第十八話『蛮勇』
「クソマス」
いつになく親権で青ざめた表情のデューク。
それに伴って他の三人もぴたりと動きが止まっていた。
何だろう、死ぬほど嫌な予感がする。
「何だクソガキ」
「これ、絶対にやらなきゃダメか?」
「絶対にやらなきゃダメだ」
「あばっばっばっばばっ」
デュークは青ざめて。
回復術師の人は奇声を発し倒れた。
気の強そうだったステラさんは下を向き震えながら杖に寄りかかっている。
戦士の人は表情は見えないけど明らかに固まってる。
地獄絵図だな。
「一週間なんかあってないようなもんだ、
短い期間でお前達を強化するにはこの手しかない―――」
なんだろう、ガーヴェのセリフに哀愁を感じる。
まさかこれ、同情?
え?
デューク達の反応が、【テシリア】という名前を見ただけで豹変した。
まだ顔も見てないのにもう怖い、何者?
「てぇことで俺からの説明は終了な
あとはその日程通りに動いてくれ」
「まt―――」
「ドラゴン討伐の前に死ぬなよ、お前達ぁ」
デュークが最後まで言い切るのを待たず、とんでもないことを言いながら帰っていった。
俺は、この時すでに覚悟すべきだった。
デューク達があれほどまでになる存在に、一週間しごかれる覚悟を。
◆◇◆
「カ、カカ、カエデさん、私もう帰りたいんですけど」
「お、俺もだシロっ..........」
どうしよ、逃げたい。
逃げるか、うん。
ぶっちゃけドラゴンなんか勝てっこない。
「シロ、全員に支援魔法を!」
「何言ってんだカエデ!
そんな大人数に支援魔法かけられるわけねえだろ!」
「分かりました!」
「は!?」
デュークがなにやら気になることを言っていたが今はそれどころじゃあない!
シロが更に気になるような返事をしていたがそれも置いておく!
「逃げるぞッ!」
「ちょっと!私はいかないからね!」
俺たちは窓ガラスを突き破り、夜の森に飛び出した。
残ったのは天才くんとナラルティアさん、ステラさんだけ。
俺・ユーガ・シロ・デューク・ドイズの5人、即席逃亡パーティの誕生だ。
ここから俺たちの逃亡劇が――
……始まらなかった。
「逃亡が可能などと、大それた夢を見た哀れなクズ共、安心しろ」
頭に直接響く、美しくも苛烈な声。
視界が暗転し、気づけば――。
俺たちは正座して縛られていた。
目の前には漆黒の長髪、超絶美人にして超絶怖い女――。
「テシリアだ。悪夢ならいくらでも見せてやる」
◆◇◆
さかのぼること十分前
シロの支援魔法を受け、俺たちは窓から飛び出した。
ナラルティアとステラさん、そして天才くんは置き去り。
薄暗い森を必死に駆け抜ける。
……なんだろう、この雰囲気。
頭の中で勝手に「きっとくる〜♪」ってBGMが流れはじめた。
いや来るな、来なくていい。
「デューク!
方向こっちで合ってるか!?」
「あァ!
そのまま真っ直ぐだ!」
デュークの言葉にひとまず安心――
と思った瞬間、違和感が走った。
「……おーいシロ? 支援魔法、切れてないか?」
「言われてみれば、確かに……」
そして気づく。
足音が減ってる。
「あれー、シロー?
聞こえてるかー?」
…………静かだな?
そう、静かだった。
足音は明らかに減っており、息遣いもそう。
まるで誰もいないかのような。
気づけば、俺の後ろには誰もいなかっt——。
◆◇◆
俺達は、室内で正座していた。
例の教官三人、テシリア、メルシィ、イクサ。
そのうちの一人、テシリアさんの前で。
しっかり縄でぐるぐる巻きにされていた。
「わざわざ逃げるなんて無駄なことをするくらいだ
よほど元気なんだろう」
優しさ何ぞ一切ない、相手を射殺すような視線がぶっ刺さる。
声だけで寿命が縮む。
超絶怖い。
黒髪ロングがさらりと揺れ、腰には二本の剣。
そして高身長スレンダー美人。
うん、やばい。
ギャップで変な扉が開きかける。
やばいやばい。
俺の視線に気づいたのか、テシリアさんがさらに目を細める。
やばいやばいやばい。
「愚図なお前らの指導を執り行うテシリアだ」
「早々に逃げるような腰抜けどもの相手は不本意だが――」
「実力だけは確かと聞く。……せいぜい死なないようにな」
死なないように?
もちろんドラゴン討伐で……だよな?
まさか、な。
「まずは体を温めるところからだ」
準備運動ね。大事大事。
「全員、腕立て二百回!
上体起こし二百回!
スクワット二百回!
ランニング十キロ!」
予想通りと言えば予想通り。
想定外と言えば想定外。
無理難題を押し付けられるとは思っていたが。
「いやなんでもやりゃいいってもんじゃねぇぞ!?」
俺が心の中で思ったことを、デュークが先に口にした。
おお、勇者よ。いや無謀者よ。
おかげで、俺は命拾いした。
デュークが真っ先にボコられたから。
異世界人、ましてや冒険者なら、
腕立て二百回・上体起こし二百回・スクワット二百回・ランニング十キロ
くらいならだれでもできる、ただ準備運動ではない。
デューク(#`ω´)「つまりテシリアはクs(((
デューク達はいろいろ上手くいっててウハウハしていた時にテシリアさん直々に指導を受けました。
以降トラウマ。
ちなみにウハウハしてたのはデュークとステラなので他の二人は完全に被害者。
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