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二つの心音――弟が守護霊になって帰ってきた  作者: しょう
重なりゆく心音

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第四十八話 上位互換


 ***


 光流と麗子の前方で、狛は白髪の男と向き合っていた。


「どちらが王に相応しいか、だと?

 ……バカバカしい」


「バカバカしい?」


 狛の言葉に、男は眉間の皺を深める。


「お前が言う、“ペット”とは、霊害のことか?」


 狛の問いかけに、男が頷いて答えた。


「……この山にいる霊害は、皆、霊獣ダッタんだ」


「ほう?」


「だけど、霊害になってシマッタ。

 “あの方”が、山に還して良いと言ったから、俺がここで飼うことにしたんだ」

 

 男は狛を睨みつける。

 怒っていることだけは、狛にもわかった。


「なのに、お前たち。

 俺のペットを、たくさん祓ッタな……!」


 男の全身から、赤い霊力が吹き出す。


「霊害になってしまえば、ペットとは呼べない」


「黙レ!」


 次の瞬間、男の側で白虎の霊が、黄金の光に姿を変えた。


「まさか……!」


 ブワァァァ!!


 黄金の光が、男の胸元に一直線に突き刺さる。

 

 ――共霊だ。

 こいつ、器の素質があるのか……!


 男の姿が作り替えられていく。

 爪、牙、眼光。

 狛と似ているが、別物だ。


 金色に染まった男の瞳が、ギラリと輝いた。


「共霊できるのは、お前だけじゃナイ」


 男は地を蹴ると――


 バッ!


 一瞬で、狛の目前に移動する。


 ――速い!


 男の拳が振りかかる。


 ヒュン!


 拳の風圧ですら、熱を帯びていた。

 間一髪で避ける。

 だが、すぐに次の攻撃が繰り出された。

 狛は目を見開き、その動きを捉えてかわす。


 受け、殴り、かわす。

 骨に響く衝撃だけが、遅れてくる。


 ドゴッ!!


 やっと一発。

 狛の蹴りが男の腹部に入った。

 回転する霊力が、男の腹筋を抉る。


「……ッ」


 男はほんの一瞬、表情を歪めると、後方に退き狛の次撃をかわした。


 男は狛から距離を取った。

 逃げているのではない。

 ――何か、する気だ。

 

「お前……なかなかやるな」


 真っ直ぐ、狛を見ながら言う。

 

 ゆらり。


 気配が変わった、直後。

 男の瞳が、人の光を失った。


「……!?何をしようとしている!?」


「……ガルルルル」


 男が唸り声を上げる。

 その声は、人間のものではなかった。


 ――意識のスイッチ。


「獣霊とそんなことをしたら、戻れなくなるぞ!!」


『俺は、壊れナイ』


 狛が言い終わる前に、男の声が響いた。

 男の身体の、内側から。


『俺と白虎は、二人で一つ。通じ合ってる』


「……可能だと、言うのか……!」


 ポツ……ポツ……。


 雨が、警告するように降り始めた。


「ガルルルルッ!」


 低い唸り声と共に、男が狛に襲いかかる。


 ドガァッ!!


 剥き出しの本能のまま。

 さっきより速く、鋭い攻撃。

 

 両腕で受け止めるが、ジリジリと後方へ押されていく。


 男の拳が、赤い霊力を纏った。

 そして、


『お前の面白い技、俺も、ヤッテみる』


 赤い霊力が、回転を帯びたのがわかった。


 ――まずい。


 ドゴォン!!


「……がっ……」


 みぞおちから全身に、衝撃が走る。

 狛の身体が浮いた。

 畳み掛けるように、男の蹴りが突き刺さる。


 バァンッ!!


 狛は、地面に叩きつけられた。


 全身が焼ける。――俺より、強い。

 俺の、“上位互換”。

 

 黒狼が、狛の中で吠える。

 怒りじゃない。警告だ。


『王に相応しいのは、どちらか』


 男の言葉が、こんな時に甦る。


 ザザー。


 雨が勢いを増した。

 雨粒が、狛の身体を濡らしていく。

 

「……クソッ!」


 狛は奥歯を噛み締め、立ち上がった。


 諦める選択肢はない。けれど――


「ガルルルル……」


 男の唸り声を前に、足が小さく震えていた。


「ガァーッ!!」


 男が駆け出そうとした、その時。


 ヒュン!!


 赤い光が男と狛の間を裂いた。

 ぴたり、と動きを止める男。その瞳孔が開いていた。


 地面に突き刺さった赤い光の正体は、

 ――霊力を纏った、ダガーナイフ。


白寧バイ・ニン。そこまでですよ」


 落ち着いた声と共に林の奥から現れたのは、

 喝采アプローズだった。


 黒い空に、稲妻が光る。


「スケジュールに、余興はありません。

 ……これだから動物は嫌いだ」


読んでくださってありがとうございます。

※次回更新:2月20日19時

第四十九話 消えない番号

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