緋色の少女
8/23
夏休みも終わりに近づき読書感想文のための課題図書に人気が集まり、宿題の追い込みをする児童や学生が地味に騒がしい。
そんな金曜日。
今の受付はお局様と同僚の都竹君。
ざわめきが不意に遠のいた。
利用者の視線は出入り口に向いていた。
新しい入館者の姿を見てちょっと納得。
人目を引く美少女が二人。
そう、人離れした美貌。
そしてツインテールの赤毛はまさに真紅。
ちょっと浮世離れしたゴスロリ姿。あーゆーのって着る人選ぶよね!
横についている人懐っこそうなヒトは……うん。いい胸してる!
夏の薄着が周囲の目の毒だ!
まるで、生きている人間じゃないみたい。
そんなロマンに浸っていると赤い目と視線が合った。
あ。
絶対カラコンじゃあんな色でないや。
幻想的な美少女っていいな。
うっとりと見つめてられる時間の終わりはいつだって唐突で無慈悲。
「伊藤さん」
「あれ、どうかした都竹君?」
「仕事しましょう」
すっと視線で受付を示す都竹君。
お局様が軽くため息をこぼしていた。
「だって。かわいい入館者だったんだよー。日本語わかるのかなー? 声かけたほうがいいかなー?」
「わからなかったら聞きに来ると思うよ?」
あくまで仕事にもどれと主張する都竹君。
うん。正しいのはわかるんだけど、
「ゆーざーふれんどりーも大事よね!」
少女たちは本を探してるという。
こうまのしょ? と疑問符と共に首をかしげると『降魔の書』だと訂正された。
わぁ。
素敵に意味ありげなタイトル。
『魔導書』ぽい。でもその系のタイトルの本あったかなぁ?
海外ファンタジーや、最近はやり系かと悩んでいると『わかりにくいもので』『特別』なものだし、大丈夫と協力は遠慮された。
さすがに押し売りはできない。
「ユーザーフレンドリーも大事ですが、利用者は平等です。ちゃんと規定の仕事をしてから行動してくださいね」
「もうしわけありませんでした」
閉館後、注意をいただきました。
反省。
ベルちゃん
リズちゃん
お借りしましたー。