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11/3 朔の夜2

ミラ視点より途中で羽夜に

 ああ。嬉しい。

 強い相手と戦える。

 技を力を高めることができる。


 くぅるるる


 ああ。喉が鳴る。

 漆黒の装いのおねーさんからも熱を感じる。

 向かい合い、互いの動きをつぶさに見合う。

 まるで気分は恋のダンス。

 これから行うのは火遊び。

 二人で行う心躍る火遊び。


 来いと手を差し伸べられてるように感じる。


 ああ。なんて熱いの。


 パシンと熱が弾ける。きらめく焔の波状。愛しい闘いの気配。



 強い強い強い。ああ。我慢できない。


 心の高まりを止めることができない。

 ただただ熱が上がる!


「遊んでくださいまし!」


「くるッす♪」


 砂を蹴り飛び掛る。


 狙うは腕。右腕を狙い飛び掛ったが、左腕で防がれ、軽くはじかれる。

 距離が広がる。


 打たれたその力で動悸が高まる。


 ああ。強い。


「わたくしはミラ。わたくしの王の娘」


 全身が強い相手と戦える喜びで震えが止まらない。


「貴女は、お父様の敵にまわる?」


 ゆっくりと爪を伸ばす。

 このぐらいは平気。

 ではもう少し力を出しても大丈夫?

 振り返れば黒い弾丸のような膝と、手のひらが見えた。


 膝蹴りで勢い良く吹っ飛びかけたところをその手で掴み止められ、砂に押し付けられる。


「隙を作っちゃ駄目ッスよ」


 あああ。

 すごいすごい。強いんだ。

 どこまで枷を外していいんだろう?


 お互いの熱は無意味だ。

 近い属性の相手。

 すばらしい。

 この熱は互いの昂り。


「あは」


 込み上げてくる笑いが抑えられない。押さえたくない。


「すばらしいです。おねえさま」


 ああ。楽しくてしかたない。

「わたくし、嬉しくて堪りません。愉しくてたまらないのです」

 ああ。本当に。

「おねえさまに遊んでいただけて幸せです!」


 おねえさまの腹部を狙って勢いよく突き上げる。

 開放感に浸るよりも先に体を丸め飛び起きる。


 立ち上がりざま、ばしんっと砂地を打つ蛇頭。


「頭をひとつ押さえたくらいでは自由は奪えません」

 掠りはしたが深く打ちつける前におねえさまの体は避けに入っていて打ち飛ばしたというよりは跳び避けられ、距離をかせがれた状況だ。

 悔しいが嬉しい。

 手加減無用。

 これほど嬉しいことはないじゃないか!


「やるッすね」

 絡まる視線。

 その表情は愉悦。

 きっと私もそうなんだろうと思う。





◇◆◆


 羽夜視点


戦闘中毒者バトルジャンキーめ」

 彼が呟く。


 その想いの大半を占めるのはおそらく、『暑い』であろうと思う。


 どうやらミラもあの黒羽のおねーさんも共に焔属性系の存在らしかった。

 ゆえに、現状、結界内の熱量が高まっているのがわかる。

 事実、熱い。砂が焼けてるのではないかと思うほどだ。


 ずるりと新たに鳴動が増えたのを感じる。

 驚いて見上げると小さく笑いかけられる。

「温度調整の術をね。海水温度を上げさせるわけにはいかないからねぇ。夏も終わってかなり涼しいのに熱中症なんてシャレにならない」

 告げられ納得する。



 見ている限りはミラよりもおねーさんの方が優勢に見える。


 睨み合いに焦れて先に掛かったのはミラ。

 踏み切り、巻き上がる砂に火の粉が散っているように見える。

 おねーさんの右半身に向かって仕掛けるものの半身を引かれ、軽く飛ばされる。








 だというのに

 嬉しそうに笑ってるのが吾には理解できぬ。


 次に至る前に膝で打たれ衝撃を逃がすこともできぬままに浜に押さえつけられる。


 明らかな劣勢。

 それなのに、


「あは」

 押さえ込まれた状況からこぼれる笑い。


「すばらしいです。おねえさま。わたくし、嬉しくて堪りません。愉しくてたまらないのです。おねえさまに遊んでいただけて幸せです!」


 するりと伸びた尾がおねーさんの下から強く打ち上げられる。

 打ち上げられ、それでも距離をとった位置に回転しながら着地する。


「やるっスね」


 二人の戦う女が笑いあう。

 ついた砂を払うでなく、相手だけを見据え、唇を舐める。

 手ごたえを確かめるように手や体を軽く動かし、余裕を含ませる笑みをその口元に這わせる。


 遠目に見てる吾としてはそろそろ『恐ろしい』を越して『理解できぬ』から『スッゲー』へと変化を遂げている。


 戦いというものは演武というものもあり、武は舞に通じるという奴で超えるべきを超えたソレは美しい光景を導き出すものなのだ。


 うむ。

 安全圏で見る分には好きかな。である。



「……っつい」


 ん?


 見上げる。


 袖口から身を乗り出す蛇と目が合った。

 その蛇はするりと海水に沈む。

 見ていると戻ってきてするりと消える。

 一拍。

「いやぁ、人間の耐久温度をもう少し考えて欲しいよねぇ。非戦闘員だって言ってるのにね」

 さりげなく体温調整と水分補給であるか?

「汝も非戦闘要員であったか?」

 意外である。

「海、潜っていい?」

 問われ、ちらりと海を見る。そして戦いの場を見る。

 吾と汝、どちらかの生存?


「冗談だよ。本気にしなくて大丈夫」

 心を決め応えようとしたら撫でられた。


 そしてほぼ同時に 


 二人の戦いから急速に熱が引いた。

 戦いの熱が引いたわけではなく、現実的に温度が低下していっているのだ。


「ちょっと熱くなりすぎたッスね」

「おねえさまの焔熱と併せるのがつい心地よくも楽しすぎました」


 あやつら暑がっておらぬ!!


 苦情に対応しただけであろ!?


 双方気持ちよく笑いおって!

『悪魔で、天使ですから。inうろな町』より緋辺・A・エリザベスちゃん、お借りしております。

http://ncode.syosetu.com/n6199bt/

多分、もう少しお借りいたします^^

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