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二話 疑惑

 X-ウイルスは発症して人間を殺した三日後に、X-ウイルス生命体として活動を開始する。それはX-ウイルス自体がその人間の死体を動かしている状態であるが、この状態になると、普通の人間と変わらない知能と能力を持つ。このX-ウイルス生命体として活動できるのは、もともとの人間がそれに耐えうるだけの素質がなければダメらしい。

 X-ウイルスが発症すると、理性を失い、周りの人間たちを襲いだす。そして、発症した人間。俗にいう闇堕ちに襲われた人間は3日以内に新たな闇堕ちとなる。

 そして、ここからが大事な話。X-ウイルスの出処である。それはどこかに本体があり、その本体を殺すことで、X-ウイルスは全て消滅するという。これはあくまで仮説であるが、最も可能性が高く、最も希望的な仮説である。




以上が僕が政府に入り、得た知識である。そして、僕たちが壁の外に行く理由。それが最後の仮説の続き。外にいるであろう本体を殺す。その本体に当たるまで僕たちは戦い続けるしかないのだ。




そして、僕は僕を政府に連れてきた人と外に出ることになった。その人の名前はロヒモ=トラウールというらしい。


「俺はな、家族を壁の中に残してる。だから、壁の中での仕事も頻繁にやってる。まあ、政府の中のほとんどがそういうやつばっかりだ。ただお前みたいに身内がいない奴は、基本的に壁の中には戻らない。もう思い残すことはないな?」


「はい」


きっとこの人には分からないだろう。僕のように生まれてきたことすら、失敗だったと思うこともきっとこの人はない。


そして、僕らは政府の人間しか知らない地下道から壁の外に出た。

壁の外を知らない僕は、変かもしれないが気持ちが高揚していた。


「今日はお前の能力を引き出すための補佐のために外に来た」


その時だった。トラウールが血を吐いた。背中に何か刺さっている。


「勇人……逃げろ…」


トラウールが倒れた。僕らの背後にいたのは、一体の闇堕ち。しかし、いつも壁の中で見ていたのとは違った。

一応、二足歩行をしているが、僕にはどうしても人間には見えない。それはただの化物だ。戦うと覚悟していたはずなのに、僕は足が震えて動けなかった。その化物を見たままただ立ち尽くす。

二足歩行の化物は遠い位置にいる。トラウールはどうやって襲われたのだろう。さっきまでトラウールの背中に刺さっていたものはなくなっている。

あ、こんなところに穴が……


その時だった。僕の左脇腹を何が貫いた。その何かは下から出ている。


「そうか。あいつは地面の下から伸ばして……」


僕は地面に這いつくばっていた。さっきの化物が僕らの近くまでやってきた。トラウールはさっきの致命傷を負ったらしく既に気を失っている。

そして、化物は僕の目の前でトラウールの頭に被りついた。どんどん貪り散らかされていく。


これが闇堕ち……。そして、このままだと次にああなるのは、僕だ……。

そして、化物は僕の首を掴み持ち上げる。


「我モ、コレデ王ニナル!!」


王? 何のこと言ってんだ?


そして、化物は俺の頭に噛み付いた。しかし、噛み付く直前、俺は化物から弾き飛ばされた。化物も吹っ飛んでいる。体に激痛が走る。俺は激しい痛みの中、うっすら目を開ける。

辺りには黒い羽が舞っている。それはまるでカラスの羽だった。


そこで僕は気を失った。次に目を開けた時、僕は白い壁の中にいた。四方が白い壁の中に囲まれた白い部屋の中にいた。


僕の他に一人の女がいる。その女は涙を流しながら、僕を見ていた。


「何があった?」


「え?」


「何があった‼︎」


 この女は何を言っているのだ。今の状況を一番知りたいのは俺だ。僕は化物に食われる直前、化物から弾き飛ばされた。そして、周りには黒い羽が舞っていた。僕はそれしか知らない。


「トラウールは!!」


「トラウール……」


 そうか。トラウールはあの化物に食われたのだ。おそらくあそこにはその残骸しか残っていなかったのだろう。

 そういや、あの化物はどうなったのだろう。あの場所から結局、逃げたのだろうか。


「お前が殺したのか!?」


「?」


「あそこにはお前以外いなかったはずだ。闇堕ちがいた痕跡もない!!」


「そんな……僕たちは闇堕ちに襲われて……」


「嘘をつくな!!」


 その女は本気で僕にそう言っていた。僕は知らない。闇堕ちはただ逃げたはずだ。闇堕ちの痕跡がない? じゃあ、この僕の腹の傷は誰がつけたというのだ。

 ……腹の傷?


「あの……すいません。僕の腹の傷って誰が治してくれたんですか?」


 ない。それも痛みがないどころか、傷すらもない。誰かが特殊な能力で治してくれたのだろうか。


「腹の傷だと? そんなものはなかった!! 話を逸らすな!! なぜ、トラウールを殺したんだ!!」


 なかった? そんなことはない。僕の腹を貫通したあの感覚は間違いなく嘘ではない。だが、なぜなんだ……。


「僕は……殺してなんかない」


 やっぱりだ。僕は人間に関わりたくない。関わってもすぐに、こうやって疑われる。人と関わるなんて間違ってたんだ。


 すると、目の前の女の表情が変わる。畏怖と軽蔑の視線で僕の方を見ている。やっぱりだ。やっぱり僕は人間が嫌いだ。人間も闇堕ちもすべて死ねばいい。


 僕の意識はそこで途切れた。その後、どうなったのか僕は知らない。次に僕が目を覚ますのは再び白い部屋だったが、今度は両手両足を拘束され、ベッドの上に寝かされていた。





 



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