表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二つの心音――弟が守護霊になって帰ってきた  作者: しょう
乱れる心音

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

99/105

第七十六話 隣にある鼓動


 答えは出ないまま数日が過ぎた。

 河川敷に集まることもなく、

 僕と颯は、どこか気まずいままだった。

 まるで、颯がただの弟だった頃みたいに。


 斎賀先生は“常夜はしばらく動かない”って言っていたけれど、あの日から、妙な胸騒ぎが消えない。


 放課後。

 僕と颯は、図書室でテスト勉強をしていた。

 気まずいままでも、隣にいるのが当たり前だった。


 チラリと横の席に目をやる。


「ぐぉー…… 」


 颯は、広げた教科書に顔を埋めて寝ていた。

 

 眠っている颯の心音は、穏やかだ。

 

 ――でも、どこか遠い。


 ヴヴッ。


 机の上で僕のスマホが震える。


「……んあ?」


 振動で颯が目を覚ました。

 スマホの画面には【Hikaru Asakura】の文字。


 なんだろう。

 スマホを手に取った。


 【ちょっとこれ見て〜!↓】

 

 【https://yurei-watch.com/watch?v=OZU0620_2027】


 動画サイトのURL?

 イヤホンを耳に差し、颯と画面を覗き込む。


 タップして開かれたのは、オカルト系チャンネルの動画。


『小須観音事件!隠された真相に迫る!』


 気味の悪いBGMと共に、テロップが流れる。


『黒い影みたいな……何かが動いてました!』


『黒い影ですか!?』


 映っているのは上半身だけで、証言している人の顔は見えない。

 ……こんな動画まで、出回っていたのか。


「見えてたやついたんだな」


 颯が呟く。


 画面が切り替わる。

 肩に落ちる水色の髪。白黒のメイド服。

 今度は女の子のようだ。


『見たんです!人の顔が張り付いた、黒い蜘蛛!』


 その時。


「柊〜」

 

 するっ、と背後から冷たい指が首元に触れた。


「うわあ!!」


 思わず、叫んでしまった。

 図書室中の視線が、僕に集まる。


「ご、ごめんなさい!」


 慌てて謝った。

 僕の背後に立っていたのは、


「ごめーん、脅かすつもりじゃなかったんだけど」


 光流くん。

 顔の前に手を立て、苦笑いしている。


「てめぇ直接来んなら、DMすんなよ」

 

 颯は机に頬杖をついて、光流くんを見上げた。


「ごめんごめん」


 光流くんが、僕の隣の椅子に腰掛ける。


「で、この動画がどうしたの?」


 僕は口元に手を当て、小声で言った。


「そのさ……二番目の子」


 光流くんも声を潜めた。


「……?」


「……麗子の娘、かも」


「ええ!?」


「ちょ!しー!てか一旦外出よ!!

 みなさんごめんなさーい!」


 僕は光流くんに引きずられるようにして図書室を出た。

 颯も浮遊しながら、後をついてくる。


 ――僕たちは、非常階段の踊り場に出た。


「麗子さんの娘さん!?見つかったの!?」


 光流くんに食い気味に尋ねた。


「いや、本当にそうかはわかんないんだけどさ。

 俺ら、小須商店街で、この子に会ったのね。

 髪色も服装も同じだったから、多分間違いない。

 

 で、この子を見る麗子の目がさ……なんか特別だった」


「それだけかよ?」


 颯は階段の手すりにもたれ掛かる。


「でも俺の勘が、ぴーんと来てるわけよ」


 光流くんが、パチンと指を鳴らした。


「調べてみたんだけど、制服からして、このメイドカフェっぽい」


 光流くんがスマホの画面を僕たちに向ける。

 【メイドカフェ Glass Gard(グラスガーデン)

 モノクロデザインのサイト。


「でも、キャストのところに写真出てないんだよね〜」


「行って確認すりゃ良いじゃん」


「そうなんだよね!!」


 光流くんが颯を指さす。


「んじゃ麗子呼ぼうぜ」


「それはちょっと迷ってて〜!」


「はぁ?何でだよ」


 颯が目を細めた。


「違ったら……嫌だよね」


 僕は、小さく呟いた。


「そういうこと〜」


 非常階段の下から、下校する生徒たちの笑い声が聞こえてくる。


「もう営業再開してるっぽいし、今度麗子なしで行ってみようかと思うんだけど。二人とも、ついてきてくれる?」


「もちろん!」


 あの夜。麗子さんとした約束。


 一瞬、“成仏”の言葉が頭の中に過ったけれど、

 僕はすぐにかき消した。


「……奏さんも誘う?」


「あ〜。それも迷ったんだけど……。

 奏ちゃん、なんか色々カリカリしてるっぽいし」


「確かに……」


 小須商店街の一件以来、紫苑さんのこともあって、奏さんの機嫌はすこぶる悪い。

 ましてや、今はテスト週間。

 僕も、奏さんに声をかけるのが少し怖い。


「今回は三人で行こっか」


「……うん」


 光流くんの言葉に、頷いた。


 非常階段に吹き抜ける風が、妙に冷たかった。

 

読んでくださってありがとうございます。

※次回更新:3月11日21時

第七十七話 暮羽の決意

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ