うたかたの夢。甘い誘惑
20130916
「古本屋夢幻。結構本の種類は惹かれるものがあってよかったですねー」
休憩時間に自転車ダッシュして見てきたらしい都竹君。
やっぱりみんな本は好きよね。
「やっぱり手に入れにくいマイナー青背があると手がこう、動きます」
都竹君は海外SFとかの海外作家の作品を好む。
たまに遊びに来た涼維君とこっそりはしゃいでたりする。涼維君は宇宙船モノが好きだから話が合うらしい。
その様子を隆維君が『拷問全書・歴史に見る技術』を見ながら観察していた。
何読んでんのっと心で突っ込んだことを思い出した。
夢幻は夏休みも末頃に商店街そばにできた古本屋さん。都竹君情報によると穏やかそうなおじいさんが店主らしい。
はやとと暮らすことになって、行きたいと思いつつ、なかなか行くことができない状況だ。
ま。見ると欲しくなるから行かないのも正解かなとは思う。
読むものは結構あるし。
それでも、行きたいという思いはあるのだ。
でもなー。
あっついんだよねー。残暑が。
今日もお天気よいしな。
はやともうろな北小に通うようになって半月。
ちょこちょこ、鎮に教えてもらっているおかげで、学力自体は遅れてはいるけど、読み書きはとりあえず間に合ってるぽい。
問題は算数の必要性をあまり理解できないところかなぁ。
私も好きじゃないけどー。
「うし。宇美んトコ遊びに行こう。ついでに夢幻も覗くか!」
ぶんっと体を動かし、動きやすい服装に着替える。
宇美んところで動物と戯れて、信にーからかって高原の澄君を田中先生ネタでいじってから古本屋に向かう。
平日昼間なだけにあまりお客のいない時間。
本の匂いと手を入れられて間もない内装の匂いが混じっていてまだ新しい感が抜けないお店。
一歩、踏み込むとそこは宝箱のようでドキドキする。
気になる本の背表紙に触れタイトルを確認し、値段確認で渋いため息が出る。
ちょっと呑みに行ったり、車のメンテで予算がない。
もちろん、不当価格だなんて思っていない。
どちらにしても手に入れるのは無理だろう。
せめて、とぱらぱら眺めるだけで我慢しておいた。
本気で速読や、記憶術を身につけたいなぁ。
ぱっと見ただけで覚えれて模写できたら素敵だ。
ああ。そんな技能が欲しい。もちろん自分が楽しむためだけ活用で!
「いらっしゃいませ。お嬢さん」
お求めの物は見つかりましたか? と柔和な笑顔で語りかけてくれるおじいちゃん。
きっと、都竹君が言っていた店長さんだろう。
「おっ邪魔してますー。欲しいものはあったんですけど、ステキ値段で手が届かないですー」
えへへと笑って頭を下げておく。
妄想してるトコ見られたかな?
ちょっと恥ずかしい。
もう一度値段を確認しておく。
ついでに、他の気になる本も。
きっと全部いきなり売れてしまうような状況は想定しづらいし、
の、呑みの回数を減らして、車使う回数減らして、携帯の支払い分はキープして、母さんに頼み込んで旅館掃除バイトさせてもらって、秋冬の服の購入、控えて、一冊ぐらい、入手できるかなぁ?
よし。
「給料日過ぎたらまた来ますねー」
いつでも遊びに来てくださいね。と微笑むおじいちゃん店主さんに手を振って店を出る。
九月といっても快晴のこの日はまだ暑い。
まぁ、暑いんだけどさ。
町役場前から地下鉄に乗り、うろな北東で下りる。
スーパーに寄って買い物をする。
「アイス。アイス。アイスー♪」
買うものを買ったらあとはダッシュで帰るだけ。
とける前に帰らなくては。
今日はいい日だったと思う。
『悠久の欠片』より古本屋 夢幻
店主 皇悠夜さんをお借りいたしました。
http://ncode.syosetu.com/n0784by/
『"うろな町の教育を考える会" 業務日誌』より
ホビー高原の高原直澄君、田中先生、スーパーをちらっとお借りいたしました。
http://ncode.syosetu.com/n6479bq/