お師匠宛の、お師匠の協力者からの報告の文(ふみ)
二ヶ月も、すみません。長らくお待たせしました。二ヶ月、つまってました。
以下、林 芸琳の室の窓に射られた矢にくくりつけられていた文
芸へ
君の勘は当たっていた。
あれ、は相当やばいものだ。
大昔、僕のご先祖が封じ損ねた例の黒いやつの一部だよ。
例の黒いやつは、九割がたご先祖が封じた。
でも、残りの一割は残ってしまった。
今回の刃九山の沼の神とやらは、その封じ損ないで間違いない。
なら、取る手段はひとつ。
浄化するんだ。
もう、それしかない。
封じ損ないを信奉し、にえにしていたやつを捕縛したよ。山津波が生じるほどの続き雨を呼んだのはあいつらだ。
封じ損ないのいる場所から離れた土地なら、にえを出しても気付かれにくいと考えたらしい。
バカだよ。殺人鬼はやつらだったよ。封じ損ないの力にするための雨を、にえを使って呼んだそうだ。
バカが雨を呼んで、沼地のアイツは――封じ損ないは力をつけ始めた。沼から出る日も近い。
だから、かつてのご先祖が封じた刀を君に託す。
この刀で、君がやつを封じるんだ。
眠りを起こされた火之神が、原因たるやつを滅ぼすために、周囲一帯を山火事にする前に。
君の弟子の故郷のひでり、あれは――やつがにえの雨で力をつけて臭気を放ち出したのを、不快に思い目を覚ました火之神の影響だよ。
以下、文を床に叩きつけ、怒りに震えるお師匠の愚痴と、文の送り手とは別人の協力者の突っ込み
「刀? んなもんどこにあるんだよ?!」
「あ、芸琳。何か続きがあるみたいだよ」
「は?!」
「まぁまぁ落ち着いて――なになに、“追伸、刀に見えないけど、文をくくりつけたこれが刀だよ”だって」
「嘘でしょ!!?」
こうして、お師匠は原因を倒す武器を手に入れた――刀ではなく、矢だったが。
「こんっっな短い木の細い矢で、どうしろと!!」
「倒せというんだろね」
「どうやって?!!」
さあ、どうするお師匠。




