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二つの心音――弟が守護霊になって帰ってきた  作者: しょう
乱れる心音

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第九十二話 覗き窓の向こう側


 ***


「……共霊。やはり面白い」


 実験室を覗く、観測室の中。

 複数のモニターの下。

 灰堂は覗き窓から柊たちを眺めていた。


 燦宮桃華が向かった――階段の先には、喝采がいたはず。

 すぐに追わずとも逃げられないだろう。

 終わりを見届けてからでも、遅くはない。


「どこまで保つかな。兄弟の心臓」


 ウィーン。


「灰堂!!」


 自動ドアの音と共に、叫びが聞こえた。


「狛くんがやられる!止めてよ!!」


 伊吹と福だった。

 灰堂は、ちらりとも見ない。


 福が飛び出し、灰堂の胸ぐらに掴み掛かった。


「てめぇ!柊と颯を捕らえれば、他には手を出さねぇって約束しただろうが!!」


 灰堂は、福の横腹に掌を当てた。


「――霊の分際で、触らないでくれる?」


 ドォンッ!!


 灰堂の掌から、赤い霊力が吹き出す。

 福の身体は、後方に吹き飛んだ。


「福ちゃん!!」


「彼を助けたいなら、どうぞご自由に」


 灰堂が嘲笑う。


「ただし、あの契約は白紙に戻すから」


「……てめぇ!」


 灰堂を睨みつけながら、福は身体を起こした。

 瞳が、怒りと憎しみで濁る。


「伊吹ちゃん!もう俺のことなんざ気にしなくて良い!

 狛を助けに――」


「ダメだよ!!」


 伊吹が福の言葉を遮る。


「それだけは絶対にダメだよ、福ちゃん……!

 それに今更戻ったって、紫苑くんが絶対に許さない」


 引き返すなんてできない。

 その覚悟で、ここまで来た。

 

 その時。


「――僕を騙せると思ったの?凡才⭐︎」


 スピーカー越しに、あの声が聞こえた。

 ……通話ボタンは押されていないのに。


 バツッ!

 バツッ!!


 モニターの映像が、同時に途切れた。

 画面が砂嵐に切り替わる。


「……は?」


 灰堂がモニターに視線を移した、直後。


 バツッ!!


 また映像が途切れた。

 残りのモニターにはもう、階段を駆け上る桃華の姿しか映っていない。


 灰堂は親指で机をトントン叩いた。


「やはり、久世紫苑は欺けないか」

 

「……紫苑くん?」


 伊吹と福は顔を見合わせる。


 灰堂はボタンを押して、階段のスピーカーに繋いだ。


「喝采。聞こえる?

 燦宮桃華がそっちに行くから――」


 喝采に指令を送る、はずだった。


「ここ、誰もいないわよ」


 返ってきたのは、桃華の声。

 モニターの中、桃華が腕を組んで見上げていた。


「……チッ。言うことを聞かないやつばかりだな」


 左目の中で、緑色の光が濁る。


「伊吹。燦宮桃華を追え」


「……え?」


「早く行け。福を消されたくないんだろ?」


 伊吹の拳が、震えた。


「福ちゃん、行こう」


「でも、伊吹ちゃん!

 狛も、アイツらのことも、放っておくのかよ!?」


 福が指差した先には、柊と颯の姿。


「……ッ!いいの!行くよ!!」


 伊吹が観測室を飛び出す。

 

 覗き窓の向こうで、

 蒼と緋の焔が静かに揺れていた。

 

読んでくださってありがとうございます。

※次回更新:3月24日21時

第九十三話 着火

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