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二つの心音――弟が守護霊になって帰ってきた  作者: しょう
乱れる心音

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第八十六話 霊具の半身


「残念だったね、白瀬柊」


 右半身は、生きている。

 左半身は――冷たい。

 颯と同じ“異質”だ。


「どうして、僕の名前を……」


「君たちの動きは、全部データに入ってる。

 今日ここに来ることもね」


 ヒク、と喉が痙攣した。


「伊吹さんが……?」


 ――『テスト終わったら、またみんなで特訓しようね!』


 あの日の、伊吹さんの笑顔。

 僕たちを、売ったのか。


 男が微笑む。


「あの子、従順で良い子だね」


 確証づけるみたいな言葉に、眩暈がした。

 胃の中身が戻りそうになる。


「おかげで、久世紫苑を引き離すことができた。

 久世家の番犬だけなら、どうにでもなる」


 ……狛さんは、違う?


「てめぇ何モンだよ!」


 颯が、鉄格子を掴んだ。


「僕は灰堂。君は、守護霊の白瀬颯か。

 ……元素持ちなんだって?」


 灰堂の目が、颯をなぞる。


「だから何だよ」


「君が壊れる音、楽しみだな。……ゆっくり壊れてね」


 ――やらせない。

 颯を、奪わせない。


 僕は、拳を強く握りしめた。


「博士は、僕たちを邪魔するやつらは全員、消して良いって言ってたけど……

 どうせ消すなら、利用してからの方が良いよね」


 灰堂が、檻の鍵に手をかざす。


 ガチャリ。


 何重にも重なる南京錠が解けた。


「てめぇ!!」


「おっと」


 バシュッ。


 赤い閃光が、檻から飛び出した颯の腹を撃ち抜いた。

 血は出ない。ただ、腹の中心に空洞ができた。

 

 颯の膝が崩れる。


「颯!!」


 輪郭がまた薄くなっている。

 僕は急いで霊力を注いだ。


 視界の端で、一瞬、掌に見えた銃口。

 鋼にコーティングされた腕。

 ――人間の手じゃない。


「その腕は……!?」


 灰堂が左腕に手を添える。

 ガシャ、と鉄が軋んだ。


「僕の左半身は、霊具なんだ」


 優しい目だった。

 

 壊れたものを愛でるような眼差し。


「博士がくれた。

 僕を、生かすためにね」


「博士?」


「あの人が望むなら、僕は何にでもなる」


 ――声が、本気だ。

 

 颯が僕の側に戻ってくる。


「おい、柊!共霊するぞ!」


「やめなさい」


 前に出ようとする颯を、桃華さんが手を出して遮った。


「あの檻……妙なのよ。あの子だけ、霊力の消耗が異常なの」


「あぁん?」


 颯が僕の顔を覗き込む。


「はぁ……はぁ……」


 動いていないのに、息が上がってきた。

 ヘソの上の、あのアザが焼けるように疼く。


「とにかく、檻から離れた方が良いわ。

 今は逆らう局面じゃない」


「……チッ」


 颯の舌打ちが、地下室に響いた。


「それじゃあ、行こうか。

 戒が、待ちぼうけてる」


「戒?」


 僕は眉を顰めた。


「もう君たちの知ってる彼じゃないけどね。

 二週間前、ここで――死んだから」


 “死んだ”?

 僕たちは、戒を殺していない。

 あの時、確かに息はあった。


 だとしたら。


「安心して。ちゃんと動いてるよ。

 ……中身は、もう別物だけど」


 灰堂が背を向けた。

 

 コツ、と足音が響く。

 

「着いておいで」


 知りたくない。

 戒も、伊吹さんも。

 

 それでも、行くしかなかった。

 

 僕は、まだ――

 信じていたかった。

 

読んでくださってありがとうございます。

※次回更新:3月20日21時

第八十七話 霊害保管庫

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