第三十五話 凡才の戦い方【後編】
「……っ」
再び、お札を構える。
紫苑の言葉が、まだ奏の耳の奥に残っていた。
「とりあえずさ、その武器の使い方からよく考えたら⭐︎?」
霊力を纏わせて、投げる。
この方法だけでは、もう通用しない。
「脳みそ搾り出さないと、君はこの先、一番足手まとい⭐︎」
奏のお札を持つ手に、ぐっと力が入った。
「足手まといになんか……
なりません!!」
ヒュッ!
お札を一斉に放つ。しかし、弾かれる。
それでも、お札を放ち続けた。
――紫苑に向けて、だけではなく。
紫苑は鉄槌を振り回しながら距離を詰めてきた。
ブォン!
鉄槌を避けながら、徐々に後退する。
だが、奏は逃げているわけではなかった。
奏の後方に、
先ほど紫苑が地面に作った――“窪み”。
そこに、張られた複数のお札。
窪みは、青白い霊力の溜まり場となっていた。
お札を利用した、罠だ。
紫苑の足が、ここに触れれば……。
「嵌めたいの、バレバレだよ⭐︎
罠から霊力ダダ漏れすぎ⭐︎」
「……くっ」
奏が、表情を歪めた。
ひょいと紫苑が窪みを飛び越える。
視線すら落とさずに。
そして――
ズルッ!!
「あれ⭐︎?」
紫苑の足元が滑った。
窪みを飛び越えた先――
砂に紛れるように、紫苑の足元にお札がもう一枚。
水のように流れる霊力を纏っていた。
誘ったのだ。
敢えて、大きな霊力の溜まり場を作ることで。
紫苑が、体勢を崩す。
その隙を狙って、
「やぁっ!!」
奏が、足を振り抜いた。
“行ける!”
奏には、手応えがあった。
――しかし。
体勢を崩したまま、紫苑が鉄槌を振るう。
あり得ない、体幹の強さ。
「えい⭐︎」
バァン!
奏の蹴りが、紫苑のみぞおちをかすったのと、ほぼ同時に。
紫苑の鉄槌が、奏の横腹を叩いた。
――骨まで砕く重さではない。だが、十分すぎる痛み。
「……あっ――」
ズシャアッ!!
奏は左半身から、滑るように地面に叩きつけられた。
両手で地面を掴み、砂を握りしめる。
奏の胸の中を、悔しさが満たしていった。
「凡才にしては、まあ頑張ったね⭐︎」
紫苑が奏に歩み寄る。
けれども、手は差し伸べなかった。
「でも、君がこれからやることの、
方向は合ってるんじゃない⭐︎?」
紫苑には、まだまだ手が届かない。
それでも、奏は起き上がった。
「泥でも磨けば光る⭐︎
まだまだ、これからだよ」
ズルくなる。
けれども、誰かを踏み潰す強さには、なりたくなかった。
答えは、これから見つければ良い。
――泥団子で、終わるものか。
紫苑を、見据えながら、立ち上がる。
奏の目の色は、暗く燃えていた。
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※次回更新:2月12日21時
第三十六話 それぞれの、“支え方“




