プロローグ
自分のブログ「フィーネ×ノベル×etc...」の以下のページより転載↓
http://blogs.yahoo.co.jp/fine_novels/64476592.html
四月七日、春休みの最終日。
俺、黒磯雅人は、妹の優紀と共に数年ぶりの故郷「陽期町」へと戻ってきた。
俺たちの親は転勤の多い仕事で、俺が小学五年生の夏あたりから日本各地を転々としていた。時に大都会、時にド田舎……。いろいろなところに行った。
そして俺が高校生になる今年、親に頼んで俺は陽期町に戻ることにした。いい加減、転校を繰り返すのが嫌になってきたからだ。いつまでたってもろくに友達ができないし、勉強や趣味に集中できない。親は少々心配そうだったが、俺は家事全般が比較的得意だ。それでなんとか納得してくれた。
妹は、それに便乗してきた形でなし崩し的に認めてもらい、俺と共に戻ってきた。
……って俺は何を語っているんだ。早く荷物を家に入れなければ。
「兄ちゃん、何ぼーっとしてんの?」
先に家に入っていた優紀が玄関から顔を出した。なかなか入らない俺が気になったのだろう。
「……っと。悪い、考え事してた」
「ふーん。なんでもいいから早く荷物運んで!」
「なんでもいいって……」
大きなスーツケース二つを持って家の中へ。家具類なんかは置きっぱなしなので、ほとんど服とか小物とかの個人的な細かいもの。だから、わざわざ引っ越し業者に頼むほどのものではない。まぁ、スーツケースの量が多く、飛行機に乗るとき少々余分にお金取られたが……。
家は、転勤する前に住んでいたもともとの家。俺たちがいない間は他人に貸して、親戚が管理してくれていた。だから、これからしばらく俺と妹だけで住むことを考えると、少し広い。だけど、久々の自宅。しばらくは飽きなさそうだ。
親戚が管理していたから問題はないだろうが、一応確認。
まずリビング……
「うん、問題なし。借りてた人、きれいに家具とか使ってくれたみたいだね」
「すご~い、新品みたい!」
誰が住んでいたか俺たちは知らないが、相当良い人が住んでいたみたいだ。まるで使っていないかのようにきれい。
続いてキッチン。こちらもピッカピカだ。しかも、親戚が変えてくれたのかコンロはガスではなく電気になっている。
トイレや風呂、押し入れなんかも確認し、その後は各々の部屋を確認。
俺の部屋は妹の部屋の向い。一軒家なので比較的広めの部屋だ。勉強机に棚、ベッド、テレビと一通り揃っている。
しかし、まだ足りない。早く『例のもの』は……。
ピンポーン
と、インターホンが鳴った。
「はーい」
玄関を開けると、宅配業者の人が二人いた。そしてその横には俺の身長ほどある大きな荷物。
「黒磯雅人さんですね? お届け物です」
「ご苦労様ですっ」
おっと、ついつい声が弾んでしまった。
「じゃあここにハンコをお願いします。あと、大きいんで中まで運びましょうか?」
「あ、はい。お願いします」
玄関のドアを開けてあげて、宅配業者の人を中へ。
「失礼します。どこへおきましょうか?」
「あ、じゃあ俺の部屋へ。こっちです」
自室へと案内し、部屋の中へ。机の横に巨大な荷物を置いてもらう。
「あ、ここでいいです。ありがとうございました」
「いえいえ。それでは」
宅配業者の人たちが去ったあと、優紀が俺の部屋に入ってきた。
「兄ちゃん、なんか騒々しかったけど……って何その荷物?」
「そんなこと、わかりきってるだろう」
「あー、そういえば見ないなと思ったけど、持って帰ってきたんだ……」
「そりゃもちろん。大事なものだからな」
「はぁ……。私も好きだけど、ここまでやられると流石に引くわ……」
「う、うるさいなぁ」
「とりあえず、そろそろご飯にしない? おなか減った」
「はいはい。ったく、これからしばらく二人で暮らすんだから、料理くらいできるようになれよ……」
「わ、わかってるよ!」
妹と共に自室を出て、キッチンへ。
と言っても、まだ冷蔵庫には何も入っていないので、スーツケースの中からレンジご飯と海苔と塩やふりかけをだし、おにぎりをいくつかつくる。
さっき料理できるようになれ、と言われたからか優紀が一緒につくってくれたが、これは料理と言わんだろう……。
おにぎりを食べながら、優紀と明日について話す。
「明日は朝七時半に学校だから、夜更かしするなよ?」
「わかってるわよ、もう子供じゃないんだから」
「まだ中二だろ。子供だよ」
「高校生になったからってえらそーにすんな!」
「へいへい。……そういえば、あいつらはいるのかな……?」
「あいつら?」
「小学生のころ仲良かった三人。この町、小さいから高校って二つしかないじゃん。だから、もしかしたら会えるかな~って思っただけ」
「そっかぁ。私は……」
「? どうした」
「う、ううん。なんでもない。ごちそうさまっ」
そう言って優紀はそそくさと自室へ行ってしまった。
「何か変なこと言ったかな……?」
妹といえど、年頃の女の子だ。
しばらく二人で暮らすんだし、少し言動には気をつけないとな……。
部屋に戻り、机の横へ。例の荷物をついに開ける時が!
「よし、開けるぞ!」
大きな箱の中から出てきたのは、青い髪をした少女のフィギア。それも等身大だ。
モデルの少女は『ゴーストバスター・リメリィ』。
陽期町は、昔から妖怪や幽霊、はては宇宙人や未確認生物などなどの目撃情報が絶えない。そこで、当時の町長が町おこしの為に作ったのが『ゴーストバスター・リメリィ』だ。
小さい子が好きそうなヒーローものみたいなストーリー、ちょっと上の歳の人たちにも興味を持ってもらうため、著名なイラストレーターにキャラクターデザインを頼む、リメリィの着ぐるみを作ってショーをやる、等身大フィギアを作って町役所の玄関前に展示、各種グッズの売り出し……。
しかし、かなりお金をかけたのに対し、成果はなかった。町長も責任を取って辞任した。
だが、一部のマニアの間ではかなり有名で、密かにファンも多い。俺や優紀もそんな中の一人だ。
特に、主人公であるリメリィの人気は異常ともいえるほど。出回った量が少ないせいか、グッズは高値で取引されている。
そんな中、小学三年だった俺は、すごい行動に出た。
町役所に行って、町長(正確にはその時点で元町長)と交渉し等身大フィギアをもらってきたのだ。
今思い返すと、自分でも驚くような行動力だ。そして、よくもらえたと思う。
それ以来、リメリィの等身大フィギアは俺の宝物だ。親の転勤で各地を転々としていたときも、ずっと手元に置いていた。親はかなり困っていたようだが。
宅配業者の中でも特に腕がいいと有名のところに頼んだので問題ないと思うが、一応傷チェック。……うん、問題なし。
中学二年のころ、だいぶ痛んできたので、たまたまその時住んでいたところの近くにこういうものの修理を専門にしているところがあったので、直してもらい、それ以来大切に扱ってきているからかまるで新品のよう。肌もつやつや、って違うか。
「はぁあああ……リメリィかわいいわぁ」
……こういう行動が妹に引かれるのか。少し自重しよう。
「ふぅ。十分堪能したし、今日は疲れたからもう寝よう」
ベッドに横になると、疲れがたまっていたからかそのまま寝た。
夜中。
物音がして、少し目が覚めた。
「……」
なんだ、優紀が水を飲みに来ただけか……。
机の横が何か足りないような気がするが……気のせい、だ……ぐぅ。
はじめましての人ははじめまして、「幽霊になったメイド」を読んでくださった方はややお久しぶりです
今回の作品は前回同様新人賞に出して落選した作品です もしかしたら「幽霊になったメイド」より出来が悪いかもしれませんが、是非今後も読んでいってください!
また、こちらの更新は火曜のみで、金曜はさらに別の作品を公開していきます こちらもお楽しみに
今後の作品の参考にしたいので、感想・意見等あれば是非お願いします!