表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二つの心音――弟が守護霊になり、霊と戦うことになった  作者: しょう
始まりの心音

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/32

第十七話 十七歳【前編】


 ――翌日。


 「おっはよーん!」


 僕のクラスに、光流くんのやけに元気な声が響いた。


「光流くん、おはよう」


「おはようじゃありません。もう二時間目が終わっています」


 奏さんが、ぴしっと注意する。


「えー?なんか寝過ぎたんだよね!起きたらスナックの方だったし!」


「お前、昨日途中から爆睡だったぞ」


 颯が呆れ顔で言った。


「柊くんが、背負って運んでくれたんですよ」


「柊〜!ありがとう大好き!!」


「わっ……!」


 光流くんが、勢いよく僕に抱きつく。

 ふわっと、柑橘系の匂い――少し、海みたいな香りがした。


「ほんと、アンタは感謝しなさいよォ〜」


 ぬっと現れた大きな影。麗子さんだ。


「麗子さん、おはよう」


「おはよう。柊、奏。昨日はありがとね」


 穏やかに微笑む麗子さん。


「おい!俺は!?」


「あらアンタいたの。薄すぎて見えなかったわ」


「うぉい!まだ霊力切らしてねぇわ!!」


 昨日の約束通り、僕の供給で颯は霊力を保っている。

 怒る颯をよそに、麗子さんは話を続けた。


「昨日、びっくりしたでしょォ?光流の家」


「あ、母さんと姉ちゃんに会ったんだっけ?」


 光流くんは、まだ僕に腕を回したまま話す。


「うちね、みんな“見える”んだよね〜!」


「や、やっぱり……!」


 僕は光流くんの身体を引き離して、その肩を掴んだ。


「だから、母さんも姉ちゃんも麗子と仲良しなんだよね〜?」


 光流くんが麗子さんの方を見ると、彼女はうんうんと頷いていた。


「遺伝ってことか?父ちゃんは?」


 颯が、空中で胡座をかきながら尋ねる。


「光流んちは、母子家庭なのよォ」


「そ〜!俺が小一の時に出てったっきり〜!それから、女手ひとつで育ててもらったわけ!」


「光流くん、苦労されていたんですね……」


 奏さんの言葉に、昨日光流くんが言っていた話がふと蘇った。


 ――『副業でも、儲かる方が良いでしょ?』


 もしかしたら、金銭面でも色々あったのかもしれない。


「まあ、今は姉ちゃんも昼間働いてるし、母さんの店も繁盛してるし、麗子も家事手伝ってくれるし」


 光流くんは、さらっと言った。


「だから、そんなに大変じゃないよ」


「……麗子さん、家族の一員なんですね」


 奏さんがそう言うと、麗子さんは少し照れたように視線を逸らす。


「光流の家族が特殊なのよォ。こんなアタシのことまで、受け入れてくれてる」


 ――少し、羨ましいと思ってしまった。


「光流くんの家は……霊と一緒に暮らす家族なんだ」


 思わず、そう呟く。


 怖がってばかりだった僕とは、大違いだ。

 霊を拒むのではなく、受け入れ、その力と共に生きている。


 ――そんな家族も、あるんだ。


「ところで、今日も特訓するでしょ?」


 光流くんは、ぱっと僕から離れて、僕の机の上に腰掛けた。


「ったりめぇだ!麗子倒すまでやんぞ!!」


「それは一生かかっても無理よォ」


「んだとコラ!!」


 颯は相変わらずやる気満々だった。

 ……もちろん、僕もだ。


「光流くん、奏さん。僕に続き、教えてくれる?」


 真剣な目で、二人を見つめた。


「もちろん!」


「もちろんです」


 二人の声が、綺麗に重なる。


「……せ、青春ですね……うっぷ……」


 そんな僕らのやりとりを、教室の入り口から二日酔いの斎賀先生が、こっそり覗いていた――らしい。


 こうして、僕たちの特訓は本格的に始まった。

 放課後は河川敷。休みの日も、できる限り集まって訓練する。

 

 僕は、奏さんと光流くんと。

 颯は、麗子さんと組んで。


 役割は、自然と分かれていった。

 

 時々舞い込む東雲警部からの依頼にも同行し、

 光流くんと麗子さんの戦い方を間近で見て、学んだ。

 

 僕の霊力操作は少しずつ安定し、

 颯の格闘技術も、目に見えて向上していった。

 

 僕たちは、共霊をしなくても、

 霊害と戦える力を着実に身につけていた。



 

 それから――二週間。


「柊ー!奏ちゃーん!帰ろー!」


 いつも通り、光流くんが僕らのクラスに顔を出す。


「最近さ、光流やたらとうちのクラス来るよな?」


「白瀬くんと霧島さんと仲良いの、なんで?」


 そんなクラスメイトの声が、もう気にならなくなっていた。


「光流〜!やっほー!」


「はいはーい!」


 女子たちに軽く手を振る光流くん。

 この光景にも、すっかり慣れてきた。


「柊、行こー!」


 スクールバックをリュックみたいに背負い、僕の机に駆け寄ってくる。

 

 ――いつもなら、このまま河川敷だ。

 でも、今日は違う。


「ごめん。今日は、ちょっと……」


 眉を下げる僕に、奏さんが首を傾げる。


「柊くん、今日は何か用事ですか?」


 僕は、空中にいる颯をちらりと見た。


「颯の“本体”に会いに行くんだ。今日は……」


 一瞬、言葉を選んでから、続ける。


「誕生日だから」

 

「……」


 颯は何も言わず、窓の外を見ていた。


 少しの沈黙。

 そして――


「……なら、俺も行く!」


 沈黙を破ったのは、光流くんだった。


「私も、行っても良いですか?」


 続いて奏さんが、ふわりと微笑む。


「アンタ何歳になったのよォ〜?」


「……十七」


 颯が、ぶっきらぼうに答えた。


「わっかいわねェ!!」


「高二だからな!?」


「じゃ、決まり〜!早速行こ〜!」


 光流くんが、ぴょんぴょん跳ねるように教室の出口へ向かう。


「い、いいの?みんな……?」


 僕は、不安げに尋ねた。


「当たり前〜!友達の誕生日なんだから〜!!」


「みんなでお祝いしましょう」


「ハッピーバースデーくらい歌ってあげるわよォ」


 三人とも、まっすぐで、優しすぎる笑顔だった。


「……うっせーよ」

 

 隣で、颯が小さく呟く。


 でも。

 その声は、少しだけ弱かった。


読んでくださってありがとうございます。

※次回更新:1月22日21時

第十七話 十七歳【後編】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ