第十四話『クソ待遇』
【旅開始から第二十日/ヨーラ王都】
合宿当日。
しおりに書いてあった準備物を買いそろえ、俺たちは「合宿場所」らしきところに到着した。
——にしても。
「……んだよ、この幽霊屋敷」
思わずつぶやく。
予想と違うにもほどがある。
そもそも街の外じゃねえか。
門をくぐった時点で気づくべきだった。
目の前にあるのは横長のオンボロ屋敷。
二階建てで、玄関はちょっと洒落ているのに、窓は全部くもりガラス。
壁の外装は所々剥がれ、蜘蛛の巣が垂れ下がっている。
屋根も凹んでて、もはやホラー施設として売った方がいいレベルだ。
しかも周囲は森のど真ん中。
木は密集しすぎて風でも揺れず、日差しも遮られて薄暗い。
聞こえてくるのは、風の音じゃなくて謎の鳥の鳴き声。
蔦まみれの低い塀に囲まれ、肌寒さまで演出してくる始末。
……ここで合宿?
マジかよ、絶対出るだろ。
出るやつだろこれ。
「……では、私はここで」
「おい、何逃げようとしてんだ」
あまりのオンボロさに、シロがそろそろと後退しはじめた。
逃がすわけねぇだろ。
「ホントにオンボロだな……」
ユーガが「うわ……」って顔でつぶやく。
本当に何考えてんだ、あのギルマス。
「カエデー!」
少し離れた場所から、やたらデカい声が飛んできた。
このボリューム……陽キャチンピラこと、デュークだな。
「おいデューク、コレどう思う」
「クッソ汚ぇ」
「だよな」
「俺たち、ここで合宿するらしい」
「マジかよ……」
「うだうだ言ってないで入るわよ
動かないと何も始まらないでしょ」
しびれを切らしたのか、魔法使い――ステラが突っ込んできた。
なんでだ、この人が一番男らしいんだけど。
正直、かっけえよ。
「それもそうだな」
デュークが頷く。
……まぁ、行くだけ行ってみるか。
俺たちは門とも呼べるか怪しい入り口を抜け、ボロ扉の前へ。
この扉、なんか開けたら野犬出てきそうだな。
某ゾンビゲームみたいに。
「よし、シロ任せた」
「なんで私なんですかっ!?」
シロが悲鳴のような声を上げる。
「ユーガは戦闘員、扉開けた瞬間に噛まれでもしたら詰み。
俺は足手まとい、怪我したら余計——。
よってシロ」
「他にも四人いるじゃないですか!」
……あ、デュークたちのことか。いやいや、ないない。
「ばっかお前、このチームが輝く場面を潰す気か。
雑用でデューク達の手を煩わせるとかおこがましい
てことで頼んだ」
「よくわかりませんけど
わかりましたよ……」
……なんかデュークたち引いてね?気のせいだな。
ギギギィィィッ。
耳に残る嫌な音を立て、扉が開いた。
そこにいたのは――
「おせぇなお前らぁ、ぶっ殺すぞ」
ガーヴェ。そして、
「……チッ」
天才くんだった。
というか、天才くんはガーヴェに担がれていた。
「な、何してんの……?」
「……チッ」
二度目!?
「なにこれどーゆー状況?」
ステラさんが切り出した。
「どうせバックレるだろと思ってな。先回りして捕まえてきた」
「……チッ」
三度目ーー。
「ったく態度悪ィなァ!?
テメェはッ!」
デュークがついにキレた。
……いや、態度の悪さではお前もいい線いってるけどな。
俺もか。
「あーお前ら喧嘩すんな。
さっさと合宿とドラゴンの説明する。
ついてこい」
ガーヴェの手招きに従い、屋敷の中へ。
中も当然ボロボロだった。
案内された部屋で、ガーヴェがつぶやく。
「にしても本当にひでぇな、ここw」
「テメェが決めた場所だろうが!」
言っちゃったよ、デューク。
「で、説明会なんだが――」
スルーかよ。
「今回のドラゴンは謎が多い。
前も言った通りだ。
新情報だが、あいつ、前日から徐々に街に近づいてきてる」
ガーヴェの声が低く響く。
「つまり、何らかの意図がある。
悪意ある攻撃か、宣戦布告か――」
猶予は10日。
だからこの合宿で、お前らをしごき上げる……と。
「質問、三ついいか?」
デュークが手を挙げた。
「まず一つ。
ドラゴン、属性持ちか?」
「ありがてぇことに無属性だ」
……まさか本当に無属性とは。
ちょっとホッとしたけど、なんか逆に不安にもなる。
「二つ目。
討伐階級は?」
「Sだ」
「Sッ」
おいデューク、声デカ!
でも気持ちはわかる。
俺たちの合宿は一週間。
街に迫るドラゴンのための地獄のしごきが、いま始まる。
シロ"(-""-)"「カエデさんが最近ちょっと冷たい気がします」
ユーガ(-。-)「だな....」
天才君はこんな感じですが精族の中ではかなり話せるほう。
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