プロローグ
お待たせ致しました。
更新再開で御座います。
頬を撫でて行く心地よい風を感じながら俺は、眼下に目を馳せる。
遠くには緑の海、と形容したくなる広大な森がデュナルモ山脈の中腹まで広がり、強大な蛇が蛇行するようにして流れる大河は、川面に日の光を浴びて眩い煌きを放つ。
足元では麦穂が黄金色の絨毯を作り出し、その間を縫う様に細い筋が走っていた。
無論、その筋は街道だ。
数ヶ月前には俺も馬車に揺られて通った道を、蟻の如き小さな姿が頻繁に行きかっていた。
目線を上げて周りを見渡せば、木と籐の様な物で作られた籠に体を固定し、妖鳥に吊り下げられて雄大な空を行く風変わりな集団。
それが緩いV字を描き、渡り鳥の如く南下する。
下から見上げれば何かの鳥にしか見えないだろうが、間近で見たのならば腰を抜かす事請け合いの光景だ。
そんな事を考えながら眺めている俺もその仲間の一人で有り、V時の頂点に位置している云わば、リーダー的存在。
そして、水平に動かしていた目線を上げれば……。
「――何時見てもでっけえなあ」
エリーの巨胸が揺れていた。
空を行く彼女達に取っては大き過ぎても良くない筈なのだが、エリーの胸は、そんな事は関係ない、と強く主張している。
二つの双丘はまるで、俺を誘っているかの様に翼の動きに合わせてふにょんふにょんと揺れ動き、それをニヤケながら眺めていると段々と良からぬ衝動に駆られ始めた。
ここでそれを爆発させる訳にもいかず、ぐっと堪えて俺はその衝動を押さえ込む。
尤も、下の息子は元気に起き上がり始めてしまっていたが、そこは皆からは見えないので問題ない。
だが、顔だけはそうも行かず、最も見られてはいけない人物に目撃を許してしまっていた。
「あー、おとーさんがすけべな顔してるー!」
「してるー!」
子供達の声を聞き、俺はハッとして顔を元へと戻すも時既に遅し。
「あなた! 降りたらお仕置きですからね!」
「わっちの目が黒いうちは、浮気は許しんせん!」
拳で語る事が得意なご両名――ミズキとハズキに気付かれてしまった。
「あ、や、こ、これは、浮気じゃないから!」
俺は慌てて否定を試み、無罪を主張する。
「私達以外の女に見惚れる事自体、浮気と同じです!」
「ミズキさんの言うとおりでありんす」
淡い希望は打ち砕かれ、俺の罪状は決定してしまった。
ってか、他の女性を見ただけで浮気確定って、酷くないっすか?!
「いいじゃねえかよ。エリーの胸見てたって……。何かする訳じゃないんだから……。それにエリー達は隠さねえし、見るなって言う方が無理だろ」
俺は彼女達に聞こえないよう小声で呟くが、約一名、それが通じない相手が居る事を完璧に失念していた。
「ミズキおかーさーん! おとーさんがなんかぶつぶつ文句言ってるよー!」
「わっ、ばっ、ちょっ、ら、ライル! 言う――」
「半殺し確定、ですね」
「でありんす」
そうして俺の罪は重くなって行くのだった。
またもやゆっくり更新になるかと思いますが、なるべく早めに更新出来る様がんばりますので、気長にお待ち頂けると幸いで御座います。




