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第五章 - 2

自分のブログ「フィーネ×ノベル×etc...」の以下のページより転載↓

http://blogs.yahoo.co.jp/fine_novels/64757224.html

 この学校は通常屋上は立ち入り禁止だ。

 だが、どういうわけだか鍵が開いていた。きっとピッキングか何かであいつが開けたのだろう。

みいながここを指定したのは、他の人に聞かれたくないからだろうが、まさかこっちから連絡するより先にあっちから連絡してくるとは。何か、急な用事でもあるのだろうか。

「みいな~、いるか~?」

「ここだ」

「うわっと」

 俺の頭上からみいなが降りてきた。どうやら、高いところに上っていたらしい。

 制服姿ではなく、昨日川で会った時と同じ格好をしているとこを見ると、仕事中だろうか。スカートの中が見えてしまったのは黙っておく。

「約束通り、一人で来たぞ」

「そのようだな。ふむ、念のため鍵をしておくか」

 そういってみいなは俺が入ってきた扉の鍵を閉める。

 その後、ドアから死角になっているところへ移動。

「それで、なんのようだ?」

「昨夜黒磯たちと別れた後、強力な反応が一つあった。私が現場に急行したら、どうも近くにお前の家があるみたいでな。何か知らないかと思って呼んだのだ」

 昨夜俺たちと別れた後……? ということは、もしかして。

「それと関係があるかわからんが……。また、昨日話した現象と同じことが起きた。多分

時間的に、そっちで反応を見つけたのとほぼ同時刻だ」

「なんだって!? 詳しく聞かせろっ」

 俺は、ことの顛末をなるべく細かく話した。女の子にこういう話をするのは気が引けるが、ちゃんと死んでいた一家のことも話した。

 そして、最後に謎の生物が俺をすり抜け、その時声が聞こえたことも話した。

「これで以上だ」

「ふーむ……」

 考え込むみいな。

「すぐに結論を出すのは難しいな。とりあえず、貴重な情報をありがとう」

「いやいや。そんな大したことじゃないって」

「そんなことはないぞ。あやつらと接触して無事だなんて滅多にないからな。これはなかなかの大物だから、何かあったら一回手伝ってもいいぞ」

「お、サンキュー。じゃあ何かあったらよろしくな」

「ああ、それじゃ。私はまだ仕事があるから」

「学校もちゃんと来いよ~」

「……大きなお世話だ」

 そういってみいなは、なんと屋上の柵を乗り越えて身一つで飛び降りてしまった。

 あいつの家庭は忍者か?


 教室に戻ると、知美がクラスメイトに囲まれていた。俺の時と同様に、質問攻めにあっているらしい。

「あ、雅人さ~ん。助けてください~」

 泣きそうになりながら俺に助けを求めてくる。

「ほらほら、知美が泣きそうになってるぞ。ここらで一旦やめてあげなよ」

 そう言いながら、知美からクラスメイトたちを引き離す。

「なぁ雅人」

「ん?」

 クラスメイトの誰かだ俺に訊いてきた。

「お前、なんですでに名前で呼び捨てにするほど白岡さんと仲が良いんだ?」

「あー、それね。なに、親が知り合いで小さいころから何度か会ってたんだよ。彼女の両親も各地を転々としていて、うちと同じ場所だったことも何度かあるし」

 用意していた嘘を喋る。部員で話し合ったのだが、これが一番だろうということで、すでに身内では口裏を合わせてある。

「なーんだ。そういうことか」

 訊いてきたクラスメイトもそれで納得してくれた。


 午後の授業が終わり放課後。俺、知美、真弓、真、隆治の五人は、一度中学生の教室へ向かい優紀を拾った後、部室へと向かった。

 夏菜子姉さんと宝積寺先輩より来るのは早かったが、二人ともものの数分で部室に来た。

「それじゃあ、今日の部活を始めるよ。まずは雅人、昼氏家さんに聞いたことを洗いざらい吐いてもらおうか」

「なぜ脅し口調なんだ……?」

「いいから、さっさと話す!」

「へいへい」

 まぁ、もちろんすべてを馬鹿正直に話すほど俺はアホじゃない。みんなに話しても問題ないところだけをうまくかいつまんで話す。

「へぇ~。あの後にも反応はあったんだね」

「ま、流石に時間が時間だったから、俺たちの誰かが気づくことはなかったみたいだけどね」

「そりゃ、あの後って言ったら帰ってそっこーで寝たからなぁ」

 そんな風に談笑をしていた、その時、宝積寺先輩が何かに気付く。

「ねえ、みなさん……。ちょっとあたりが静かすぎないかしら?」

「え?」

 そう言われ、俺たちは一旦黙る。

確かに、この時間帯なら部室棟は多くの人が出入りし、動き回り、とても賑やかだ。もちろん、音楽系ではないから、部室が防音ってことはない。

 なのに、今日はその喧騒がまったく聞こえない。

「これは……非常事態、だね」

 俺たちは部室を出て、走って職員室へ。

 もうこの時点で誰ともすれ違わなかったことを考えると、職員室も……

「やっぱり誰もいない、か」

 職員室はもぬけの殻だった。

いや、この学校全体がそうだ。

俺たち以外、全員いない。

問題は、『俺たちが隔離された』のか『他の人たちが連れ去られた』のかがわからないことか。

「宝積寺先輩」

 俺は、先輩を呼ぶ。

「黒磯君、何ですか?」

「とりあえず、例の空間に俺たち全員が巻き込まれたのか、それとも他の人たちがなんらかの手段で連れ去られたのか知りたいので、とりあえず学校の外にいけるか試してみませんか?」

「そうね。部室棟からここまで来れたってことは、最低でも校庭や中庭は平気だった。となると、例の空間ならこの学校全体がそうだ、ってことになるわね」

「ええ」

「わかったわ。……会長」

 俺との打ち合わせが済んですぐ、先輩は姉さんに提案する。

「凛ちゃん、どうしたの?」

「まずは一旦学校を出ませんか? もしかしたら、私たちが気づかない間に何かあって、外に避難しているのかもしれませんわ」

「うーん……、そうだね。一旦学校外に出よう」

 俺たちは一旦部室に戻り、自分たちの荷物を持って再び外へ。

 本校舎へ行き、玄関から出る。そうすれば、もう校門は目の前だ。

 しかし、そこに『やつ』が現れる。

「グォオオオオオオオオオオオオオオ」

「ひゃぁっ」

 地面からいきなり出てきたもんだから、一番先頭を走っていた夏菜子姉さんが驚いてバランスを崩し、しりもちをつく。

 慌てて、そのあとを走っていた俺と隆治が抱え起こし、一旦退避。

「おいおいおいおい、なんで校門前にあいつが出てくんだ!? 門を守るガーディアンか!?」

「ゲームじゃあるまいし……、と言いたいところだが、今回は真に同意だ。一体何のつもりなんだ?」

「なんにせよ、かなりまずいね」

「だね。しかも門が閉まってた。あの門はそこそこ重いから、誰かが囮になっている間に開ける、ってのは難しいと思う」

 本校舎の中に逃げ、中から『やつ』の様子をうかがう。

 今回現れたのは、川の時よりもさらに大きく、ざっと五、六メートルといったところだろう。容貌はやはりヒト型で、基本的な特徴も一致。

 攻撃手段はまだ不明だが、なんにせよ、みいながいないと対処のしようがない。

「兄ちゃん……」「雅人さん……」

 優紀と知美が不安そうな顔を見せる。

「大丈夫だって、二人とも。何とかなるよ」

 今の俺には、そう言うことしかできなかった。

 とりあえず、各自校舎内を探索して、使えそうなものがないか探すことに。

 『やつ』は、建物に危害を加える様子はなさそうなので校内にいれば安全だろう、と姉さんが推測したからだ。

 だけど、俺は知っている。

 『やつ』らには普通の攻撃が効かないことを。それは昨夜身をもって体感した。

 そう考えると、みいなが持っていた刀は、何か特殊な加工がされているのだろう。

 俺は一人で、まずトイレへ。ここなら他のみんなが来ることは少ないだろう。

 そこで、みいなに連絡をする。

 こんな時まで体面を守ろうとするのは、ちょっと不思議だな。

 なんだかんだ圏外ではなかったので、普通に電話することができた。

『あ、黒磯! あんたたち、無事!?』

「ああ、無事ではあるんだが……」

『なにかあったの?』

「学校から出ようとしたら、校門の前に全長五メートルくらいある『やつ』が現れた」

『やっぱり……』

「やっぱり?」

『お昼の続きなんだけど、あの後もう一度夜中の反応を調べたら、実は反応は二つあったのよ』

「二つ!?」

『そう。そのうち一つがあなたと接触したもの。そいつはあなたと接触した後消えたわ。でも、そいつに隠れるようにしてもう一ついた。今まで二つも同時に発生することはなかったから、私たちも反応が消えたことで安心しちまった』

「なるほど。それで、俺たちはどういう状況なんだ?」

『そいつは多分、「牢屋型」なんだ』

「『牢屋型』?」

『そう。特定の人たちだけを、一定区画に閉じ込める能力を持っていると思う。その時、関係ない人たちは区画外に追い出す』

「だから俺たち以外いないのか……」

『なんであなたたちが選ばれたかはわからない。けど、なんにしたって私たちが助け出すわ。そういう仕事だから』

「なんか、二日も続けてすまないな」

『いいのよ。その代り、今度なんか奢んなさい!』

「わかったよ」

今後の作品の参考にしたいので、感想・意見等あれば是非お願いします!

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