おやすみなさい
あー。
なんで、こうなったかなー?
――――バカであろ?
最近、近代会話の上達したはやとの心話が届く。
うん。
わかってる。
バカだからね。
考えられないんだなぁ。
好きだしね。
わかってる。
その好きじゃないことはわかってる。
でもね。
放っておいちゃダメだと思っちゃったから。
はやとは『嘘』は嫌い?
――――……好きではない。だが、沈黙にも価値は存在しうる。
価値のある沈黙かぁ。
ねぇ。
はやと。
――――ぅん?
いい夢見せてあげてくれない?
そのぐらいできるんでしょう?
――――……。
お願い。明日、モンブラン買ってあげるから。好きでしょ? 甘い物。
お酒の匂い。薄暗い部屋。
お酒を飲んでいたのは私。
静かに荒れている空気に呑まれたのは私。
ねぇ、はやと。
どうして悲しみは生まれるのかな。
優しく嬉しいだけじゃダメなのかな。
――――誰しもの望みうるものが等しく一つであれば我が物とせんと奪い合う。
そして心は等しくは無い。
お前がいとおしく思おうが他はどうであろうな?
同じようにいとおしく思っていようがその動きは等しくはならぬであろ?
吾は変化を厭うわけではない。
差異を厭いはせぬ。
厭いはせぬが解せぬ差異は時に恐ろしい。
はやと?
――――吾は弱い。それは時が削っていったのが『神力』だけでなく『こころ』もだと知れる。
ひとりの暗い時間が長かった。
ただそれだけであるにな。
寂しかった?
ひとりは悲しいね。
もうひとりじゃないよ?
このうろなでひとりでいるのはきっと難しいよ?
みんながどこかで見ていてくれるの。
困ってたら手を差し伸べてくれるの。
私はこの町が大好き。