豹変
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パンパカパーン。
朝、その音で起こされた。
パンパカパーン??
「おめでとうございまーす。」
「はい?」
目の前にはスーツを着た男の姿があった。
「えーとですね。あなたはー」
「泥棒ーーーかーー!!!??」
「え?」
「出でけよ!! このやろーっ!!」
「えぇっ!? あれーーっ」
男を見事なハイキックで吹き飛ばし、鍵を閉めた。
俺は19歳。
一人暮らしをしている。
「ちょっと、開けてください。」
ドンドンと扉をたたく音が聞こえる。
「あんた誰だよ?」
「天の使いです。」
「はぁ?」
「とにかく開けて下さい。」
しかたなく扉を開けた。
「おお〜〜♪ 本物だ〜。」
『天の使い』の羽を触った。
「ちょっ、あまり触らないで下さい。」
「へいへい。で、天の使いとやらが何の用です?」
「あなたに幸せを届けに来ました。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?」
「あなたに幸せを届けに来ましたって言ったんです。」
「俺に?」
「はい、あなたにです。」
「なんで。」
「あなたはもうすぐ死ぬからです。」
絶句した。俺が・・・・死ぬ?
「どこで? いつ? どうして? どうやって? なんで?」
「ちょっと落ち着いて下さい。いつ死ぬかだけ教えましょう。」
「いつだ?」
「4日後てす。」
「それ意外は?」
「教えません。」
「何で?」
天の使いはしばらく考え、
「教えたくないからです。さぁ、願いを行って下さい。」
と、言った。
「・・・・・・俺はもうすぐ死ぬんだな。」
「はい。」
「じゃ、放っといてくれ。」
「解りました。」
天の使いはすっと消えていった。
町中ー(宣告があってから2日目)
4日後に俺は死ぬんだ。
一日目、二日目。
時が刻々と過ぎていく中、俺は金を遊びに使いまくった。
どうせ死ぬんだ。あと2日後には・・・。
待てよ、2日後に死ぬってことはそれまで絶対死なないってことだよな。
男はギャンブルに出た。
あるコンビニエンスストアー(宣告があってから3日目)
「こっこれで全部です。」
店員の声は震えていた。
男は、強盗をしていた。
「本当にこれだけか・・・?」
「・・・はい。」
レジを覗き込んだ。1000円札が数札残っている。
「これは金じゃないのか?」
「・・・・あっ・・・・っ」
ズブッ。男は店員を刺して、店を出て行った。
ニュースー
アナウンサーが冷静に報道している。
「今日、午前1時52分頃、○○区のコンビニエンスストアで強盗がありました。
その時刻に働いていた店員は一人で、その店員は背中からナイフで刺されており、
午前5時08分。息を引き取った模様です。犯人は未だ逃走中ですので周辺の・・・・」
自宅ー
「ふふっ」
面白いように事が運ぶ。
死ぬのは明日。それさえ解れば問題ない。
男は、次々と犯罪に手を染めた。
ある道路ー(宣告があってから4日目)
宣告があってから4日が経った。
今日死ぬ。
だが、今日死ぬというのは良いがもうすぐ0時だ。
本当に今日死ぬのか? そう考えた刹那、ライトが男を照らした。
「来た・・・!」そう呟いた。
トラックが男にスピードを下げずに迫ってくる。
運転手は寝ていた。居眠り運転だ。
ドンッ!
トラックは男を引いた。
男は薄れていく意識の中で思った。
「あの天の使いが言っていたことは本当だったな・・・・。」
「・・・きろ!! お・・・・ろ!!」
目を開けた。意識がある。
天国か?
「お前を前科七犯で逮捕する!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」
警察署ー
「ほんとなんだ! 信じてくれ! 俺は死んだんだ!」
「はっ、何を寝ぼけたことを。お前は電柱に寄っかかって寝ていたんだよ。」
「・・・そんな! 確かにトラックに引かれたんだ!」
「・・・・。」
バタン。
刑事は取調室から出て行き、仲間に言った。
「あいつは頭がいかれてる。少年院の病院に送ろう。」
「いかれてて当然だ。人を殺す奴はみんないかれている。」
少年院の病室ー
病室と言ってもただの牢屋だ。そこへー
「お久しぶりです。」
天の使いがやってきた。
「ってめぇ!!」
殴り掛かったがあっさりとかわされた。
「嘘ついたのか!!」
「いいえ。」
「なら、なぜ俺は生きてる!?」
「死んでますよ。宣告した時のあなたはね。」
「っな。」
「あなたは多くの罪を犯した。殺す理由すらない相手に、平気でナイフをふるった!」
「・・・・あれは!!」
「私の性とでも。」
「そうだよっ。あんたが俺が死ぬ日を言ったから!」
「私は殺せとは一言も言っていませんが。」
「つっ。」
「人間はすぐに変わる。変われる。化け物でも。天使でも。」
「・・・・。」
「あなたは化け物に変わったんですよ・・・。」
「・・・・。」
「あなたには地獄に行って永遠の苦痛を味わってもらうとしましょう。」
天の使いはにやりと冷酷に笑い、消えた。
「嫌だ! 待てよ! 俺はっ!」
<font size="5">ー悪くない!!ー</font>
男は、処刑され地獄に行った。
男は今も、苦痛で苦しんでいる。終わることがない・・・苦痛で。
天と地獄の狭間ー
「いかがでしたでしょうか?」
天の使いと名乗っていたものが言った。
「ふふ、なかなかの見物だったぞ。」
「人間はあそこまで変われるとはな。」
暗やみからそんな答えが返ってきた。
「あの人間は宣告されるまで普通の子だったそうだな。」
「はい。」
「何故あの男を選んだ?」
天の使いはしばし考え、
「面白そうだったからですよ・・・。」
男は冷酷な笑みで言った。
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