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二つの心音――弟が守護霊になって帰ってきた  作者: しょう
始まりの心音

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41/102

第二十五話 その手は、敵か味方か


 ***


 ドサッ!


 共霊したままの柊の身体が、砂浜に倒れ込んだ。


「あー?」


 男は眉間に皺を寄せ、首を傾げる。

 

 男は、確かな違和感を覚えていた。

 ――確かに、引き金は引いたはずだ。

 だが、弾は貫通していない。

 血の一滴すら、見えなかった。


「……てめぇの仕業だな」


 男が、視線を向けた先にいたのは――


 篝だった。


 背後で、宵と灯が篝の肩に手を置く。


「ふふ……間に合ったみたいだね」


 そう言って、篝は壊れ物を扱うように柊の身体を両手で抱え上げた。


「御影の坊がなんの用だよ」


「ふふ……」


 篝は、ただ微笑むだけだった。


「おい坊主。言葉を慎め」


 宵が、男を指差す。

 隣で灯も、男の態度に怒っていた。


「まあまあ、二人とも」


 二人を宥めた後、篝の視線は、男を捉える。


「……君、常夜の人間だね。僧侶の格好、霊銃使い、その人相。名前は、かい……だったかな」


「よく知ってるじゃねぇか」


 男は、ふふん、と鼻を鳴らす。


「てめぇも俺に、ぶち殺されに来たのか?」


「まさか。君が僕を殺してしまったら、大問題だよ」


 篝は、にこりと微笑む。

 だが、その目は笑っていなかった。


「それに君は、無謀な戦いを挑むほど、馬鹿じゃないと思ったけど?」


「……チッ」


 男――戒は、舌打ちをした。


「あーあー、興醒めだな」


 拳銃を袈裟に収める。


「てめぇのことは、上に報告しとくからな」


 戒は、ギロリと篝を睨みつけた。


「どうぞ、ご自由に」


「……スカしてんのも、今のうちだぞ」


 吐き捨てるように言って、戒は踵を返した。

 砂浜を踏み締め、ゆっくりとビーチを後にする。


「本当に、失礼なやつですわ」


 灯は、ふんっと鼻を鳴らした。


「……篝様、あの坊主、行かせてよろしいのですか?」


 宵が、篝の顔色を伺うように尋ねる。

 

「問題ないよ。……さて」


 篝は視線を、砂浜に横たわる光流へと移す。


「君、さすがだね。あの判断は、簡単じゃない」


「……うっ」


 光流は、うっすらと目を開けて、篝を見た。

 篝は続ける。


「……あの瞬間、君が動いたのは見ていたよ。

 

 おかげで、この子は助かった。


 ――もちろん、僕の力もあったけどね」


「……誰?」


 篝は、光流に微笑みかけた。

 白銀の髪が、潮風にサラサラと靡く。


「僕は、御影篝。君たちの敵じゃないよ。


 ……味方でもないけどね」


 そう言うと、篝は柊の身体を抱えたまま、砂浜を歩き出した。

 その背中は、次第に遠くなり――


 やがて、見えなくなった。


読んでくださってありがとうございます。

※次回更新:2月1日12時

第二十六話 理想は、力の前に折れる【前編】

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