第九十二話 覗き窓の向こう側
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「……共霊。やはり面白い」
実験室を覗く、観測室の中。
複数のモニターの下。
灰堂は覗き窓から柊たちを眺めていた。
燦宮桃華が向かった――階段の先には、喝采がいたはず。
すぐに追わずとも逃げられないだろう。
終わりを見届けてからでも、遅くはない。
「どこまで保つかな。兄弟の心臓」
ウィーン。
「灰堂!!」
自動ドアの音と共に、叫びが聞こえた。
「狛くんがやられる!止めてよ!!」
伊吹と福だった。
灰堂は、ちらりとも見ない。
福が飛び出し、灰堂の胸ぐらに掴み掛かった。
「てめぇ!柊と颯を捕らえれば、他には手を出さねぇって約束しただろうが!!」
灰堂は、福の横腹に掌を当てた。
「――霊の分際で、触らないでくれる?」
ドォンッ!!
灰堂の掌から、赤い霊力が吹き出す。
福の身体は、後方に吹き飛んだ。
「福ちゃん!!」
「彼を助けたいなら、どうぞご自由に」
灰堂が嘲笑う。
「ただし、あの契約は白紙に戻すから」
「……てめぇ!」
灰堂を睨みつけながら、福は身体を起こした。
瞳が、怒りと憎しみで濁る。
「伊吹ちゃん!もう俺のことなんざ気にしなくて良い!
狛を助けに――」
「ダメだよ!!」
伊吹が福の言葉を遮る。
「それだけは絶対にダメだよ、福ちゃん……!
それに今更戻ったって、紫苑くんが絶対に許さない」
引き返すなんてできない。
その覚悟で、ここまで来た。
その時。
「――僕を騙せると思ったの?凡才⭐︎」
スピーカー越しに、あの声が聞こえた。
……通話ボタンは押されていないのに。
バツッ!
バツッ!!
モニターの映像が、同時に途切れた。
画面が砂嵐に切り替わる。
「……は?」
灰堂がモニターに視線を移した、直後。
バツッ!!
また映像が途切れた。
残りのモニターにはもう、階段を駆け上る桃華の姿しか映っていない。
灰堂は親指で机をトントン叩いた。
「やはり、久世紫苑は欺けないか」
「……紫苑くん?」
伊吹と福は顔を見合わせる。
灰堂はボタンを押して、階段のスピーカーに繋いだ。
「喝采。聞こえる?
燦宮桃華がそっちに行くから――」
喝采に指令を送る、はずだった。
「ここ、誰もいないわよ」
返ってきたのは、桃華の声。
モニターの中、桃華が腕を組んで見上げていた。
「……チッ。言うことを聞かないやつばかりだな」
左目の中で、緑色の光が濁る。
「伊吹。燦宮桃華を追え」
「……え?」
「早く行け。福を消されたくないんだろ?」
伊吹の拳が、震えた。
「福ちゃん、行こう」
「でも、伊吹ちゃん!
狛も、アイツらのことも、放っておくのかよ!?」
福が指差した先には、柊と颯の姿。
「……ッ!いいの!行くよ!!」
伊吹が観測室を飛び出す。
覗き窓の向こうで、
蒼と緋の焔が静かに揺れていた。
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※次回更新:3月24日21時
第九十三話 着火




