お師匠からあなたへの手紙ー2
親愛なる、弟子の友人へ
やぁ、君に送るのは二通目だね。あれから、調子はどうだい。こちらは順調に足掻いているよ。君を助けるために、弟子には内緒でね、方々のつてを使っている。こう見えて、顔は広いんだよ。バカ弟子はバカにしてくるんだけどねぇ。
おっと、脱線したね。
君は期日を教えてくれていなかったけどね、悪いけどこちらで調べさせてもらったよ。怒るかい?
でも、ごめんね。こちらも足掻いて、決められた運命ってやつを覆したいんだ。だって、理不尽だ。まだ君は十代半ばなんだよ、これからまだ見ぬ未来が広がっているんだ。これから会う人、これから迎える出来事、それがすべて奪われるなんて。しかも、事故とか病で突然死ぬんじゃないんだよ。こんなことって、あるかい?いや、ないよ。
だから、こちらは足掻く。こちらのやまない雨とそちらのひでりが関係あることまでは掴んだんだ。
そろそろ、こちらはやばい。山津波が起きている地域もある。心配しないでくれ、君の愛するバカ弟子はちゃんと師匠であるあたしが守るから。
この手紙は読んだら炭になるまで燃やして破棄してほしい。万が一ってことがあるからね。
追伸
バカ弟子、君からの手紙をさっき読んでいた。
君は、結婚とごまかしたの?間違いではないけど、他のごまかし方もあったんじゃないかな。帰るといってきかないバカ弟子は止めるのも大変だよ。
そしてね、皮肉なことに自覚したようだよ、バカ弟子。遅いのにね。何がって?決まっているよ。君への気持ちさ。
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以下、手紙の封を閉じ、弟子を羽交い締めにするお師匠の心中の発言
(気づくの遅いんだよ、バカ弟子)
――そして、お師匠は暗闇のなか一筋差しこむ光に手を伸ばすため、足掻き続ける。
お師匠は“あたし”。そしてバカ弟子を羽交い締めにするくらいの怪力。さて、女性かおかまか?