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妹のオマケで異世界に召喚されました  作者: 春岡犬吉
スリク皇国編 第二章
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驚愕の事実発覚?

「――が半分諦めているのですから、貴女方も諦めなさい! いいですね! それともしも――」

 眠りから目覚めた俺の耳に飛び込んで来たのは、アルシェが説教をする声だった。

 ただし、何故かは分からないけど俺の本能が、ここで目を開けてはいけない、と叫んでいたので、暫くの間は狸寝入りをする事に決めた。

 そこで俺は、有意義に狸寝入りをするにはどうすればいいのかを考え、アルシェが何故ここに居るのか考察してみる事にした。

 俺が出した、と言うか出させた手紙は、早くても一週間は掛かる、と言われていたから、セルスリウスにはまだ届いて居ないと断言出来るから、これは関係無い。

 ならば別の手段で、と成るが、俺が知る限りでは、エリーの移動速度に追い付ける手段を、アルシェは持っていない。

 これは俺が知らないだけで、もしかすると持っている可能性はあるが、地上を移動する限り、エリーに匹敵する移動速度を出そうと思えば、森の中を進む事は不可能。

 ノーザマイン滞在中に追い付いた、と言う事も有り得なくはないが、俺達と合流しない理由は無い筈だから、これも違う。

 それに街に入った事を彼女が内密にしようとしても、王女様が来た事等、直ぐに街中に知れ渡る。

 人の口に戸は立てられないからな。

 ならば、ずっと陰から見守っていてタイミングを見計らって出て来た、とも考えたが、これこそ百パーセント有り得ない。

 だから、お仕置きされている場面に都合よく現れたのは、完全に偶然だと思っていい。

 現状分かっている事だけでは俺の頭脳を持ってしても、アルシェの移動手段に対する回答は得られなかった。

 まあ、答えに辿り付く為に必要な途中のピースが無いんだから、分からなくて当たり前だけどな。

「ま、いいか」

 狸寝入りの最中なのに俺は思わず、そんな呟きを洩らした。

「おい、アルシェアナ・ファム・ユセルフ。貴様の夫が起きたぞ」

 そこに、知らない声が響いた。

 何処と無く横柄な態度を感じさせる男の声で俺の起床を知らされたアルシェは「ウェンズ様、態々有り難う御座います」と随分と畏まった礼を口にしていた。

 俺は狸寝入りがばれてしまったので、

「知らない天井ならぬ、知らない声か」

 瞼を開け身を起こしながら、苦笑交じりに言葉を吐き出した。

 俺の視界に飛び込んで来たのは、壁に背中を預けて俺を睨み付ける男――何処と無くオラス団長似だ――と、半分呆れながら、もう半分は安堵の表情という、少し複雑な顔をしたアルシェ。

 そして、ロープで上半身を簀巻きにされて床に正座させられ、魂が抜けた様な顔をしている、ミズキとハズキだった。

 取り合えずミズキとハズキの事は横に置いておくとして、俺は実の所、内心は少々ムカついていた。

 それは奴――ウェンズの態度が原因。

 ただそれ以上に、アルシェの事をフルネームで呼ぶ奴の事が気に成っていたから、不快感が表には出て来なかったのだろう。

 尤も、態度に出した所で、奴が不機嫌になるとは思えないが。

 アルシェは本来、フルネームで呼ばれる事は少ない。通常は、アルシェアナ王女か、もしくは王女様、と呼ぶ筈なのだ。

 なのに奴は、フルネームで呼んだ。

 しかも、フルネームで呼ぶ場合は大抵、彼女よりも地位が高く、尚且つ初顔合わせの場合くらいと、相場が決まっている。

 となると必然的に、純粋な力関係ではアルシェよりも遥かに奴の方が上、と言う事になるし、面識も余り無い、と言える。

 しかも、奴には敬意や親愛と言った感情も見られないのに、アルシェの方は奴に対する敬意、と言うよりも畏怖に近い感情が見て取れる。

 そこから鑑みると、どんな態度を取られ様とも、アルシェでは絶対に逆らう事が出来ない存在、と言う事になる。

 だけど俺は、そんな地位に就いている者など数えるほどしか知らないし、況してや彼女の事をフルネームで呼ぶ様な人物の心当たりも無い。

 となると、奴は俺達とは違うルールで世界を生きていて、滅多に接触をしてこない存在、という事にもなる。

 俺が奴の考察をしていると、アルシェの安堵した声が俺に向けられる。

「体は大丈夫ですか?」

「問題ないよ。あの程度じゃ死なない、というか、たぶん死ねないから」

 俺は肩を竦めておどけてみせた。

「私が、そうですか、と言うとでも思っているのですか?」

 俺が見せた態度に、少しだけ怒っているようで、彼女の頬は膨らんでいた。

「――ごめん、心配ばかり掛けて」

 俺が素直に謝ると、アルシェは怒りも纏めて吐き出す様な、大きな溜息を吐いた。

「まったく、貴方と言う人は……」

 呆れ果てた、と言うよりも、諦めている、という表情をされて俺は少し居心地が悪くなったが、彼女は直ぐに真剣な眼差しを注いで来た。

「確かに私も心配はしましたが、マサトが本当に悪いと思っているなら、マリアンヌに謝って下さい。貴方はもう、軽々しく命を懸けられるような立場では無いのですから」

「そう、だよな。俺はもう、死ねないだけじゃ、ないんだよな」

 俺はしみじみと思った。

 何と重たい枷が嵌ってしまったのだろう、と。

 だけど、これは自らが望んだ結果なのだから、絶対に口にしていい事ではない。

 しかもこの枷に繋がる先にある者は、俺の生涯を懸けて守り抜かなければならない存在。

 ならば俺は、今まで以上に必死になる必要がある。

 だから、出来るだけ直接的な戦いは回避し、それでいて勝利を収める必要がある。

 そんな事を思いながら、俺とアルシェが見詰め合っていると、

「何時まで再会の喜びに浸る心算だ。それより、そいつを早くそこから引っ張り出せ。俺は早々に戦い、見極めねば成らんのだ」

 ウェンズが割って入って来た。

 遠慮、という言葉を知らないのか、奴は苛々オーラを体中から発散させて、俺達を睨み付ける。

 しかし俺は、アルシェと会話をしながら、奴の事も同時に考察していた。

 そして先程放った台詞が決め手となり、俺には奴の正体が大体分かった。

「――四竜の一人、か」

 奴には聞こえない様に小さく呟いた心算だったが、直ぐ傍に居たアルシェには聞こえてしまった様で、顔には驚きの色が乗っていた。

「マサトはウェンズ様を知って居られるのですか?!」

 俺が小声で呟いた所為か、彼女も小声で聞き返してくる。

「知らないよ。だって、会うの初めてだし」

「では何故……」

「実は俺さ、なんだか知らないけど、竜王様に目を付けられてるらしくてさ、四竜と戦わなくちゃいけないんだよ」

 肩を竦めながら、困った顔をする。

「では、マサトはウェンズ様と……」

 絶句するアルシェに俺は頷き返した。

「分かっているならば早い。さっさとそこから出て、俺と戦え」

 奴には聞こえていないと思っていたが、俺達の会話は筒抜けだった。

 空気を読まずに吐き出された台詞は、やたらと好戦的な態度を取る奴の姿勢と相まって、実に不快。

 だが俺はその感情を押し殺して、目に前にいる奴の考察を続けた。

 ガイラスは人化も出来ず人語も話せないのに、何故こいつは出来るのか、非常に気に成る。

 人語はまあ、覚えておいても損は無いだろうが、竜族は滅多に人前に出る事は無いのだから、人化を覚える必要は無いし、況してや人化しても竜族には殆どメリットは無い。

 ならば何故、ウェンズの奴は人化しているのか。

 これは俺の憶測でしかないが、こいつは誰かに人化を教わる必要があった、と見るべきで、その時に人語も教わったと見て間違いない。

 ただ、もしもこれが当たっているとすれば、戦わずに済むかも知れない。

「おい、ウェンズ。戦う前にちょっと聞きたい事あるんだけど、いいか?」

 自分の憶測を確認する為に、少々横柄な態度で問い掛けると、ウェンズの表情は一瞬だけ忌々しげに歪んだ。

「――何だ」

 それは声音にも現れていたが、俺は気付かないフリをしながら質問をぶつけた。

「ガイラスは人化も出来ないし人語も話せないのに、なんでお前は両方とも出来るんだ?」

 俺の視線と奴の視線がぶつかり合い、部屋の中に緊張が走る。

「――貴様には関係ない事だ」

 吐き捨てる様に答えた奴の瞳には、余計な事を聞くな、という威圧が篭っていた。

 そんな目で睨み付けられても、俺が動じる事など無い。

 もっと怖い目で睨まれた事あるしな。

 尤も、ここで素直に答える訳はないと俺も思ってたから、この態度は予想の範疇。

 ってか、素直に答えたら俺の方が驚く。

「んじゃ、後でドルゲンさんにでも――」

 俺がドルゲンさんの名――オラス団長の本名――を口にした途端、何時の間にか近寄った奴に胸倉を掴まれて、直近で睨まれた。

 唇がくっつきそうだぞ、おい。

「貴様、奴の居場所を知っているのかっ!」

「知ってる、と言ったら?」

「教えろ。今すぐ」

「何でだよ?」

「貴様が知る必要は無い」

 この感じからして何か因縁がある、と感じた俺は、もう少し弄る事に決めた。

「ほっほう。ドルゲンさんに勝ったこの俺が、知る必要の無い事か。出来れば是非とも聞きたいんだけど、駄目かな?」

挑発の心算で放った俺の台詞に、奴の表情は驚きに変わり、唇を震わせて何かを紡ごうとするが、俺はそれをさせなかった。

「それともあれか? ガイラスが全力で放った竜砲を正面から打ち破った俺には、話すに値しない、とかかな?」

 もしこれをガイラスが聞いていたら怒るかもしれないけど、この場には居ないから何の問題も無い。

 あ、でも、怒らないで肯定するかもしれない。あいつ、俺の勝ちだって言ってたし。

 しかし、奴には大問題だった様だ。

「ば、馬鹿なっ! 人間如きが、ガイラス殿の竜砲を破れる訳がない!」

 余りにも喫驚過ぎる話だったのか、声を荒げて叫んでいた。

 その時俺は、奴の言葉の中にある感情が篭っている事を、見逃さなかった。

「お前、ガイラスよりも、弱いな?」

 即ち、尊敬の念が。

「な、何を根拠に……」

 俺の一言で狼狽えてくれたお陰で、奴の事は大体分かった。

 ウェンズの力はたぶん、ガイラスよりも弱いがオラス団長とはほぼ互角、と見ていいだろう。

 ただ、四竜の地位に就いている事から鑑みると、潜在能力はオラス団長よりも上の筈。だが今は、自身の能力を引き出し切れて居ないからオラス団長と互角、と推測出来る。

 それと奴の正体に点いてだが、俺の傍に一瞬で近付いた事が、決定的な答えを教えてくれた。

 だから俺は、確信をもって言い放った

「お前、風竜だろ」

 口角を吊り上げて奴の正体を継げる。

 その途端、奴は俺を離すと呻く様な声を上げて、

「貴様、最初から俺の事が、分かっていたのか……」

 得体の知れない者を見るような眼差しを俺に向けながら数歩後退り、愕然とした表情を見せていた。

「いいや、最初からって訳じゃない」

「ならば何時から――」

「今までの会話とお前の態度。それと、アルシェとお前が同時にここに現れた事と、さっきお前が俺の傍まで一瞬で近付けた事が決定打、だな。後はこれらの事実があれば、最後はここを使って推理すればいいだけさ」

 俺はトントン、と自分の頭を指で突いた。

「馬鹿な……。たったそれだけで……」

 呆然と呟く奴に、俺は溜息を吐きながら、更に言ってやった。

「俺の仲間にはな、ベロ・ケルスが居るんだよ。あいつと対等の立場で付き合うには、馬鹿じゃ出来ねえって事くらい、お前も知ってんだろ?」

 竜族は長命な種族だから、教授の昔の名前を言えばウェンズにも理解出来ると思い口にしたら、奴は壁に張り付いて震え始めてしまい、俺の目を丸くさせた。

 あれえ? もしかして選択肢間違えたか?

「奴は……、奴がまだ、生きているのか……」

 蚊の無く様な声で呟きながら震えている奴を見た瞬間、俺は少し不思議に思った。

 こいつはガイラスに比べれば未熟っぽいが、それでも四竜と呼ばれ、竜王に次ぐ力を持つ者の一人で、本来ならば魔獣である教授を恐れる事は無い筈。

 なのに教授の昔の名を出しただけで、ここまで恐れている。

 と言う事は――。

「お前、もしかして昔、ベロ・ケルスに負けた、のか?」

 俺としても確信があった訳じゃない。只なんとなくそう思っただけ。

 だが、奴は首をゆっくりと縦に動かして肯定をし、流石の俺もこれには驚かされた。

 だって、教授が竜族と戦った事があるなんて、俺は知らなかったからな。しかも、四竜の一人に勝つとか、アレの強さってどうなんってんだ、と叫びたい気分だ。

「ったく、あのアホは、何やってんだよ……」

 呆れを声に乗せながら吐き出し、そのうち教授の過去を聞いてみる必要が有るかもしれない、と俺はしみじみと思った。

「まあ、今は誰彼構わず戦いを挑むとかしないから、安心しろ。寧ろそんな事やったら、俺が全力でぶっ飛ばすから大丈夫だ」

 ウェンズを安心させる為に言った台詞は、俺の予想とは逆効果を与えてしまった。

「き、貴様は――奴よりも、つつ、強い、というのか?!」

 振るえる声でそんな言葉を吐き出し、青褪めた顔を向けて来る。

 ここで強い、と返す事は簡単だ。しかし、本当に俺の方が強いのか、と聞かれると、大いに疑問が残る。

 無制限の全力戦闘なんてした事ないし、実際にやったらたぶん、俺は負ける。

 経験が余りにも違い過ぎるから、並大抵の攻撃は全て防がれるか、無効にされるだろうし、唯一勝ち目が有るとすれば近接戦闘くらいしかない。が、そこに持ち込む前に倒される可能性の方が、かなり高いと思う。

 なんせ魔法に関しては、教授の右に出るものは居ないからな。

 魔法の撃ち合いに限定すればウェスラの方が強いだろうけど、だからと言って教授が彼女と遣り合っても直ぐに負ける事は、まず有り得ないだろう。

 だから俺の答えは、

「互角、だな」

「ご、互角、だと?! ならば俺では、貴様に勝つ事など出来ぬではないか!」

 何故か一転して奴の態度は変わり、怒鳴り始める。

 ってか、ここは威張る所なのか?

「貴様は一体何なのだ! 豚頭鬼(オーク)の一氏族を従え妖鳥を配下に置き、あまつさえベロ・ケルスすらも仲間に引込み、大鬼の雌を侍らせ人の妻をも大量に抱える。しかもあれだけ痛め付けられても、吸血族すら霞む回復力を見せ一日で復活し、この俺すら凌駕する強さを持つとは、本当に人間なのか?!」

 えと、事実を事実として改めて言われると、いくら俺でも返答に困るんですけど……。

 俺はアルシェと顔を見合わせ、苦笑を漏らす。

「何がおかしい! 貴様、俺を馬鹿にしているのか?! それとも相手をするに値しないとでも思っているのか?!」

 何を勘違いしてんだよ、この馬鹿は。

「いや、そうじゃなくて――」

「では何なのだ! もしや侮蔑しているのではあるまいな! もしそうだと――」

 奴がそこまで言った時だった。

 扉が勢い良く開き、小さな姿を吐き出した。

「おとーさん、もうだいじょーぶ?」

「パパ、元気になった?」

『我は超頑張った! 褒めるのだ、我が強敵(とも)よ!』

 それはウェンズの存在を希薄にさせるべく派遣、というか勝手に現れた、俺達の中でも一、二を争う空気読まない集団。

 何時も元気なライルとスミカに、常にオマケで付いて来るガイラスだった。

「おう、もう遊べるぞ」

「やったー!」

 ライルが飛び上がって喜ぶと、

「ライルちゃん、もうすぐお夕飯だから……」

 スミカが諌める。

『我は終に遣ったぞ! さあ、我が強敵よ! 夜通し語り明かそうぞ!』

 ガイラスは俺の事を気遣う素振りすら――、

「って、おい! 何時の間に話せるようになったんだ、おまえ?!」

 俺は、何気に人語を話していたガイラスに驚いた。

『我が本気になればこの程度、三日あれば十分!』

 鼻息も荒く、ガイラスはライルの肩の上で胸を張る。

 ただ、三日あれば十分、と聞いて俺は教授の事が少し心配になった。

「教授は、どうしてる?」

「せんせいはまだ寝てるー」

「すっごく(うな)されてるけど」

 ガイラスの変わりに、ライルとスミカが答えた。

 二人の話とガイラスの話から要約すると、教授はここ三日間、昼夜問わずにガイラスに人語を教えさせられた、と言う事。

「そりゃ、ぶっ倒れもするよなあ……」

 俺は気の毒な教授の冥福(?)を祈りつつ、ウェンズが異様に静かな事に気が付いた。

 なので顔を向けると、ガイラスを指差して、水面で酸素を求めて喘ぐ金魚の様に、口をパクパクとさせながら、目を見開いて驚いていた。

『む? どこを見ているのだ』

 俺の視線が自分に向いていない事を察したのか、ガイラスはそんな事を呟き、俺が見ている方へと顔を向ける。

『むむ? お主はもしかして――、ウェンズ坊やか?』

 ガイラスの放った坊や、の一言でウェンズが息を吹き返した。

「が、がががっ、ガイラス殿! 貴殿が何故そこに――」

『今の我は、ガイラスではない! ライル殿とスミカ殿の同胞、チッピである!』

 スタンバイ状態から復帰したウェンズの放った声を掻き消す大音声で、ガイラスは阿呆な台詞を口にする。

 こいつ、このままペットで居る心算なのか? だとしたら、竜王に食費請求しないと不味いかもしれないな。

「ガイラス殿は何訳の分からない事を言っているのですか! それと、坊やはお止めください!」

 別に訳が分からないって程でも無いと思うけど、坊やは確かに違う気がするから、同意してもいいかな?

『我よりも若い者に、坊やと言って何が悪いのだ! それと、我はチッピである!』

 うん、ガイラスは頑固親父なのか。こりゃ、ウェンズに勝ち目はないな。

「ですから――」

 そんな二人の遣り取りを眺めながら俺は、もしかして竜族って、少しお(つむ)が足りないのでは? と思っていた。

 オラス団長は人の中で長い間生きているから、あの二人よりもマシだけど、それでも単純な部分が有る事を考えれば、やっぱり竜族はどこか抜けているのかも知れない。

 そう考えると、物凄く身近に感じられてしまった。

「って事はだ。竜族は種族全体の基本特性が、坊やだから、なのか」

 ついそんな言葉が漏れてしまった。

「俺は坊やではない!」

『我は坊やではない!』

 二人から否定を頂戴するも、直ぐに不毛な争いへと戻っていく姿を見ながら、あの有名な台詞を思い出していた。

 ホント、坊やだな、こいつら。

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