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報告書―① 廃ビルの一件、1


こつ、こつ、


一歩進むごとに音をならしながら、猫叫美夜ねこざきみやは、廃ビルの中を歩いていた。

 深紅のドレスを纏った彼女は、美しい黒髪やその美貌も相まって、どこか浮世離れした印象を見るものに与えていた。(見るもの、が、もしいたらという仮定の話だが)


『みゃーせんぱい、どうです?現場は』


本部直属後方支援班の支援官オペレーターの明るく元気な声に、猫叫は眉を寄せた。


「…何度も言うけど私の名前は美夜みやよ。猫の鳴き声みたいに呼ぶなともう36回は言った気がするのだけれど。現場はまだ調査中よ。」


『やだなぁ、まだ35回ですよ。』


「回数を覚えているのなら、なおしなさいよ。」


『…うふふ、』


はぁ、と猫叫はため息をついた。

全く、この後輩は。

(…まぁ、有能だから許すけれど。)


 

    がっ、


 足が何かにぶつかったのに気づいて、ようやく歩くのをやめる。


「…璃榮リェン、終わったわ」


 ぶつかったものが自分のボストンバック であることを確認してから、報告する。


『はぁーい。転移装置てれぽーたー起動しまーす。』


 キィィ

という、独特の起動ノイズに耳をすませながら、


(あー、疲れた。ようやく此処から出られる)


と、猫叫は思った。プライドの高い彼女にしては、心の中であろうとこういうことを思うのは、珍しい思考だった。


もっとも正確には、彼女がそう思考したときには

彼女は転移を終えていたので、廃ビルにはいなかったのだが。



****************



彼女が消えたあとの廃ビルは、もとの廃ビルに戻っていた。

ただの、逆さまに地面にめり込んだ廃ビルに。

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