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妹のオマケで異世界に召喚されました  作者: 春岡犬吉
スリク皇国編 第三章
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おとーさんが変!

遅くなりまして申し訳ございません。

私生活、は今更なんですが、仕事が忙しくて

執筆時間がなかなか取れず、書き進められませんでした。

 先生のがんばりとおとーさんの活躍で、僕たちは何とか蟻さんの女王様を助けられた。

 でも女王様は目を潰されて見えないし、足をもがれちゃってるから歩くことも出来ない。それに、頭からぴょこんって生えてる触角も無い。

 正直、僕とスミカおねーちゃんは女王様が死んじゃうって思ってた。

 でも、難しい顔をしながら女王様を見てた先生は言ったんだ。

「幸いにしてここにはアルシェアナ殿が居ますから、助ける事自体は可能でしょう」

「ホント?!」

「助かるの?!」

「はい。命は助かる筈です。そうですよね? アルシェアナ殿」

「――ええ」

 先生がアルシェおかーさんに聞くと、頷いてくれた。

「やったー!」

「良かったー」

 女王様が助かるって聞いた僕は喜び、スミカおねーちゃんは安心した。

 けれど、先生もおかーさんたちも、難しい顔のままだった。

 だから僕たちは喜ぶことを止めて、どうしたんだろう? って思ってお互いに顔を見合わせて首を傾げた。

 でもそれは直ぐに分かった。

「ですが、失われてしまったものは……」

 悔しそうに先生がそう言ったから。

 僕もスミカおねーちゃんも、先生が言いたい事は分かる。二人とも先生とウェスラおかーさんから魔法を教わってるし、何でも出来るように見えても、万能じゃないってことも知ってるから。

 だから僕たちは、女王様をこんな目に合わせた人を、ものすごく恨んだ。だけどそれと同じくらい悔しかった。

 おとーさんとおかーさんたちと先生にも「何とかしてっ!」ってホントは言いたかった。でもそれを、僕もスミカおねーちゃんも、思いっきりぎゅって手を握って我慢した。

 そんなのは、力の足りない僕たちのただの我儘だって分かってたから。

 だから、目に涙をいっぱい溜ることしか出来なかった。

 悔しくて情けなくて、僕たちはプルプルと震える。

 そして涙がこぼれそうになった時、僕たちの頭に誰かの手がぽんって乗っかった。

 誰だろうって思って顔を向けると、そこには目が赤と青になったままのおとーさんが立っていた。

「我――じゃない。オレに、任せろ」

 そう言っておとーさんは女王様の傍に膝を付く。

 でも僕とスミカおねーちゃんは、あれ? って思った。

 ちょっと言葉使いがおかしかったからなんだけど、でもおとーさんはたまにおかしくなるし、だけどなんか何時ものおとーさんと違うような感じもするし、なんか変な感じがしたんだ。

 僕の気のせいかも知れないけど。

「で、教授よ。貴様の見立てではどうなのだ?」

 うーん……。やっぱりおとーさんの言葉使いが変だなあ。

 先生はそれに気が付いてるのかいないのか分からないけど、難しい顔をして答えてた。

「幸いに、と言うと語弊がありますが、魔蟲はこれ程の傷を負っていても即死はしないのが救いですね。もしも我等の仲間やミズキ殿たち魔物がこれだけの傷を負ったとすれば、まず間違いなく助かりはしないでしょうから。とは言え、このまま放っておけばいくら魔蟲でも遠からず死んでしまいます。ですから、出来る限り早くアルシェ殿の聖魔法で傷の治療をする必要性があります。後、足の方はリエル殿に頼めば、何とかなると思います。ですが、触角と複眼だけは、どうにも……」

「ふむ。ならば早々に治療するとしよう。――アルシェ!」

 何時ものおとーさんらしくない強い声に、アルシェおかーさんはビクってすると、少しだけ緊張した声で返事をした。

「は、はいっ!」

「こ奴の治療を頼む」

 アルシェおかーさんはちょっと緊張してるのか、きれいなお顔を引き攣らせながら、女王様の所へと歩いて行った。

 ただアルシェおかーさんが僕たちの傍を通る時に、ちょっとだけ困った顔でこっちを見たから、おとーさんが何か変なのは分ってるみたいだった。

 僕とスミカおねーちゃんは顔を見合わせて頷くと、他のおかーさんたちの顔もよーく見てみた。

 やっぱりおとーさんがなんか変だって、分かってるみたいで、アルシェおかーさんと同じで少し困った顔をしてる。

――ねえねえ、スミカおねーちゃん。

――ライルちゃん、どうしたの? 念話なんかつないで?

――おとーさんってさ、やっぱりちょっと変なんだね。

――あ、それはあたしも思ってた。話し方も変だし、雰囲気も違うし。

 スミカおねーちゃんの声は少し怖い感じがしたけど、怒ってるのとはちょっと違うみたい。

――どうしちゃったのかなあ。おとーさん。

――もしかすると、あれって……。

 スミカおねーちゃんが少し考え込んだとき、

「リエル、ちと良いか?」

 今度はリエルおかーさんが呼ばれた。

「なに?」

「こ奴の足なんだが――」

「見てみないと分からないかな?」

「話が早くて助かる」

 おとーさんが全部言う前にリエルおかーさんは分かったみたいで、女王蟻さんの所まで行くと、しゃがんで足を一生懸命見始めた。

 その隣ではアルシェおかーさんは女王様の傷に両手を向けて、魔法を使って真剣な顔で治している。いっぱいあるから大変みたいだけど、ひとつ傷が治るたんびに「ふぅ」って息をはいておでこの汗を拭うと、直ぐに次の傷を治していった。

「ミズキとハズキはそこに転がってる男を拘束しておいてくれんか? 目覚めて暴れられても困るからな」

「は、はいっ!」

「分かりんした」

 僕たちはすっかり忘れてたけど、黒い変なのを出した男の人も居たんだった。

「それと、ウェンズ」

「――何だ」

「ヴォルドとジルと共に、周囲の警戒を頼む」

「俺に指図するな、と言いたい所だが、他に適任が居ない様だし、ここは頼まれてやる」

 ちょっぴり変でも、おとーさんはやっぱりすごい。

 ヴォルドおじちゃんとジルおかーさんは兎も角、ウェンズさんが素直に言う事を聞くなんて、普通なら絶対にないもん。

 だって前におかーさんが、竜族はとってもプライドが高いから、自分よりも弱い人のいう事は聞かない、って言ってたし。

「チッピ」

『うむ、皆まで言わんでも分かっておる』

 たしかこういうのって、あうんのこきゅう、って前におとーさんが言ってたなあ。

 でも、あうん、って何だろう?

 ま、いいや。僕ももっと大きくなれば分かると思うし、覚えておいて後で教わればいいんだもんね。

「ああ、それとだな。ライルとスミカなんだが――」

 スミカおねーちゃんが何も言わないから、僕もちょっぴり考え事をしてたら、おとーさんから声が掛かった。

「うん?」

「なーに?」

「あそこでうろちょろしている蟻共の相手をしててくれんか?」

「わかった!」

「いいけど。――でも、なんで?」

 僕は素直に頷いたけど、スミカおねーちゃんは理由を知りたいみたいで、おとーさんに質問をしていた。

「アルシェとリエルの作業に、一々干渉し様とする態度を牽制するのがちと面倒でな。故に、仲の良いお主達に抑えて貰いたいのだ」

 おとーさんがちょっと困った声でそう言ったから、アルシェおかーさんやリエルおかーさんの方を見てみると、おかーさんたちが女王蟻さんに触ろうとするたんびに、蟻さんたちが慌てた感じで近付こうとして、おとーさんに睨まれて動きを止めるのが見えた。

 それを見た僕は、ちょっぴり悲しくなった。

 だって、蟻さんとお友達に成れたと思ってたんだもん。

 僕が少しだけ落ち込んでる横で、スミカおねーちゃんはおとーさんに返事をした。

「分かった。けど――」

「けど、何だ?」

 スミカおねーちゃんが途中で言葉を切ると、おとーさんが僕たちをチラっと見てから、首を傾げる。

「スミカたちの目の前に居るのは、本当にパパなの?」

 それは聞いた僕は、驚いてスミカおねーちゃんの方を見る。

 その事はなんとなくだけど、聞いちゃいけないよね、って思ってた事なんだもん。

 もちろん、おとーさんもものすごく驚いた顔を、スミカおねーちゃんに向けてた。

 でも、僕とおとーさんの驚いた顔を見ても、スミカおねーちゃんの口は止まらなかった。

「本当のパパじゃなかったら、何で本当のパパじゃないのか教えてくれなくちゃ、言う事聞けないもん」




        *



 スミカが放った一言に、我は驚愕し狼狽える。

 何故だ。

 どうしてだ。

 何処でバレたのだ。

 完璧だった筈だ。

 指示の出し方も、見せる態度も。

 言葉遣――あ……。

 ここで我は自身のミスに気が付き、大いに慌てた。

 し、ししし、しまったあああああああ!

 指示を出す時、つい何時もの口調で話してしまったあああああ!

 わ、我は何と言う失態を犯してしまったのだあああああ!

 スミカの鋭い指摘に混乱した我は咄嗟に、最も身近な相手に助けを求めてしまっていた。

 絶対に相談事や助けを求めてはいけない、我とは対極に位置する者に。

――お、おいっ! 蒼! ど、どど、どうしたら良いのだっ!

――はあ、これだから貴方は……。

 我の問い掛けに蒼は、呆れ果てた声を出しおった。

 我が今聞きたいのは説教ではなく、どうやったらこの窮地を乗り切れるかなのだ。

 なのに、蒼の奴は説教を始めようとしている。

――説教なぞ後で幾らでも聞いてやる! だ、だから今は――!

――こうなったら正直に話す以外、道はないと思いますが?

 しかし、我の声を遮り返って来た言葉には、流石に耳を疑った。

――は? い、今なんと……。

――ですから、何もかも話すしかない、と私は言ったのですよ。

――だ、だが……。

――だがもでももありません。ミスをした貴方が悪いのですから、責任をもって説明してください。そうしなければ、スミカ殿は納得しないと思いますよ?

 奴の無情な声が、我の脳裏に響く。

 説明するだと?

 この我が?

――くれぐれも居丈高に成らない様にしてください。血の繫がりは無いとは言え、スミカ殿は主の娘ですからね。

――高々十と少ししか生きておらぬ娘に(へりくだ)れというのか! この我が!

――遜れ、とは言ってません。普段の様に威張るな、と言っているのです。

 我は蒼の言葉に愕然とした。

 この状況を説明しなければならぬのは致し方ない、と認めよう。ミスを犯した我の所為なのだから。

 だが、威張るなとはどういうことだ。

 我は威厳をもって接する事はあれど、威張った事など一度足りとも無い。

 確かに口調が荒っぽい事は我とて理解している。時にはそれが、傲慢に見える事も有るやもしれぬからな。

 だが、我が性情を理解していれば、些細な事だと分かる筈なのだ。

 その事は蒼とて分かっている筈であろうに、言うに事欠いて自身の傲岸不遜さを棚に上げて置きながらの今の言動は、言語道断にも程がある!

「貴様とて我の事を言える立場ではなかろうにっ!」

 怒り心頭になった我の口からは、無意識のうちに蒼を罵る言葉が零れ落ちていた。

 だが我はこの時、もっと気に掛けておくべきだったのだ。

 現実に於いて我の相手をしているのは蒼ではなく、スミカだという事を。

「す、スミカはスミカだもん! 今のパパとは違うもん!」

 そこには、今にも溢れんばかりの涙を溜めた瞳で、我を睨み付けるスミカが居た。

 流石の我もこれには狼狽える以外にない。

 何故ならば、主がこの事実を知ったならば、暫くの間は顕現する事を禁じられるだろうからだ。

 このままでは不味い!

 直感で自身の不利を悟った我は、弁明を試みようと口を開く。

「い、いや、こ、これは、だな、スミカに言ったのではな――」

 だが、我が必死に弁明を始めた瞬間、

「あっ! ミッシーが居なくなっちゃった!!」

 ――まさかこれはっ!? 紅、後は頼みますっ!

 ライルの驚きと、蒼の焦りが同時に木霊し、一人残された我は、叫ばずにはいられなかった。

 だ、だれかっ! 誰か我に力をっ!

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