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二つの心音――弟が守護霊になり、霊と戦うことになった  作者: しょう
始まりの心音

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第十二話 届かない手、それでも伸ばす【前編】


 ***

 

 Side:柊


 ――僕の力で、颯に触れられるかもしれない。

 その可能性に気づいた途端、心臓が早鐘を打った。

 

「じゃあ次は、霊力を付与する練習しよっかー!」


 光流くんが指先に青白い光を灯したまま告げる。

 どうやら、霊力を“出す”ところまではクリアしたらしく、次の段階に進むらしい。


「ふよ……?付与、する……?」


 僕は首を傾げた。


「じゃあ奏ちゃん。お手本どーぞ!」


「はい」


 光流くんが小石を拾って、ぽいっと奏さんに投げる。

 奏さんはそれを受け取ると、すっと指先をかざした。


 ぽうっと、小石が青白い光を纏う。


「あ!奏さんがお札でやってるやつ……!」


「ええ。そもそも霧島家のお札には、初めからある程度の霊力が込められているんですけどね」


「そうなんだ……!」


「霊力を“付与”すると、物が持つ霊力をさらに高められるんだよね!」


 光流くんは、ぴんっと人差し指を立てる。


「じゃあ奏ちゃん、お札一枚借りていい?」


「? 構いませんが……?」


 奏さんがブレザーの内ポケットからお札を一枚取り出した。

 光流くんはそれを受け取って、小石の横に並べる。そして、両手から同時に霊力を流し込んだ。

 小石は、ほわりと淡い光を、お札は、ごうごうと燃えるような光を纏った。


「俺ね、今、この二つに“同じ量”だけ霊力を付与したの」


 僕は二つの光を見て、気づいたことを口にした。


「……元々の霊力が強い方が、より強くなるってこと?」


「正解!元々の霊力が強いほど、付与した時の伸び幅もデカいの!これは霊も同じね!」


 ――ということは。

 僕は、奏さんと顔を見合わせた。


「颯くんは……霊力が、ゼロですからね……」


 光流くんが肩をすくめて言う。


「……共霊した方が、手っ取り早く強そうだよねー!」


「そもそも、颯くんは霊力がないのに……共霊時に、柊くんの霊力が爆発的に跳ね上がるのは、どうしてなんでしょう?」


 奏さんの問いは、僕自身も抱いていた疑問だった。


「さぁねー?俺も、共霊のことは正直よくわかんないし!共霊が、ただの霊力の足し算じゃないってことは、確かでしょー?」


 光流くんは軽くそう言って――

 一瞬、僕の方をじっと見た。


「あるいは――」


「な、なに……?」


「……いや!今はいいや!」


 ぱあっと、いつもの笑顔に戻る光流くん。

 けれど、僕はすっきりしなかった。


「でもさ、柊と颯は、まだ意図的に共霊できないんでしょ?だったら、颯に霊力を付与する練習もしといて損はないと思うよー?

 霊力ゼロの颯は、ただの空気だけど、霊力少しある颯なら、まだ役立ちそうじゃーん!」


 颯、“空気”って言われてる……。

 僕には笑えなかった。


「……そうですね」


 奏さんが頷く。


「共霊以外の戦い方を身につけておくことも、良い判断だと思います」


 “共霊以外の戦い方”。

 それができるようになれば、もう、危険を犯す必要はない。


 僕は、ごくりと喉を鳴らした。


「まあ、颯は置いといて――

 柊が、奏ちゃんみたいに物に霊力を付与して戦うのもアリだと思うけど?柊的には、そのへんどう?」


「僕は……」


 選択肢は決まっていた。


「颯に、霊力を付与したい」


「そう言うと思ったー!愛〜!」


 光流くんが両手で指ハートを作る。さらに、霊力そのものをハート型に出力して、その指先に灯した。


「光流くん……器用ですね」


 奏さんが素直に感心する。


「まあ、戦い方次第で、霊力が弱くても強い敵を祓うことはできるよ!要は、こっちの霊力を削られなきゃいいわけだし!そのへんは、今ちょうど麗子が颯に叩き込んでるんじゃーん?」


 ――そうだ。

 颯も今、麗子さんと特訓中だった。

 僕は思い出したように、河川の反対側へと視線を向ける。

  ちょうどその時、颯の身体が、麗子さんの拳一発で吹き飛ばされていた。


「あっ、颯!」


 思わず声が漏れる。

 背中に、ひやりと冷たいものが走った。

 対照的に、光流くんはケラケラと笑っている。


「あっち、派手にやってんね〜!」


「ど、どうしよう……奏さん!颯が……!」


「柊くん。落ち着いてください」


 奏さんが、落ち着いた声で言う。


「颯くんは霊力ゼロですから。痛みはあるでしょうが……“本体”には届きません」


「そ、そうなの?」


 それを聞いて、少しだけ体の力が抜けた。


「そうそう。霊力っていうのはね〜……」


 光流くんが、軽い調子で霊力についての説明を始める。

 

 後から知った話だけど――

 どうやら同じ内容を、颯も今まさに、麗子さんから聞かされていたらしい。


「……ってわけで、早速、霊力付与の練習、してみよーう!」


「よ、よし!」


「柊くん、どうぞ」


 奏さんが、僕に小石を手渡した。

 僕は小石に手をかざす。


 行け……行け……

 霊力……届け……


「うっ……うう……うーん……」


「ねえ柊、また詰まってるよ。力みすぎ」


「光流くん……その例えはやめてくださいって、さっきも言いましたよ」


「ごめんごめん!でもほんと、力抜いて!

 付与も出力とほぼ同じだから!リラックス〜。流す感じ〜」


 そう言って、光流くんは両手をひらひらと揺らし始めた。まるで波をなぞるみたいな、不思議な動きだ。


「はい!奏ちゃんも!これやって!」


「えっ、私もですか!?」


「早く早く!」


「り、リラックス〜……」


 戸惑いながらも、奏さんが光流くんの真似をする。

 ぎこちない動きで、両手をふわふわと揺らし始めた。


 ――気づけば。

 僕を囲んで、二人が謎の動きをしていた。

 完全に、怪しい儀式だ。


「あ!見てください!光が!」


 奏さんが動きを止めて、小石を指差す。


 僕のかざした手から淡い光が流れ出す。

 小石が、ほわっと光を帯びた。


 ……え。

 儀式、効いた?


「おお!できてるできてる!めっちゃ弱いけど!」


「や、やった……!」


「んじゃ、そろそろ颯も霊力尽きる頃だろうし、今度は颯に付与するの、やってみよーぜ!」


 そう言って、光流くんは河川の反対側を向いた。

 

「おーい!颯〜!そろそろ霊力切れたでしょー?」


 向こう岸で、颯の身体が薄れていく。

 まるで、タイムリミットを告げるみたいに。


 ――次は、共霊じゃない。

 僕の力で、君に触れてみせる。


 

読んでくださってありがとうございます。

次回更新:1月15日21時

第十二話 届かない手、それでも伸ばす【後編】

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