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二つの心音――弟が守護霊になって帰ってきた  作者: しょう
重なりゆく心音

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第六十四話 誓いの一発


 ***


 Side:颯


 銃口が、目の前にある。

 眉間を撃ち抜かれる未来が、くっきり見えた。


 なのに――怖くねぇ。


 湧いてきたのは、怒りだ。


 命なんて、何とも思ってねぇような面しやがって。

 拳銃なんて、軽々しく扱っていいもんじゃねぇんだよ。

 

「……終わらねぇよ」


 次の瞬間。


 ブオォォン!!


 爆風が、巻き上がった。


「っ!」


 戒の手元から、拳銃が吹き飛ぶ。

 風圧に押され、戒も後方に退いた。


 ……柊の力だと思っていた。

 だけど、確かに。

 この風は、俺の感情で動いた。


 風が止む。


 カシャン!


 どこかで、拳銃の落下音がした。


「……まさか元素付きとは、な」


 戒は銃座の後方――エアホッケー台の影で屈み、袈裟の内側を探る。

 カチャリ、という金属音。

 ゴム弾の拳銃に、弾を押し込む音がした。


「霊の中には、稀に五大元素を持つやつがいる」


「は?」


 ……何言ってんだこいつ。

 だが、次の言葉で戦慄した。


「そういうヤツらは、“特殊霊”って呼ばれてんだよ。

 御影の坊の、双子と同じだ」


「……!」


 “特殊霊”。

 俺は、ただの半端な半霊だと思っていた。

 ……違ったのか。


 心臓が鼓動を早めた。


「……だがよ」

 

 戒の手が、止まった。


「多少特別だからって、雑魚は雑魚だ」


 ダンッ!


 戒はエアホッケー台を踏み台にして跳び、袈裟の奥からもう一丁引き抜いた。

 ゴム弾の方だ。


 パァン!

 赤い光が落ちる――!


 横に転がって避けた。

 俺は、低い姿勢のまま駆け出す。


 パン!

 パン!!


 筐体の間を潜り抜け、ゴム弾を交わした。

 霊力だけは、筐体を貫通してくる。厄介だ。

 それに、逃げてばかりでは勝ち目がない。


『颯!さっきホッケー台の裏で……戒は拳銃にゴム弾を込めてたんだと思う!』


 内側から、柊の声が聞こえる。


『六発装填のはず!さっき三発撃ってる!』


「……なるほどな!」


 パン!

 パン!!

 パァン!!


 ……次が来ねぇ!

 今だ!!


 カーレース筐体の運転席(コックピット)の裏から、飛び出した。


「オラァ!!」


 吹き抜けの手すり付近に立つ、戒。

 その顔面に向かって拳を振り上げた。

 柊が霊力を込めてくれる。


「旋霊拳!祓――」


 キラッ。


「!」


 戒の指先で、何かが光った。

 

 砕けたメダルゲームの破片――ガラス。

 それを戒がつまみ、俺の目に向けて弾いた。


 ……ッ!刺さる!

 

 反射で拳が止まってしまった。


 その瞬間。


「甘ぇな」


 戒の手が、俺の手首を掴んだ。

 ぐい、と引かれて体勢が崩れる。


「っ……!」

 

 戒は手すりの方へ俺を引き寄せながら、自分の身体を滑り込ませた。

 肩が、俺の脇腹に食い込む。


 ――身体を入れられた!

 まずい!!


『颯!!』


 グンッ!


 視界が反転する。


「あばよ」


 俺の身体が、手すりを越えて宙に投げ出された。

 視界に、クレーンゲームの屋根が飛び込む。


「……クソったれ……っ」


 ――頼む。

 風、来い!!


 ブワァッ!


 身体が、ふわりと浮いた。

 さっきの爆風とは違う。優しい風が俺を包み込み、ゆっくりと地上へ降ろしてくれる。


 この風は、刺すだけじゃねぇ。

 俺たちを、守ってくれる。


 一階には、人ひとりいなかった。

 狛さんのおかげだ。


 カシャ……。


 着地した足元に、違和感がした。

 視線を落とすと――実弾の、拳銃。

 黒いボディがゲーセンのネオンを反射していた。


「……っ!」

 

 俺は咄嗟に拾い上げ、二階の戒に向かって構えた。

 見た目よりも重い。

 その重みに、握る手が震えた。

 ……セーフティは外されたままだ。


「おうおう。それ、人殺しの武器だぜ?」


 戒は戯けて両手を上げる。


「てめぇに撃てんのか?」


 俺が撃てねぇと、踏んでやがる。

 

 この引き金を引けば、やれる。


『颯』


 柊の声が、頭の中に響いた。

 名前を呼ばれただけだ。

 でも、柊が何を伝えたいか、正確にわかった。


 バン!


 耳を裂く音。

 俺は天井を撃っていた。

 

 ――戒じゃねぇ。

 俺自身に、撃たねぇって誓わせるためだ。


 カシャン!


 床に、拳銃を落とす。


「……柊」


『うん』


 ブワッ。


 足が、霊力を纏う。

 その足で拳銃を踏み潰した。何度も、繰り返し。

 バラバラに砕けて使えなくなるまで。

 

 怖いから壊したんじゃねぇ。

 二度と、兄貴に銃口を向けさせないためだ。


「おいてめぇ、何やってやがる!」


 戒はゴム弾をまとめて掴み、手元の拳銃へ押し込もうとしていた。その時、


 ブオォッ!!


 突風が吹き抜ける。

 ゴム弾が指の間から弾け飛び、床に散った。

 

「……チッ!」


 戒が舌打ちする。


「おい」


 俺は吹き抜けから、戒を見上げた。

 自分でも驚くくらい、低い声が出る。


「道具は必要ねぇ。拳でやろうぜ、戒」

 

読んでくださってありがとうございます。

※次回更新:3月1日15時

第六十五話 ふたりの風

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