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ホロウの放浪譚~世界を知らない悪魔と歩く~  作者: あんたったー
第一部 一章 出発編 【???】
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第七話『現実』

【旅を始めてから第十七日/ヨーラ中央部】

 初めて人を殺したとき、どんな気分だった。


 僕の目の前の男が、そう吐いた。


 そんなもん即答できる。



 ――最悪な気分だった



 必死に生きようとしただけだ。


 必死だったんだ、そのはずだ。

 最悪な気分だった、そのはずだ。

 仕方なかった、そのはずだ。


 あの時のことは、あまり覚えていない。


 昔のことだからか。

 脳があの記憶を拒んでいるからか。

 ....それとも、最初の殺しなんてのを忘れるほど、僕の中で殺しが日常になっているからか。


 ちがう、そんんはずはない、僕には、まだ―――

 僕は違う。

 あいつとは違う。


 僕は、異常じゃない。



 命のやり取りなんて、珍しくない。

 自衛のためなら人を殺してしまうことだってある。

 僕は何も、悪くない。

 

 けれど、【人を殺した】という事実が、妙に心に絡みつく。


 そして気付いた、何故こうも自分を責めるのか。

 それは、想像以上に何も感じなかったからだ。

 殺した後こそ後悔したものの。

 殺す瞬間は、特に後ろめたさもなく一思いにやれてしまった。


 ―――もうどうせ汚れたのなら、

 ―――もうどうせ普通に生きれないのなら、


 そう思い、7つだった僕は、翌日から裏の世界に足を踏み入れた。

 そして、「仕事なら」とたくさん人を殺した。

 いつからか、人を殺した後も何も思わなくなっていった。


 【人を殺す】ことと、【人殺しである】ことは、似ても似つかない。


 僕の目の前の、名前も知らない僕に狙われ今死のうとしている男が、皮肉めいて言った。


「お前言ったな、

 【精霊大戦】の時の、あの【悪魔】は、

 おまえ、だって」


「あぁ、そうだ」


 僕の仕事が暗殺である以上、基本的に標的は二人、多くても五人だった。


【精霊大戦】、あの時僕は、およそ数千の命を奪った。


「どんな、気分だった」


 大勢―――、

 あいつらを殺したときか―――。


 今なら、即答できる。


「最高な、気分だったよ」


 僕の言葉を聞いた男は、表情一つ変えることなく、優しい瞳で僕に言った。


「———そうか。

 悪いな、


 ....すまない........」


 男は最後にそう言って、呼吸を止めた。

 僕の魔法によって命を落としたその男は、死の間際で、僕に謝罪した


「は?」


 ―――僕を、哀れんだ?


「ふざ、けるなっぁ!?

 くそ、がっ!

 ちがうっこれは、僕の道だ!

 僕が選んだ!

 お前らのしりぬぐいなんて、誰が!


 僕は駒じゃない!

 僕は動かされてなんかいない!


 僕はっ、ぼくはっぁ!」


 全身を染めた劣情に、熱情に、激情に身を任せ。

 その男を蹴って、殴って、蹴った。


 ナイフを持った時とも、魔法を使った時とも違い、その男に、大した傷はつかなかった。


 ふと、自分の手を足を体を見下ろした。


 小さく、細く、全てを取りこぼしそうな手だった。

 それでも、真っ黒に汚れている。


 この手で、彼を守ることが出来るのだろうか。


 いつか言ってみた言葉も、今はもう口に出すことすらできない。




 やっぱり、英雄(ヒーローとやら)が現れないのはやっぱり、僕が、悪魔(ヴィランとやら)だからだろう。


◆◇


 見慣れない天井........。

 見慣れた天井なんてないが。


 今回の記憶()、前回とはずいぶんと違う。

 あのときの、ありとあらゆる不快感を詰め込んだ感覚がない。

 今回は、たった一つの感情が、全身を、五感を支配した。



 ー寂しいー



 得も言われぬ喪失感が体を支配する。

 呼吸は荒いのに、肺に空気が入ってこない。

 目は開いているのに、何も見えない。


 だれか―――。


「カエデ、大丈夫か?」


 ユーガの声が耳に届く。

 妙に通るその声はすんなりと俺の脳に届いた。

 先ほどまでの感覚が嘘だったかのように、平常で平凡な自分に戻った。


「ゆう、が」


 声がかすれる。


「だっだだっ大丈夫ですかァッ!?」


 うるさ.........。


「悪ィ、ユーガ....とシロ

 ここどこだ?」


「急に人が倒れたと騒ぎになった

 見に行ったらカエデだった」


「で、私がここまで連れてきました」


「そうか」


 胸の奥がざわつく。


 ―――俺の過去が何であれ、俺はユーガと旅をする。

 たとえ記憶が全て戻っても、俺はユーガと旅がしたい。


「それより何があった、具合が悪いのか」


 隠したまま旅をするのは、なんか違うだろ。


 そう思った瞬間、腹の底に小さな覚悟が芽生えた。

 俺は布団から身を起こし、ゆっくりと口を開く。


◆◇◆


「なるほどな」


 俺は話した、記憶を失う前の俺が恐らく人殺しであることを。


「悪い......」


「つまり、カエデの顔は知られるとまずいってことか」


「ですね」


「え?」


 いやいや、そうなんだけどさ、もっと、


『どんな過去があっても

 俺はカエデと一緒に歩むことを選ぶ(イケボ)』


 とかそういうセリフを期待してたんだが。


「そ、そそ、そうだよな〜.........」


 とりあえず賛同しとこう。

 少数派だし。


「どうしようユーガ

 このままじゃ旅に支障が..........」


「死活問題ってやつですね」


「対策なら顔を隠す、とかか?

 たとえば仮面とか」


「怪しいな」


 俺の仮面姿を想像したのか、ユーガが即答した。

 ひどい。


「.....カエデさん、自分のこと

 鏡でみたことあります?」


「何だ悪口か、喧嘩するか?」


 急に俺の顔DISってきたぞ、こいつ。

 そんなだから友達出来ねーんだよ!


「そうじゃなくて、カエデさんの髪のことです

 半分黒で半分白、ヘンテコ頭ですよ」


「ぐちゃぐちゃだな」


「ぐちゃぐちゃ言うな」


「もう仮面より全然怪しいですからね

 カエデさんの頭」


 .......確かに。

 てかほんっとうに悪口にしか聞こえない。


 つまりコイツが言いたいのは、今のままで十分怪しいんだから仮面付けた方がむしろマシじゃね?ってことだ。


「いやでも仮面って視野狭くなるし足でまt―――  なんでもないです」


 もう既に足手まといだったなそういえば。


「仮面案に100票」


 そうするしか俺に生き残る道はないのだ。


「決まりですね」


「でも仮面なんてどこにあるんだよ」


「骨董品店とかですかね....」


 窓の外はもう夜。

 街の灯りだけが鮮やかに浮かんでいる。


「取り敢えず仮面は明日だな」


「ですね」


「だな」


 ―――その後、ユーガの金で飯食って寝た。


◆◇◆


 ようやく骨董品店についた。


 外観は古びた木造で、窓ガラスハウス汚れ、扉の上には『万屋』とも『骨董店』ともつかない看板がぶら下がっている。


 中は、うす暗くて埃っぽい・

 古時計やさびた鎧、正体不明の木造まで、如何にも怪しい品がずらりと並んでいた。


「ここまで長かった」


 ここにたどり着くまでに、何度も危ない店に入った。

 だって全部雰囲気一緒なんだもん。


 にしても——。


「....なんか呪われそうだな」


 俺はつぶやいた。

 シロは逆に眼を輝かせている。

 こいつ、こういうのが好きなのか?



 さて、仮面、仮面......。



 あった。

 二つだけ。


「どっちがいいと思う?」


『右ですね』

『左』


 まじか。


 右は真っ白で質素な仮面。

 目の部分だけ鋭く切り抜かれていて、無言で立ってたら通報されそうなタイプ。


 一方、左は鬼を模した上半分の仮面。

 白地に赤い線が走り、左目の上には角がある。


 いやまぁ.....

 目立たないことを考えると右だが。

 どっちかというと右だな〜。


「いやいや!右のほうが質素ですよ!」


「左のほうが似合うだろ」


「まぁ、ユーガが言うなら左だな」


 あらユーガさんとても満足そうな顔で....。

 おいシロ、引いた目で俺を見るな。

 何かムカつくな、コイツにその目で見られると。


 会計に仮面を置くと、店主がぼそりといった。


「変わった客だな」


 聞こえてるぞおっさん。

 うちのユーガのセンスを馬鹿にする気か。


「5万ヴェラだ」


 ....高っ。


 この世界の通貨は『ヴェラ』

 イリヤ教が発行している。


 相場はよくわからんが、5万と聞くと無条件に高く感じる。


 うちのユーガさんは財布を出しながら満足気ですけどね。


「ぴったしだな、ご贔屓に」


 上機嫌のおっさんから、仮面を受取る。

 誰も買わないであろう、こんな趣味の悪い仮面で儲けられたんだ。

 そりゃ誰だって上機嫌になる。


「あぁ.....待て坊主、コレ説明書だ、持ってけ」


 説明書?仮面の?


 数枚の紙を受取り、表紙をめくる。



ーーーーーーーーーー



『超高性能学習系仮面魔道具

 オーガMK.Ⅲ』



ーーーーーーーーーー


 は?


 あまりの文字列に、脳がフリーズする。

 なんだマーク3って。


 ユーガは横でニコニコしている。


 俺は、おっさんの言葉の意味を理解した―――。

カエデ"(-""-)"「お前なんか、俺への態度変わってない?」

シロ(*^▽^*)「カエデさんって優しいですよね!」

カエデ"(-""-)"「お前、俺のこと舐めてきてるだろ」

シロ(*^▽^*)「カエデさん、ユーガさんが待ってますよ!」

カエデ"(-""-)"「お前な........」


『精霊大戦』


他を寄せ付けぬ排他的な精族は、敵を作ることが多かった。

元より他を信用していない精族にとってそれは些事にすぎなかった。

しかし、そんな精族に悲劇が訪れる。


敵を作りすぎた精族は、敵にしてはいけない者を敵にしてしまった。

結果的に精族はたった一人の子供に数千という犠牲を出した。


それでも、精族の排他的な態度は変わらなかった。

しかし、精族は『恐怖』という感情を、覚えた。


『悪魔』

子供が暗殺者になった。

そのニュースは瞬く間にその業界の中で知れ渡り、すぐに形骸化した。

本来そんなことは一大ニュースだが。

慣れ故に、それは特に気にもされなかった。


慣れの原因、子供ばかりを拾う『組織』があった。

今回の子供もその組織の所属だった。


いつもと同じパターン。

そしてパターン通り、そこの子供は一流の暗殺をする。


しかし想定外のことが起きた。

その子供は、強すぎたのだ。

そして冷酷だった。


子供が女子供を殺すさまは明らかに異質であり。

やがてその子供は、『悪魔』と呼ばれるようになった。


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