第一章 - 5
自分のブログ「フィーネ×ノベル×etc...」の以下のページより転載↓
http://blogs.yahoo.co.jp/fine_novels/64531484.html
五分後、部室を出た俺たちはそのまま夏菜子姉さんの家へ向かった。
姉さんの家は、俺たちの家からさらに五分ほどの位置にある一軒家……というか豪邸だ。
実は父親が大企業の社長で、結構なお金持ち。うちの両親もその会社で働いていて、日本各地で営業し企業の拡大を任されている。だから各地を転々としていたのだ。別に仲が悪くて地方に飛ばされていたわけではない。決して。
そうこうしているうちに玄関前に着いた。
「「「…………」」」
初めて来た三人は驚きのあまり声も出ないようだ。宝積寺先輩はどうやら来たことがある模様。
「ささ、入って入って」
「あの……夏菜子先輩。失礼ですが、本当に先輩の家ですか?」
「もちろんだよ。どう? 驚いた?」
「そりゃ、ねぇ」
「会長も副会長もお金持ちだって噂は聞いていたが……これほどとは」
「凛ちゃんの家もすごいんだよね~」
「えぇ、まぁ……」
「こ、今度行ってもいいですか!?」
「機会があればね。さ、いつまでもここにいたら迷惑だから入りましょう」
無駄に立派なドアを開け、中へ。
まず玄関。洋式なので靴を脱ぐ必要がない。また、巨大な肖像画が飾られている。
「これは誰なんですか?」
隆治が訊く。
「お父さんだよ……。恥ずかしいったらありゃしない」
「おじさん、自己主張強いもんね」
「優ちゃんの言う通りだよ……。後で会うことになるだろうけど、気にしないでね」
それから、そのまま大広間へ。大広間って何の気なしに言ったが、普通ありえないわな。
大広間に入ると、すでに多くの食事が用意されていた。どうやら、立食形式のようだ。七人の為に豪勢だなぁ。
「それじゃあまずは飲み物ね。ジンとウォッカとテキーラ、どれがいい?」
「会長、それ冗談じゃなかったら……」
「凛ちゃん怖い、怖いって! 冗談だから落ち着いて!」
「ふぅ。流石の会長もそんなことはしませんよね。よかった」
「はぁ、はぁ。凛ちゃん冗談くらい覚えようよ……」
「何かおっしゃいました?」
「ナンデモナイデス」
いい加減、二人の過去について訊いてみようかなぁ。まぁいいや。今日は俺たちの為にこんな大体的にやってくれてるんだし、また今度にしよう。
「というわけで、各種100%ジュースや炭酸類、あとは普通にお茶とかお水とかあるから、好きなの取っていいよ」
「「「「「はーい!」」」」」
みな好きな飲み物を取る。
「ん? 隆治、相変わらず炭酸苦手なのか?」
オレンジジュースを注いでいた隆治を見て尋ねる。
「ああ」
「そっか。懐かしいな、隆治とどっちが先に炭酸飲み切れるか勝負したな。その時、炭酸嫌いが発覚して」
「あー、そんなこともあったな」
「流石に高校生にもなって見栄張ることはないか」
「ま、まあな……」
ちなみに、優紀と真は調子に乗っていろいろなものを混ぜている。小学生か。真弓は普通に炭酸だ。姉さんと先輩はお茶。姉さんがお茶とは意外な。
「じゃあみんな、飲み物取ったね? それじゃあ黒磯兄妹、こっちおいで」
「おう」「はーい」
言われるがまま姉さんのいる広間の前の方へ。
「それじゃあ、いいね? 黒磯兄妹の帰還を祝って……かんぱ~い!」
「「「「「「かんぱーい!」」」」」」
パーン
頭上で大きな破裂音が聞こえた。
「わっ!?」「な、なに!?」
驚く俺たち。と、紙吹雪が舞って落ちてきた。さらに、『祝・黒磯兄妹故郷帰還!』と書かれた垂れ幕まである。まさかと思い上を見上げると、そこには大きなくす玉が。
「気づかなかった……」
「巧妙に隠してたからねっ」
本当に、どーでもいいとこにこだわるなぁ。
その後は、各自好きに食事。さっき寝ててあまり話せなかった優紀を中心に会話に華が咲く。
しばらくして、姉さんがマイクを取った。
『ゲーム大会するよっ!』
「また唐突だなぁ」
「何するんですか?」
「えーと……」
「考えてないんかい」
「じゃあさじゃあさ、王様ゲー……」
「やめて」
真が王様ゲームを提案しようとしたが、真弓が速攻で拒否した。何かトラウマでもあるのだろうか。
「拒否するの早いなぁ」
「夏菜子おねえちゃん、ビンゴってないの?」
「おー流石優ちゃん。ナイスアイディア!」
そういって、他の人の意見も聞かずにどこかへ行ってしまった。
数分後。
「お待たせ~」
戻ってきた姉さんの手には、ビンゴするのに必要な道具一式と、中身がわからない同じ大きさの小さな箱が二つあった。
「一ビンゴじゃすく終わっちゃうから、早く三ビンゴした二人にこの景品を差し上げます!」
「「「お~」」」
お~、と言ったのは優紀と真弓と真。俺と宝積寺先輩はロクなものではないと予想。隆治ははなから興味ないようだ。
「それじゃあ好きなカード取って」
適当なビンゴカードを受け取る。5×5の一般的なもので、中央はフリーマス。書いてある数字は1~99の中からランダムで選ばれた二十四個だから、結構当たる確率が低い気がする。
「じゃあ一回目いくよ~」
夏菜子姉さんがビンゴマシーンを動かして球を出す。初めの数字は『39』だ。
「むー」「ないなぁ」「……うむ」
やはり当たる確率は低く、みんなマスが開くことはなかった。
「二回目っ」
次の数字は『41』。
「う……」「開かん……」
そんな中、
「……開いた」
宝積寺先輩が一番初めに開いたようだ。
「どんどんいくよ~」
それから数回繰り返す。ようやくみんなも一つ、また一つとマスが開きだした。
そしてついに、
「よしっ、一ビンゴ!」
真っ先にビンゴしたのは真だった。
「おめでと~。でもあと二ビンゴ必要だからね。他のみんなも頑張って! それじゃあ次いくよ~」
と、その時、玄関側のドアが開いた。
入ってきたのは、五十代のおじさん。
「おっと、すまないね。ビンゴしている最中だったか」
「お父さん!」「「おじさん!」」
夏菜子姉さんの父、石橋春雲おじさんだ。
「やあ、雅人に優紀。元気そうだな」
「はい、おかげさまで」
「そうかそうか。おっと、初めて見る顔もいるな。私が夏菜子の父で大企業『シーズニア』の創設者にして社長、若いころは『石橋をぶっ壊して進む男』と呼ばれた石橋春雲だ。以後お見知りおきを」
うわぁ……。久々に聞いたが改めて聞くとすごいな。創設者にして社長とか、若いころどう呼ばれていたかなんて言う人はこの人以外にそうそういないだろう。夏菜子の父と名前が繋がんねぇよ。
「……まったく恥ずかしい」
流石の夏菜子姉さんもあきれている。
「ところで、そのビンゴに私も混ぜてもらえないか?」
「え、でももうそこそこ球が出ちゃってますよ?」
「構わんよ、あとから入ってきたんだ。それくらいは仕方ない」
「じゃあお父さん、カード選んで」
おじさんは姉さんが出したカードを適当に選んだ。そう、本当に『適当』なものを選んだ。
それから数十分後。
「はっはっは、三ビンゴ目だ!」
誰よりも早く三ビンゴ達成したのは、おじさんだった。
「嘘だろ……」
「お父さん、空気読んでよ……」
「なに、すでに出ていた球の数字と見せられたカードから一番ビンゴする確率の高いカードを選んだにすぎんよ」
選んだにすぎん、って。超すごいじゃないですか。夏菜子姉さんも不思議な能力あるし、石橋家って一体どうなってるんだ?
「さて。まぁ流石にこれで景品をもらおうなんておこがましいことはしないから、私は失礼しよう。ありがとう、楽しかったぞ」
そう言って、おじさんは去って行った。
「なんですか、あのハイスペックな父親は……」
宝積寺先輩があきれたようにいう。
「あはは……。まさかこんなことされるとは思ってもみなかったよ」
「いやでもすごいじゃないですか! 会長のお父さんに弟子入りしてもいいですか!?」
「真、落ち着け」
興奮する真を隆治がたしなめる。確かに、真が好きそうな人物ではあるが……。
「別に構わないけど、多分一時間もしたら嫌になると思うよ。きっとまず最初に、自分がいかにすごいか延々と語り始めるから」
「それは……やめておきます」
姉さんに言われ、流石に諦めたようだ。さっきの自己紹介だけでもあれだったのに、それを数時間続けられたらたまったもんじゃない。
「さて、余計な邪魔が入ったけど、ビンゴを再開しよう!」
今後の作品の参考にしたいので、感想・意見等あれば是非お願いします!