第一話「地獄界」
ここは未知なる世界、現在では確認されていない世界…
異様な空気が流れ、様々な物が溶け出していた
とても人が住める様な場所では無い
そこに二人の男が前方から歩いてやってきた
「何で俺がお前なんかと…」
「それはこっちのセリフです、僕だって君となんかお断りです」
「仕方ねぇだろ、命令なんだから」
「…それで僕が従うとでも?」
一人は髪の色が銀色で瞳はエメラルド
いかにもチャラチャラしていた
俺口調の現代らしい言葉遣いだ
一方もう一人は髪、瞳の色が紫なのだが…
瞳だけは悲哀の色に満ちている
パッとみはおとなしい感じではあるが、結構毒舌の様だ
おとなしい敬語で話し、物腰は柔らかい感じがした
そんな二人の共通点は…人では無いと言う事
人では無い、つまりアヤカシ
アヤカシとは人間が空想で作り出したいわば妖怪
しかしアヤカシは存在した、密かに未知の世界で暮らしていた
一旦木綿や一つ目小僧?
アヤカシはそんな物では無い
外見はさほど人間と変わらない
アヤカシだと言う事を黙っていれば、通常に暮らせそうな程だからだ
だが、中身は違う
人間とはかけ離れた力を持ち、地球を潰そうと思えば簡単に潰せる
そのくらいの驚異的な力を持っていた
「いくら王の命令だと言われても、僕は王には従わない」
「おい、いつまで意地張ってるんだよ」
「意地なんて張っていません、勝手に決めつけられても困ります」
「可愛くねぇな、ホントに」
二人が言う王とは、この世界の長
簡単に言えばアヤカシの中で一番力を持つ者
その者からの命令で二人は動いているらしい
「とにかく行かねぇとまた怒られんだからよ」
「分かっています、なので早く君が開いて下さい」
「Σハッ!?俺が!?」
「君以外に誰が居るんですか、僕は待ってますから」
「クッ…本当にテメェはムカつくな」
「お互い様でしょう?」
エメラルドのアヤカシはしぶしぶやる事にした
爪で宙を切り裂くと、いきなり空間が割れた
「ほら、行くぞ」
「先に行きますから」
「なっ、お前どんだけ身勝手なんだよ!!」
オッドアイのアヤカシはもう一人のアヤカシを押しのけ、先に不気味な空間へ入っていってしまった
もう一人の男は、ハァ、と溜め息をつくと後を追いかけるようにして空間へ入った
二人が入った後、切り裂かれた空間は勝手に閉じた
―現代
所変わってここはいつも見慣れた風景が広がる
行き交うのは人間
広がる光景も街や住宅が並んでいた
そう、ここは私達が住んでいる日本
「今日のテストどうだった?」
「う~ん、教えてもらったのに出来なかった」
「じゃあネッチョリ勉強だな」
「うっ…ヤダアァァ!!!俺勉強したくねぇよおおぉぉ!!!」
彼女達は普通の人間
最初の彼女は普通の中のさらに普通の中学生
そこまで可愛いくもないし、そこまで頭も良く無く、そこまで人気も無い
逆に珍しい位普通の中学生だった
打って変わってもう一人はかなり派手な小学生
本当に小学生?と思うくらいの服装
おもにピンクを主体とした派手な服だった
ギャル服とでも言おうか
一人称は俺だが、れっきとした女の子だ
その二人は近所が近かったと言うだけで友達になった
特に理由は無く、最初はただの勉強相手
そこから進展して行き最終的には、かけがえのない友達になった
「ヤダヤダヤダヤダ」
「文句言うな、教えないぞ?」
「…頭悪くても生きて行けるから!」
「開き直るな」
話しながら帰っていれば二人はいつもの空き地についた
いつもここで二人は勉強していた
「はい、教科書開いて」
「え~…」
「ほら、今日も宿題あるんでしょ?教科は何?」
「…算数」
「算数一番苦手だったんだね、じゃあちょうど良いや、いっぱいやろっと」
「絶対ヤダ、てか分かんねぇもん」
「やらなきゃいつまで経っても分かりません」
正しい事を言われ、何も言えなくなる
勉強は大の苦手
特に算数なんて呪文にしか見えない
見てると頭がおかしくなりそうなくらいだった
実際、それで熱を出した事がある
それから一時間が経った
「ドリル一ページだけで一時間か…」
「死ぬ…もう終わりにしていい?」
女子中学生は腕時計を確認する
針が指しているのは午後六時
気が付けば辺りも暗くなってきていた
「そうだね、時間も遅いし…やめよっか」
「マジで!?よっしゃああぁぁ!!!」
「…やっぱやるか」
「ええぇぇ!!!」
「冗談だってば」
アハハッと笑うと、女子中学生は立ち上がった
ランドセルに教科書などを入れてあげると立ち上がらせてあげる
「じゃあまた明日ね」
「うん、バイバイ!!」
二人はそれぞれの家路へと足を進めた
「今日の夜ご飯は何かな~」
少女がおかしな歌を歌っていると、何やら男達が走り去って行った
その男達は手に見た事の無い武器などを手にしていた
「どこ行った!!」
「分からない、後を追え!!」
ドタドタと走り去って行く男達を小学生は不審に見ていた
すると物陰から急に強い力で小学生は引き込まれた
「キャッ!」
「黙って下さい…」
聞こえたのは男の声
優しい声だったが、息切れをして身体は傷だらけだった
口を塞がれて、身動きは出来ない
本能でも分かる、相手は…不審者
キッと睨み付けるとそれに気付いた男が少女の顔を覗き込む
ビクッと体を震わすと少女はそれから抵抗を止めた
見えたのはオッドアイの綺麗な瞳
しばらくするとどこからかとても甘いにおいが流れてきた
「(なんだろ…なんかスッゴイ…甘いにおいが…)」
すると急に少女は意識を失った
最後に見えたのはオッドアイの瞳で見つめている男の顔だった
その顔はとても…心配している様だった