第十話『目覚め「2」』
【旅を始めて第十八日/ヨーラ中央部】
カエデが、ゆらりと酒場の壁に寄りかかった。
次の瞬間、世界が音を立てて弾け飛んだ。
――轟音。
床が跳ね、視界が白く揺れ、耳が一瞬で塞がれる。
鼻を刺す焦げた木の匂い、舞い上がる粉塵のざらつき。
遠くで誰かが悲鳴を上げる声が、耳鳴りの奥でゆっくり反響した。
顔を上げた俺――ユーガの目に飛び込んできたのは、現実離れした光景だった。
壁が、消えている。
いや、壁だけじゃない。樽も棚も、外の石畳も、街を囲う外壁さえも。
まるで巨大な手で薙ぎ払われたように吹き飛んでいた。
「……は?」
思考が追いつかない。
その惨状の中心で、カエデがへらりと笑っていた。
「あえぇ……? かべ……どこいったんら~?」
呂律の回らない声。完全に酔っている。
だが、その姿は――どこか、おかしい。
白い。
髪が、雪のように真っ白だ。
背も、わずかに縮んだように見える。
仮面に隠れた目が、妙に幼く、無垢で……そして危うい光を宿していた。
「ユーガさん!」
「……ああ!」
シロの悲鳴に近い声で、ようやく我に返る。
幸い、この酒場は街の端。被害は建物だけで済んだが
――このままじゃ大騒ぎになる。
いや、もうなっている。周囲は悲鳴と怒号に包まれていた。
「……あらま、あたま、いたいし……そと、あるいてくる~~」
ふらふらと歩き出すカエデ。
止めようとしたその手を、すり抜けるように消え
――次の瞬間、目にも止まらぬ速さで外へ走り去った。
「速い……!」
「ユーガさん!」
「俺は追う! シロはここに残れ!」
支援魔法で強化されているはずなのに、追いつけない。
いや、むしろ距離は開く一方だった。
何が起きている……カエデ、お前はいったい……!
◆◇◆
夜の街を抜け、草原へ。
走りながら、胸の奥に冷たい恐怖が芽生えていく。
夜風が気持ちいい。
息は上がっているはずなのに、胸の奥がやけに軽い。
俺――いや、僕は、ようやくこの身体を自分のものとして動かしていた。
白い髪に短い手足、幼い声。
笑みがこぼれる。
ずっと、閉じ込められていた。
退屈で、苛立って、ただ眠るしかなかった。
けれど今、夜風が頬を撫で、土の匂いが胸を満たしていく。
「ははっ……自由だ……」
ふと目に入ったのは、不格好な巨大建造物
――まるで山賊のアジトのような建物だ。
記憶の奥に、微かに見覚えがある気がした。
そこに近づこうとしたとき、荒々しい声が飛んだ。
「おいそこのガキ! ウチのアジトの前で何してやがる!」
数人の男が現れた。殺気立った目。腰の刃が月明かりに光る。
だが、胸の奥に恐怖はなかった。むしろ、懐かしい昂ぶりがあった。
「殺すぞ!」
あ~、怖い怖い。
僕、脅迫されちゃったよ。
身の危険を感じるよ。
「だから……殺していいよね?」
右手に、凍てつく魔力を集める。
空気が一瞬で張り詰め、世界が白く染まった。
何十、何百、何千、何万人を殺した魔力。
――氷。
極寒の魔力があふれ、男たちも、建物も、悲鳴を上げる間もなく、氷像と化していく。
この感覚。人を殺すたびに蘇る、静かな快楽。
しばらくして、僕の氷が目の前の男と巨大アジトを氷で包んだ。
「チッ」
『ヒーロー助けて』?
『人を殺したらいやな気持になる』?
———クソが。
今更くだらないもん見せやがって。
「やっぱり、僕の氷は、最高だ……」
笑みがこぼれる。だが次の瞬間、胸にどっと疲労が押し寄せた。
この身体は、まだ長くは使えない。
「カエデッ!!」
振り返れば、少年――ユーガが駆け寄ってくる。
驚きと恐怖に揺れる瞳。その反応に、久しく忘れていた満足感を覚えた。
「……ああ、君か。
カエデじゃないよ。
僕は――そうだね、またそのうち名乗るよ」
視界が揺らぎ、身体の感覚が遠のいていく。
意識の底に沈みながら、微かに笑った。
「じゃあな、少年。あとは頼んだよ……」
◆◇◆
「なるほどな、それが全ての経緯と、」
俺の頭上でそう口にしたのは、この国の王だった。
俺が目覚めた場所。
その近くにあった町『サウジア』
それが所属する国『ヨーラ』
そして俺達がシロを連れてやってきたこの町。
こここそが、ヨーラの王都だったってわけだ。
そりゃ外壁もありゃいろいろ厳しいわな。
さて、ここはどこかって?
こっちが聞きたいよ?
目の前には王座に座る、貫禄はあるけど若そうな男。
その隣に立っているのは、老けた男。
俺は頭を下げ、国王と会話(?)をしている。
「は、はい、仲間の証言と............」
やっべぇ。
絶賛現在進行系でピンチなんですけどッ。
建物と壁ぶち壊した?
いや知らん知らん知らん!
そんな化け物じみたことできねぇよ、俺。
けど――。
「俺の中の何者かが言っております、」
〈やっほー聞こえる?
おーいおーい、なんか声届いてんだけど!
すげー、なぁ聞こえてるなら返事しろよー殺すぞー〉
誰だよお前!?
起きたらユーガの背中だし、
なんかユーガに謎に質問攻めに遭うし。
そっから少したったら謎の声がし始めて、それに反応したのが運の尽き。
あーうっせぇ!!
「信じられるか?大臣よ」
「にわかには信じられませんが、王。
この者が嘘をついているようには見えませぬ
であるなら、多重人格者ではないかと」
多重——は?
「ほう?」
「さらにこの者、ただの多重人格でないかもしれませぬ」
「というと?」
「一つの器に複数の精神が入っている状態でございます」
「そんな者がいるのか........」
器?精神?
どういうことだ?
俺の理解が追い付かないまま、王の話し相手はユーガへと変わり。
もう一度、王の視線が俺へと戻る。
「なんにせよ、貴様は我が国の壁を壊した、違うか?」
ただの確認作業のような質問。
そしてこの質問の答えは『YES』しかないのだろう。
「間違いないです」
「しかし、貴様が厄介な集団を掃討したのも事実
ならば――」
ならば、なんだろうか。
「一つ、冒険者である貴様に名を下す
森に現れた超希少魔物の討伐
およびその素材の回収だ」
「.....は、は」
は?
と言いそうになるのを飲み込む。
しかし、心の中でなら、言っていいだろう。
———ハァアアアアアアアアアアアアアアアア!?
カエデたち3人、まふぁは知らない。
今この瞬間も世界が静かに動き始めていることを。
その中心が、誰であるのかも――自覚しないまま。
それでも歩みは止まらないし、
止まる気もさらさらない彼らは、
災厄をも蹴り飛ばしてただ世界を歩いていく。
理由は『楽しい』。
それだけで十分なのだから。
一章 ー完ー
ユーガ(;´・ω・)「カエデ!大丈夫か!?」
カエデ(-。-)「ゆー、が?俺は大丈夫だ」
ユーガ(゜д゜)「ところで何なんだあれは
いつから気付いていた?
もしかして今まであんなものを
知らずにすごしていたのか?
そもそも関係性はなんだ
誰かは知っているのか?
氷の―――」
カエデ(;´・ω・)「うるさい....」
???(*^▽^*)「カエデ!!!」
カエデ(;´・ω・)「もっとうるさいの来た....」
【???スペック】
『???ヘアー』・・・白いぞ!
『???アイ』・・・青いぞ!
『???イアー』・・・いいぞ!
『???フェイス』・・・ちっちゃいぞ!
『???ボディ』・・・ちっちゃいぞ!
『???テンション』・・・寝起きでめちゃくちゃ高いぞ!
読んでくださってありがとうございます!
よければ感想などいただけると、とても励みになります。
お気軽にどうぞ!




