明けのウタ
暗い路地にまるで、打ち捨てられたゴミのように
一人の男が仰向けに倒れている。
男は胸ポケットから取り出したタバコに愛用のジッポで火を点けると深く吸い込むと紫煙を吐き出した。
裏路地の向こうには壊れかけたネオンが見える。
「あぁ、くそっタレ。あいつの依頼なんて受けるんじゃなかった」
男以外に誰もいない路地にクスクスと笑い声が響く。
「てめぇ、最後の最後に登場とは良いご身分じゃねぇか」
影は笑い声を響かせながら答える。
『せやかて、君が一人でやる言うたんやん。』
「お前が力貸してりゃここまでならずに、片ついてたんだよ」
「あぁ、くそっズタボロじゃねぇか気に入ってたのにこのセットアップ」
『けったいな色して、だっさいからちょうど良かったやん。仮にもワイの眷属なんやから身なりにも気ぃくばってもらわんと。』
「うるせぇよ、糞狐。人の趣味にケチつけるんじゃねぇ!!」
『たかが低級にこの始末。。なんでこんなアホに力分けてもたんやろか…』
「誰が好き好んで、てめぇの力なんて借りるか。」
『自分。2分前の発言覚えてる?』
「う、うるせぇ。黙って力貸してりゃ良かったんだよ。」
男は短くなった吸い殻を影に向かって投げ棄てる。
何でこんな事になってんだって?
そりゃ、こっちが聞きてぇよ。
身体はバキバキ、お気にの服はボロボロ。
いい加減にして欲しいぜ、まったく。