第八話 朝倉光流という騒音【前編】
「……すごい人たちだったね」
さっきまでの喧騒が、嘘みたいに消えていた。
『アイツ、“見える側”の人間だったんだな』
「あの霊……柊くんに、“久しぶり”って言ってませんでした?」
奏さんが眉をひそめ、僕の方を見る。
――そう。実は、僕は以前にも、あの霊に会ったことがある。
「じ、実は……学校で、何回か見かけたことがあって……」
『はぁ!?お前そんな重要情報、今まで一言も言ってなかったじゃねーか!!』
「だ、だって!その頃は僕と颯、喋ってなかったし!っていうか、あの霊、普通に怖すぎて……見て見ぬフリしてたんだよ!!」
「……それは、無理もありませんね」
奏さんがうんうんと頷く。
「霊力も、凄まじかったですし」
『霊力っつーか、迫力っつーか、存在がバグってた』
僕たちがそんなやりとりをしていると。
――ウーウー!
突如、サイレンの音が鳴り響いた。
「パトカー!?絵梨たちが呼んだのかも!」
「え!?ど、どうしよう!?」
その瞬間、ある事実が思い出される。
――砕け散った、千手観音菩薩像。
恐る恐る視線を向けると、そこには無惨に崩れた像の残骸が。血の気が、一気に引いた。
……これ、普通に器物破損なのでは……!?
『とりあえず、逃げるぞ!!』
「え!?逃げて良いの!?」
「大丈夫です」
奏さんが、はっきりと言い切った。意を決したような表情で。
「私たちは、悪いことはしていません。斎賀先生に連絡済みですし……きっと、何とかしてくれます」
その言葉を信じて、僕たちは走り出した。
その後のことは、後から聞いた話だ。
斎賀先生が警察に事情を説明し、警察の中に“霊害に理解のある知人”がいたとか何とかで、色々あったらしい。
詳しいことはよく分からないけれど――。
とにかく。
斎賀先生、本当にお疲れ様です……。
「へぶぅ!!」
どこかで、斎賀先生の悲痛な叫びが聞こえた……そんな気がした。
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※次回更新:1月10日21時
第八話 朝倉光流という騒音【後編】




