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二つの心音――弟が守護霊になって帰ってきた  作者: しょう
重なりゆく心音

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第二十九話 迎えに来た異端【前編】


 ――翌朝。


 パリーンッ!!


 強烈な音で、僕は跳ね起きた。


「……な、何!?」


 僕は飛び起きて、空中で寝ている颯を揺すった。


「颯!颯、起きて!」


「……あーん?」


 颯が不機嫌そうに目を開ける。


「んだよ、朝っぱらから」


「何かすごい音が……!」


 ガタッ!


 ふすまが開く音に、僕はビクッと体を震わせた。


「おはよう。二人とも」


「……篝くん」


 振り返ると、篝くんがにっこり微笑んでいた。


 さっきの音、気にしてない……?

 僕の夢だったのだろうか。


「お迎えが来たよ」


「迎え……?」


 “誰が?”と尋ねるより先に、灯さんが篝くんの背後から顔を出して言った。


「まったく!最悪な迎えですわよ!

 御影家の結界をあんなふうに破って!

 これだから久世の連中は!」


 宵くんも、不機嫌な顔をして現れる。

 この二人はいつもセットのようだ。


「……御影家の……結界?」


「何の話してんだ、コイツら?」


 頭に疑問符を浮かべる僕と颯に、篝くんが柔らかな口調で説明してくれた。


「さっきね、君たちを迎えに来た子たちが、僕の家の結界を壊したんだよ。すごい音、したでしょ?」


「……あ」


 その音だったんだ。

 夢ではなかったらしい。


「ふふ……、御影家の結界って頑丈だからさ。

 それをあんなふうに破ってしまう人って限られるんだよね」


 篝くんは怒っていないようだ。

 それにしても、一体、誰が迎えに来たんだろう。


 僕は颯を見た。


「奏か光流か?」


「もっと凶暴な人だよ」


 颯の問いに篝くんが即答した。その時――


 ガターン!!


 縁側と部屋を仕切っていた障子が、勢いよく倒れた。


「ぎゃああああ!障子が!!」


 灯さんが悲鳴を上げる。


「な、何!?」


 僕は思わず颯にしがみついてしまった。


 縁側に現れたのは――


「ぐんもーにん⭐︎」


 女子のように可愛らしい青年。

 その軽い声とは裏腹に、空気が一気に張り詰めた。


 その横で、背の高い男が無言で立っている。

 見覚えのある顔立ち。


「……」

 

 じろりと視線を向けられただけで、息が詰まった。


 二人とも皇陽高校の制服を着ている。


「おい、離れろ」


 颯が僕を引き剥がす。


「ご、ごめん。でも、誰?」


「俺が知るわけねーだろ!」


 僕たちは小声で話した。


「君たちの先生に言われて迎えに来たんだけど〜⭐︎」


 小柄な青年が、にっこり笑って言う。


「さ、斎賀先生ですか!?」


「……そうだ」


 背の高い青年が答えた。


 斎賀先生の知り合い、

 そして、皇陽高校。


 頭の中で、パズルのピースがつながった。


 もしかして。


「東雲警部の、息子さんですか!?」


「……よくわかったな」


「なーに、こま、知り合いだったの⭐︎?」


 二人は、同じ久世流派の人間らしい。

 警部の息子さんは、“狛さん”と言うのか。


「で⭐︎?僕のことは知らないと⭐︎?」


 ぐいっと距離を詰め寄られる。

 笑っているのに、値踏みされている気がした。

 

「あ……ええと……」


「まあまあ、紫苑しおんくん。

 それより先に、僕に言うことがあるんじゃないかな?」


 篝くんが、僕と彼――紫苑さんの間に割って入った。

 紫苑さんは、つまらなそうな顔をして僕から離れる。


「ここ、僕の家なんだけど?」


「誘拐犯がよく言う〜⭐︎」


「君たちは、住居侵入、器物破損だけどね」


 篝くんの言葉に、宵くんと灯さんが続く。


「帰れ、久世ぇ!!」


「弁償しなさいよ、この悪魔!!」


 理解できないことだらけの中、

 紫苑さんがめちゃくちゃ嫌われてることだけはわかった。


「うるさいよ⭐︎雑魚霊ども⭐︎」


「何ですってぇ〜!?」


 灯さんが声を荒げる。


 紫苑さんと灯さんがやり合う横で、狛さんが篝くんに歩み寄った。


「……篝、強引な入り方をしてすまない」


 そう言って頭を下げる。


「ふふ……君の意思じゃないことはわかってるよ。

 先生に頼まれて、二人を迎えに来たんだね」


「ああ……悪いが、返してもらえないか」


「……もちろん」


 篝くんは、僕らの方を見る。


「彼らは、ちゃんとした、君たちの味方だよ。

 ……僕と違ってね」


 含みのある言い方だった。


「お別れの時間だね」


「ありがとう……篝くん」


「世話んなったな」


 僕たちは、軽く頭を下げた。


「……どういたしまして」


 篝くんはそう言って微笑んだ。

 その笑顔が、何故だか少し、遠くに見えて。

 僕は振り返って、彼の元に駆け寄っていた。


「……どうしたの?」


 篝くんが僕の顔を覗き込む。

 僕は、篝くんの手を握った。

 やっぱり雪みたいに冷たい手。


「僕は……篝くんの味方だからね」


 僕はへらっと笑って、彼の手を離した。


「おい柊、行くぞ〜!」


 颯が、僕の名前を呼ぶ。


「またね!篝くん!」


「……」


 篝くんは少し驚いた顔をした後、ふんわりと笑って僕を見ていた。

 ――母さんみたいな、笑顔だった。


 こうして、僕たちは篝くんの家を後にした。


 去って行く僕の背中を見送りながら。

 

「……宵、灯。

 柊くんが僕の家に来たこと、母さんには言ってないよね?」


「はい。口外しておりません」


「良かった。ふふ……。

 “綾さんの息子が来た”なんて知ったら、

 母さんは、きっと喜んでしまう」


 篝くんたちがそんな話をしていたことを、僕が知るはずもなかった。



読んでくださってありがとうございます。

※次回更新:2月6日21時

第二十九話 迎えに来た異端【後編】

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