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二つの心音――弟が守護霊になって帰ってきた  作者: しょう
重なりゆく心音

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第四十五話 仕組まれた平和


 ***


 Side:柊

 

 別ルートでみんなに何かが起きているとは知らず、僕たち三人は、先を進んでいた。

 

「オラァ!」


 颯が、霊害を手短に片付ける。

 小さな霊害が、キラキラと光の粒になって宙を舞った。


「このルート、吐き気するくらい平和だね⭐︎」


「……そうですよね」


 休み休みとは言え、かなり歩いてきた。

 

 霊害に全く遭遇しないわけではないのだが、

 “複数発生している”と聞いた割には、数が少ない。

 僕たちの進む道だけが、外されてるみたいだった。


「他のルートに偏ってんじゃね?」


「そうだろうね⭐︎偶然か、それとも〜」


 ふいに、紫苑さんと目が合う。


「……それとも?」


「どうだろうね⭐︎」


 また、あの笑顔で誤魔化された気がした。


 紫苑さんが額に手をかざして空を見上げる。

 遠くの空から、雷鳴が聞こえた。


「雨来そうだね〜⭐︎」


「確か、折りたたみ傘がリュックの中に……」


 リュックの中身を確認しようとする僕を、紫苑さんが遮った。


「通り雨だよ⭐︎まぁ、念のため雨宿りできるとこ行こ⭐︎」


 僕たちの歩く観光ルートには、ところどころに小休憩できる東屋が設けてある。

 とりあえず、そこを目指して進むことになった。


 木の階段を三人で登っていると、


 ガサガサガサッ!


 木々の間を、何かが迫ってくる音がした。

 咄嗟に颯が音のする方を向く。


 バッ!!


 そいつが現れた瞬間、


「ウラァ!!」

 

 颯の蹴りが炸裂した。

 颯の足が捉えたのは、やはり黒い影……霊害だ。


 バァン!


 颯の一蹴で霊害が飛散したのと同時に、


 ぽーん。


 四角い箱が、宙を舞った。

 中身を飛び散らせながら、一回転して地面に落ちる。


「何だぁ?」


 颯が目を細める。

 そこには。


「……お弁当?」


 無惨にひっくり返った、お弁当。

 山鳥が飛んできて、残骸をつつき始める。


 ガサガサガサッ!!


 霊害がやってきた方向から、また何かが来た。

 だが今度の気配には――生気がある。


「あ⭐︎」


 紫苑さんがいち早く、その正体に気づいたようだ。


「霊害より、めんどくさいの来る⭐︎」


「はぁ?」


 疑問符を浮かべた颯の背後から――


 ドンッ!!


 何かが、戦車みたいに突っ込んできた。


「ぐはぁっ!!」


 背中に直撃し、颯が前方に飛ぶ。


「い、猪!?」


 僕は思わず、本音を口にしていた。


「惜しい⭐︎」


 現れたのは猪ではなく……


「ボクのお弁当〜!!」


 鬼の形相をした、伊吹さんだった。


「うるさい⭐︎」


 ドゴォォォン!!


「ぎゃ〜っ!!」


 紫苑さんのデコピンで、今度は伊吹さんが吹き飛んだ。


「し、紫苑くん!?何で!?」


 尻餅をついた伊吹さんが、額を押さえながら上体を起こす。


「お前がコースアウトしてんだよ⭐︎」


「は!しまった!!福ちゃんと奏ちゃん置いてきちゃった!!」


 伊吹さんは青い顔をして、キョロキョロ辺りを見回す。

 その時。伊吹さんの目に、地面に散らかったお弁当が飛び込んできた。


「あー!お弁当がー!!」


 悲痛の叫び。

 僕と颯は手で耳を塞いだ。


「……まだ、食べられる……?」


 伊吹さんはごくりと喉を鳴らし、四つん這いになってお弁当に近づく。


「やめろ汚い⭐︎」


 紫苑さんが、伊吹さんの襟ぐりを後ろから掴んで止めた。


「伊吹さん、その……奏さんたちは……?」


 “置いてきちゃった”って、聞こえたけど。


「わかんない!!」


「先輩として大丈夫なのか、コイツ……」


 背中をさする颯の横で、僕は転がる弁当箱を回収した。

 中身はもう、どう見ても無事じゃなかったけれど。


 今度は伊吹さんが来た所と逆の方角から――


 ドォォォン!!


 地響き。

 鳥が一斉に木から飛び立った。


「何かあったっぽいね〜⭐︎」


 おそらく作業道ルート、光流くんたちのところだ。


「大丈夫ですかね……!?あっち、向かいますか?」


 紫苑さんに指示を仰ぐ。

 紫苑さんの顔から、笑顔が消えていた。


「……いや、あそこは狛がいるから大丈夫。

 問題は、あっちじゃない」


 紫苑さんは、一瞬だけ林の奥を見る。

 

「伊吹、来たとこすぐ戻れ」


 低い声で言った。

 その場の空気が、一瞬で張り詰める。


「は、はい!」


 伊吹さんはぴしっと返事をして、くるりと方向転換した。


「僕たちも行くよ。危ないのは奏の方だから」


 紫苑さんの真剣な眼差し。

 心臓が鼓動を早めていく。


 ――奏さんが、危険……!?


「それから柊、凡才教師に狛のとこ行くよう連絡して」


「さ、斎賀先生ですよね?」


「他にいないでしょ?」


 僕は慌ててスマホを耳に当てた。


 積乱雲が僕らの頭上に迫り、ポツポツと雨が降り始める。


「急げ。多分、もう接触してる。


 霊害じゃない。常夜だ。

 ……嫌な音が、する」



読んでくださってありがとうございます。

※次回更新:2月17日21時

第四十六話 今日は喧嘩する日ではない

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