後始末
主様の声に従い、主様の結界の上にもう単、結界を掛ける。
はしゃぐミラの気配と熱気が強い。
主様はわがままを許すタイプではありますけど、と思うのです。
闘いが気にならぬとは言いませぬが命じられたのは警戒。
気配を殺し周囲を伺う。
住まいの方は静かだ。
結界のうちより、熱気を感じる。
静まったり昂まったりを結界越しに感じる。もしかして、本体なのかしら?
もふもふを堪能できないのは少し残念。
でも、力をそう解放してるというのなら、 少し結びを強めましょう。
ひらりとベールが風に遊ばれる。飛んでしまうと困ります。
一息つき、結界の上で座り、眺めるこの町の灯りはキレイです。
遠すぎもしない山はゆるく赤みを帯びかけていて不思議。紅葉というのだと以前、教えていただきましたけれど、よもや実物を見ることが叶うとは生きていると何があるかわからないと思います。
時間はゆっくりと流れてゆきます。
そうこうするうちに後始末のお時間。主様からも一任されました。
念の為に仕込んでいたのが役立つのです。言ってみたいセリフだというではありませんか。
「こんなこともあろうかと」
声に出して呟いて、ほんの少し恥ずかしくなります。
誰も居ませんよね?
内におられた方々は既に移動なされております。
それでは。と心を定め薄まった結界に力を加え干渉します。
「いきます」
結界を引き剥がし、海上にて塵へと分解いたします。
これで浜には何の傷も残らない。
ゴミは一緒に処理した方が良かったのかしら?
ひらひらと夜風に揺れるビニール片や空き缶が少し目につきます。
それともうひとつ有りました。
「ミラさん。夢中になりすぎですね」
それは怯えを含ませびくりと震える。
「貴女も、欲張らなければよかったのに」
それを拾い上げ、海の水にさらしましょう。
『魔女』に向けた『祈り』と『願い』は海へと還しましょう。
さぁ、これでお片づけは終わりです。
月のない朔の夜。
そろそろ日付けの変わる頃でしょうか。
少し、散策して抜け殻置き場を決めましょう。
ほんの少し、気になったのでゴミ拾いをしましょう。
しばらく暮らす場所だもの。
ゴミは少ないのがいいわ。
「シア、空き缶はこっちでビニール系はこっちね」
「はい。主様。分別は大事ですよね」
でも、空き缶は拾っていません。拾ったほうが良いのでしょうか?
だって、とてもヤニくさい物が多いのです。