野外活動2
「まったく。はぐれたかと思ったら先に車に戻ってるってどういうことだよ!」
鎮がびしょ濡れで助手席でシャツを絞っている。
「はやと君は濡れなかったー?」
「へいき」
後部座席にちょこんと座ってるのは「繁茂神分神羽夜」
なぜか、「伊藤はやと」と鎮に認識されている。
保護者が亡くなって遠縁のうちの母が引き取った。と認識されているらしい。
書類の手続きはしに行かなきゃいけないらしいけど。
なにせ『戸籍? 何ぞ?』とおっしゃったもんなー。
北の森に縛っていた錠が破壊され、自由に動けるのだからついてくると言ったのだ。
錠。アタシが踏み割ったアレだ。
あと、最近の森は変化が激しくて居心地が悪いというのもあるらしい。
『信仰』と『和』が不足しているらしい。
ゆえに『力』がない。と嘆いた。
森を焼かれでもしたら『祟り神』になって消滅するまで力を振るえるが。と怖いことを告げられた。
早い話、自分より強い新参者がいっぱいいて立場がないから森には居たくない。
って言う超訳が可能かと思考したらにらまれた。図星らしい。
ぷぷ。ちょっとかわいい。
『奉じ、奉れ』
と言われても無理。
「隼子ちゃんは濡れなかった?」
「車にたどりついたとたんだったから。最近の天候の変化は怖いなー」
「まぁいいけど」
微妙に機嫌が悪い鎮。
一人ゲリラ豪雨のなか、車のところまで戻ってきた。
たぶん、その寸前まで探してくれていたんだと思うとさすがに罪悪感がある。
「はやと君、そこにあるダンボール漁ってー。たぶん、タオルあるからさ」
「はい」
鎮の指示に従って、ダンボールを漁る羽夜。
「さんきゅー」
ふとこっちを見て、
「隼子ちゃん、シートの濡れぐらいは勘弁してくれよなー」
そう言いつつ、上半身を晒す鎮。
まぁ、濡れてるから仕方ないんだけど。
「タオルってこれ?」
「おー。サンキューって隼子ちゃん、この準備いつした分だよ。埃っぽーい」
あーもう、こうるさいっ!
ぎゃんぎゃん口論しつつ、雨がやむまで車内で過ごす。
羽夜は大人しくしていた。