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二つの心音――弟が守護霊になって帰ってきた  作者: しょう
重なりゆく心音

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第五十八話 計画通りに


 ***


 数時間前。

 もう使われなくなった、古いビルの一角。

 

 常夜ノ会、本部。

 蝋燭の灯りの奥、黒皮のソファに座る影。

 その声ひとつで、場の温度が変わる。

 

 その両脇に、幹部のミラと灰堂はいどうが立っていた。

 そのさらに奥――

 蝋燭の灯りが届かない窓際に、もう一つ影があった。

 誰にも気取られぬように、ただ黙って様子を見ている。

 

「白寧」


 低い声が響く。

 光の乏しいこの場所では、その表情は読めない。


 ソファの正面で、膝をつく白寧。

 その額から、汗が一滴落ちた。


「……ハイ」


 返事をする声が、喉の奥で潰れる。

 白寧の背後で、白虎の巨体が息を潜めるように縮こまっていた。


「山に行ったそうだな」


「そうなんですよぉ〜!

 全く、この動物、頭が悪くて!」


 やけに明るい声が、場違いに弾けた。

 白寧の斜め前。肩をすくめるのは、喝采。


「喝采。管理できていないのは、お前の責任だろう」


「……次からは首輪をつけておきましょう」


 喝采は、にこりと笑顔を浮かべた。

 その様子を見て、ミラが口元に手を当てて笑う。

 洋風和服のスリットから、細く長い足が覗いた。


「くくっ……明日の計画には、勘付かれておらぬのじゃろう?」


 喝采はミラをギロリと睨み、唇を噛み締める。

 馬鹿にされたと、感じているのだろう。


「明日の動き、みんな、理解してるよね?」


 口を開いたのは、灰堂だった。

 人でもない、霊でもない、存在感。

 口調だけは、やけに柔らかかった。


「はい」


「おう」


 返事が二つ、薄闇の中から返ってきた。

 戒と響だ。

 戒の隣には、暮羽が壁に沿って真っ直ぐ立っている。

 ぴしっと伸びた背骨から、気品が漂う。


「暮羽さん、返事が聞こえないけれど」


 灰堂の声が、穏やかに刺した。


「……計画は承知しております」


 暮羽は視線を床に落としたまま、返事をした。

 灰堂は、その場にいる全員に向けて言う。


「明日は“小須おず商店街”で騒ぎを起こす」


 その言葉に、暮羽の指先が僅かに動いた。


「――本命は、封印庫の“奥”だ」


 灰堂の左目が不気味に光る。


「ふふふ……久しぶりじゃのう……」


 不敵に微笑むミラ。

 灰堂はソファの男の方へ、少しだけ頭を下げる。


「よろしいですか?――博士」


 その呼び名だけが、この場の誰とも違っていた。


「ああ。失敗はあり得ない。

 俺を失望させた者は――処分する」


 その言葉に、息を呑んだのは白寧の背後に控える者たちだけだった。


「……おい、暮羽」


 戒が、小さな声で暮羽を呼ぶ。


「てめぇ、また勝手に動こうとしてんじゃねぇだろうな」


 戒はキツく暮羽を睨みつけていた。

 隣で響も、腕を組んで目を細めている。


「大丈夫ですよ。……私も、消されるのは御免ですから」


 灰堂は一堂を見渡し、淡々と告げた。


「――解散。明日は、計画通りに」


 そして、ふと思い出したように付け足す。


「……“外”にも伝えておけ」


 その言葉は、窓際の影にだけ届いた。


 暮羽は静かに頷き――

 誰にも気づかれぬよう、胸元にしまったペンダントを握りしめた。

 鎖が、かすかに擦れた。


読んでくださってありがとうございます。

※次回更新:2月26日19時

第五十九話 動き出す、朝【前編】

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