言ってるんだ⚫⚫⚫にならしてあげることこそ、最後にあいつのために出来ることだろ」
だんだん意識が遠のいていく。
「そんなこと、出来るはずないじゃない。」
泣き崩れないで、お母さん。
ごめんね、僕女の子じゃなくて。
女の子の体してるのに、
女の子じゃなくて…
気持ち悪いよね。
わかってる。
だから、死んでしまえばもう同じだよ…
お母さん。今までありがとう…
「俺があいつと話してみる。
あいつが変えたいようだったら、
あいつのために、決意してやろう。」
お父さん。ありがとう
でももういいんだ。
僕死ぬから。
最後に認めてくれてありがとう。
性別変えてもいいって言ってくれてありがとう。
認めてくれてありがとう。
それだけで、僕は心が救われた気がする…
二人ともごめんね。
僕がいなかったら、お母さんもお父さんも喧嘩せずに済んだんだもんね
ごめんね。
お母さん。お父さん。
今までありがとう…
さようなら。
最後にお父さんが僕を呼ぶ声がして、
僕は意識を完全に失った…